〈第2音〉スキル『音楽家』
こんにちは。雨晴罔象です。遅くなりましたが、2話目です。
◆楽成奏一◆
「うん?」
目を覚ますと俺はベッドの上にいた。窓の外から鳥のさえずりが聞こえる。
「そうだ、俺は異世界にきたんだった……。とりあえず顔洗お」
そう思い洗面台の鏡を見ると、見知らぬ人の顔が映っていた。
「うわビックリした! え? これ誰?」
「奏一さん、おはようございます」
その声に反応して横を見ると、そこにはクリフの姿が。
「あ、おはよう。これ、どうなってんの?」
「あなたは、転生……ソアン=ガルヴァとして、転生したのです」
「そうか……俺、転生したのか」
まだ全く実感が湧かないが、俺は確かに全くの別人になっていた。何か変な感じがすると同時に、これから何が起こるかにワクワクしていた。
クリフによると、俺――ソアン=ガルヴァは今日が6歳の誕生日。学校とかはどうしているのかを聞くと、ここでは12歳から学校に通うことになっているそうだ。ちなみに、クリフは通常他の人には見えないらしい。
「おはよう。よく眠れたか?」
この人は俺のお父さん、ジーン=ガルヴァだ。がっちりとした体をしている。
「おはよう、お父さん」
「ん、ソアンか、おはよう」
「今日は早いね~。ソアン」
「おはよう!」
俺の兄、ラティアス=ガルヴァ、そして姉のレイラ=ガルヴァが部屋から出てきた。
――6歳の喋り方って、こんな感じでいいのかな――……と思いつつ一階に降りていくと、母、ナタリー=ガルヴァが朝食を作ってくれていた。今日の朝ごはんはベーコンエッグにトースト、そしてスープだった。
「お母さんおはよう」
「おはよう。さ、手を洗って席に座りなさい。ご飯ができるわよ」
そうして朝食を食べ終わると、姉は学校に、兄は父と一緒に外に行った。
「そういえば、今日はソアンの誕生日ね。何か食べたいものはある?」
食べたいもの……か。肉が食べたいな。唐揚げならなお良し。
「うーん、お肉がいいかな」
「ふふ、わかったわ」
「おーい、ソアン、ちょっと外に来れるか?」
そんな話をしていると、外にいた父が俺のことを呼んだ。
「なに?」
「ちょっと教えたいことがあるんだ」
なんだろう、何かあるのかな。
――――――――――――――――――
外に行くと、父が待っていた。兄が向こうで木剣の素振りをしている。
「お、来たか」
「どうしたの?」
「今日はお前の6歳の誕生日だろ? だから今日からお前に剣術や魔法を教えてやろうと思ってな。準備するからちょっと待ってろ」
父がどこかに行っている間に、僕はクリフに聞いた。
「剣って初めてなんだけど」
「しっかり練習しなければいけませんね。『音楽家』のスキルには剣の扱いに対する能力はありませんからね……」
「え? スキルって何のこと?」
「あれ? お教えしていませんでしたか? それは失礼しました。それでは、説明させていただきます」
クリフの『音楽家』についての講義が始まる。
「能力の説明の前に、まず『音楽家』というスキル自体について話します。このスキルは代々受け継がれていくもので、起源は昔のことすぎるので、分かっておりません」
へぇ~。結構昔のことなんだ。
「次に、能力についてです。階名、についてはご存知ですか?」
「うん。ドレミファソとかCDEFGとかだね?」
「はい、それです。その階名に魔法の属性を付与すると、魔法が使えます。詳しいことは、後々説明します。続いて……」
「お待たせ!」
振り向くと父が戻ってきていた。
「話の続きは、剣術の練習が終わってからで」
「わかった」
「よし、じゃあソアン、始めるぞ!」
――――――――――――――――――
父からは剣の振り方、手入れの仕方など、基本的なことを教えてもらった。
1時間程が経って練習は終わり、父は仕事(騎士団長をやっているらしい)に行った。
「では先程の続きを。階名に魔法を付与する話でしたね。今手に持っているその剣で実際に魔法を使ってみましょう。『音楽家』のスキルでは、基本剣等を使って魔法を使います。そうして使われる剣のことを指揮棒といいます。一応、指揮棒無しでも魔法は使えますが、やはり威力は落ちてしまいます」
なるほど。それなら剣の扱い方をもっと練習しないとな。
「続いて魔法付与についてです。魔法を付与して使うことを旋律といいます。実際にやってみましょうか。剣を構えて……そんな感じです。その状態で『旋律 ハ長調』と言ってみてください。言わずに心の中で唱えてもいいですよ」
詠唱はしなくてもいいのか。
「えっと、『旋律 ハ長調』」
俺がそう言うとメラメラと燃える大きい火の玉が3個程出てきた。
「その状態で火の玉を向こうの的に当てるイメージをしながら剣を振ってみてください」
向こうの方には剣の練習で的として使った人形があった。
「こ、こうかな」
そっと剣を振ると、その軌道に沿って火の玉が飛んでいき、的に当たった。
的は燃えて消えてしまった。
「お~!」
「上手く当たりましたね。と、このように、ハの音では炎系の魔法が使えます。他にも、ニの音では水、ホは風、ヘは土、トは雷、イは聖、ロは身体強化系の魔法が使えます」
へ~複数の属性が使えるのか。
「まだ他にも能力がありますが追々説明するとして、今日はこれで終わりにしましょうか」
「了解。じゃあ帰るk」
「ソ、ソアン!なんだその魔法は!」
家に帰ろうとしていると兄のラティアスが俺に声をかけてきた。
楽しんで頂けたでしょうか。良ければ誤字脱字、アドバイス等、教えてもらえると嬉しいです。