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ある音楽家の異世界暮らし  作者: 雨晴罔象
~第1楽章~ 仲間
16/37

〈第15音〉自由

さあ15話目。

◆ハヅミ=バーマレー◆


 ソアン君が取り出したのは「幻影装置」だそうだ。


「それで何するの?」

「これに魔石を読み込ませて……」


 ごそごそとソアン君が作業している。


「よし。これでスイッチを押すと」


 スイッチを押した瞬間出てきたのは、


 ドラゴンだった。


「キ、キャーーー!!!」


 私はその場でうずくまる。同じ日に死ぬ思いを2回もするとは、そう思いながら。

 でもドラゴンが襲ってくる気配はない。


「全然怖がる必要はないよ。これは幻影。魔石をこの装置に使うとその魔石のモンスターが再現されるんだ」


 幻影と知り、少し恐怖が少しだけ薄れる。


「そ、そうなんだ。それで、これでなにするの?」

「ハヅミにはこれと戦ってもらう」

「さすがにこれと戦うなん……え?」

「これと戦ってもらう」


 私は息を胸いっぱいに吸い、次の言葉を発す。


「はーーーーー!?」


 今まで生きてきて最大の声量だっただろう。


「心配しなくても死ぬことはないから…………タブン」

「多分って言ったよね!?」

「気のせいだよ」


 ソアン君が目を逸らす。


「目逸らしてんじゃん……」

「本当に危なくなったら助けるから、ね?」

「は~……。分かったやるよ」


 実際、全く歯が立たないわけではないと思う。『重圧(アトモスプレッシャー)』以外にも技は使えるようになったからね。


「じゃあ、スタート!」

「いきなり過ぎない!?」


 ドラゴンが咆哮を上げながら私に襲い掛かる。それに対して、


「『力の(アクション→)反射(リアクション)』!」

「ッガ!!!」


 ドラゴンの爪の攻撃をそのまま反射し、ドラゴンをよろけさすことができた。かなりの攻撃を食らっている様子だ。


「畳みかけるよ!」


 近くにあった石を手に取る。石の剛性強化ーー完了。

 その石をドラゴンに向かって放る。石の速度上昇と撃力強化ーー完了。


「いっけー! 『思いがけない衝撃(ビッグサプライズ)』!」


 その石はドラゴンのおなかにドンという音とともに当たった。しばらくの静寂のあと、


「ズーーン!」


 ドラゴンは地面に倒れた。


「え、やった! やったよ私!」


 初めてドラゴン(幻影)を倒せたことがすごく嬉しかった。


「お~すごいな!」

「でしょ! 私だってやるときにはやるんだから!」


 フンッと胸を張る。


「いや本当にすごいよ。幻影とはいえ初めてなのにすぐ倒せるとは。それも2撃で」


 さらに胸を張る。


「じゃあ、この後のモンスターも任せちゃおうかな~♪」

「任せなさ~い……って、それ楽しようとしてるだけじゃ?」

「そんなことないよ。気のせい気のせい」

「そっか気のせいか~」


 気分の良かったこのときの私はソアン君の企みなんて知る由もなかった。


~数分後~


「ぎゃー! レイスが出たーーー!!!」

「じゃあ、ハヅミ任せるね~」

「いや! ダメ! 手伝ってー!」


 周囲に私の悲鳴が響き渡る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぅー。何とかここまで来たね」

「だな。だが……」

「うん、これはすごいね……」


 王都の中心部まで来たけど、そこの状況は一層酷いものだった。

 モンスターはいなさそうだけど人々の活気がない。


「無事じゃないだろうが、奴隷商の方に向かってみるか」

「そうだね」


 奴隷商の方に向かうと、やはりそこも無事ではなかった。

 店の中では、従業員だろうか、たくさんの人が後片付けに追われている。


「すいませーん。奴隷について聞きたいことがあるのですが」


 とソアン君。


「は、はーい! 少々お待ちください!」


 従業員がそう言った15分後、担当の人が来た。


「すいませんね、待たしてしまって。いやはや魔族の襲来がありましてですね……」

「話には聞きました。それはもうたくさんの人が亡くなったと聞いて」

「そうですね。ここの店主もそれに巻き込まれてしまってね」

「そうだったんですね」

「そういえばご用件をうかがっていませんでしたね」

「あ~用件は、」


 ソアン君が私を指し、


「この子の所有権を自分に移したいのですが」


 用件をを簡潔に伝えた。


「ほう、所有権の移動ですか。では少しこの子を連れていきますね。『腕輪』を調べるので」


 そういって私は店の奥の方に連れていかれた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


◆ソアン=ガルヴァ◆


「ありがとうございましたー!」

「かなりスムーズにいったな」

「だね」


 『腕輪』を調べた店主からは、ハヅミの主人が亡くなっていることが伝えられた。出先でモンスターに襲われたらしい。

 ハヅミは気持ちが読めない顔をしている。

 主人がいなくなった奴隷は自動的に奴隷商のものとなるらしく、代金を支払うだけでよかった。その代金を俺が一括で出した時には担当者は本当に驚いていたが。

 さて、あとはあれをしないと。


「これで用事の1つ目は終わったね。あとはソアン君の友達探しだね」

「いやまだだ。ちょっと手出して」

「え! こう?」


 手が差し出される。彼女の見た目に似合わない、酷使された手だった。


「『旋律(メロディー) イ短調(Aマイナー)』」


 そう唱えると、『腕輪』の奴隷の紋様が消え、なんの変哲もない腕輪になった。


「はい、これで良し」

「……。こんなこともできるんだね」


 なぜだろう、ハヅミが残念がってる気がする。


「? ハヅミ、どうした?」

「い、いや、なんでもないよ!」

「そうか……」


 なんだろう。男にはわからない理由があるのだろうか。


「じゃあ、クリフを探しに行くか!」

「だね!」

楽しんで頂けたでしょうか。良ければ誤字脱字、アドバイス等、教えてもらえると嬉しいです。


(ソ):ソアン

(ハ):ハヅミ


(ハ)私でもドラゴンって倒せるんだ……。

(ソ)初めてだったのにすごいな。俺が初めて戦った時あんなすぐに倒せなかったよ。

(ハ)(ソアン君、苦戦したんだ)

(ソ)それはそうと、次はクリフを探しに行かないとな。

(ハ)そうだね。……妖精、どんな見た目なんだろうなぁ。

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