〈第22音〉渓谷の今
良い感じの更新。
◆ソアン=ガルヴァ◆
「『ナンヨウ渓谷』……」
初めて聞く名前を復唱する。
「そこってどんな場所なんですか?」
「あ、自分も聞きたいです」
「『ナンヨウ渓谷』はね、ここの人で知らない人はいない場所。子供のころから怖い場所、近づいては行けない場所として知られているわ」
え、そんな危ない場所なの?
「以前はいい鉄がとれる場所として栄えていたんだけどね、数十年前から幽霊がでるといった噂が広がったの。実際、鉱夫が亡くなったこともあってね」
「ひぇ……」
ハヅミが小さい悲鳴をもらす。
「あらお嬢ちゃん、幽霊は怖いかね」
「は、はい……」
「心配しなくてもいいよ。私が見る限りいい人……幽霊だと思うよ」
ほう?
「その鉱夫も、調べたところその幽霊が原因で亡くなったわけではなかった」
「なぜその幽霊はいい幽霊だと思うんですか?」
「実際に私が渓谷に入って見たからだよ」
おばあさんは渓谷の様子や幽霊について話し出した。
「当時の私は数人の冒険者と一緒にその渓谷に入った。内部はとても暗くて、松明を使っても全く周囲を照らせなかったから光魔法を使って進むことにしたんだ」
松明を使っても周囲を照らせない、そんなに暗い場所なのか。
「探索すること数時間、私たちは噂の幽霊に会ったのさ」
「どんな姿をしていましたか?」
「詳しくはあまり覚えていないけど、彼は冒険者風の格好をしていたね。腰には長剣を装備していて、かなり使い込まれたようだったよ」
渓谷に入った時に会うかもしれない。覚えておこう。
「そこで彼はどんな反応をしましたか?」
ハヅミが恐る恐る聞く。
「彼は私たちに近づいてきてこう言った。『すまない』と」
「え?」
「彼には私たちを怖がらせる目的など毛頭なかった。しかし幽霊だからという理由で怖がられてしまった。謝ってきたのはそういう理由があったらしい」
なるほどね。
「じゃあなんで幽霊はそこにいたんですか?」
ハヅミが俺の聞きたかったことを聞いてくれた。
「もちろんそのことについて聞いた。彼はある人物を探しているらしい」
「ある人物?」
「彼もさすがにそこまでは教えてくれなかったが、どうだい? 行ってみるかい?」
おばあさんが俺たちに尋ねる。答えはもちろん、
「行きます」
「まだ少し怖いけど、私も行きます」
「よし分かった。今から許可証を出すから少し待ってなさい」
ほう許可証。
「許可証がいるんですね」
「今はその渓谷、整備されていないからね。危ないから許可証を提示しないと通れないようにしてあるんだ」
それは大事だな。
おばあさんが向こうの部屋に行ったあと、ハヅミが、
「その人、『音楽家』の人かもしれないね」
「そう思うよな~」
『音楽家』に関係した遺跡で出る幽霊らしき人物。十中八九『音楽家』と関係があるだろう。
「でもその人と話したとして、何があるの?」
「さあ……、何かしらの能力とかくれたりするのかな」
ゲームとかでありがちな展開だよな。力を受け継ぐ的な?
「ソアン君がもっと強くなるのか」
「だと良いけどな」
「お待たせ、これが許可証だよ」
奥のドアからおばあさんが出てきて、許可証を受け取る。白の紙に赤いハンコが押されている。
「これを『ナンヨウ渓谷』の受付に渡せばいいから。場所はここね」
『ナンヨウ渓谷』の場所が記された地図も受け取る。
「いろいろしていただいて、ありがとうございます」
「いいよいいよ、久しぶりの人だもの。こっちも楽しませてもらったよ」
しっかりお礼を言い冒険者協会を後にする。
「明日から早速向かおうと思うけど、どう思う?」
「私は行けます」
「私も行けるよ」
クリフとハヅミが答える。
「最終決定はナタリーさんに聞いてからだけどね。じゃあやることも終わったし、観光しに行くか」
「よっしゃ!」
それから俺たちは地元の名産品を使った料理を食べたり、自然あふれる景観を見たりと存分にナンヨウを楽しんだ。
明日は『ナンヨウ渓谷』に行くか!
楽しんで頂けたでしょうか。良ければ誤字脱字、アドバイス等、教えてもらえると嬉しいです。
(ソ):ソアン
(ハ):ハヅミ
(ナ):ナタリー
(ハ):幽霊か……、ちょっと怖いな。
(ソ):大丈夫だって。
(ハ):でもな~、子供のころから怖くて。幽霊の話を聞いたら一人ではトイレに行けなくなっちゃって。
(ナ):なら私が一緒に行きましょうか?
(ハ):それは、何かに負けた気分がする……。




