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ある音楽家の異世界暮らし  作者: 雨晴罔象
~第1楽章~ 仲間
14/37

〈第13音〉その力

毎週投稿2週目。


あぶねぇあぶねぇ。

◆ハヅミ=バーマレー◆


「んで、何をやるの?」

「ちょっと待ってな」


 ソアン君がカバンの中をごそごそと探り出す。


「お、これだこれだ」


 なんと出てきたのは、ただの、石だった。


「……この石で何をするの?」


 出された石をコンコンと叩きながら聞く。まず、何でソアン君は石を持ち歩いてるんだろう……。


「いいか? ハヅミ」

「うん」

「これは石だ」

「うん」

「そして硬い」

「うん」

「これをこの場で平べったくしてくれ」

「うん?」


 言っている意味が分からない。


「えっと、ソアン君? ちょっといい?」

「うん」

「これは石だよね」

「うん」

「そのうえ硬いよね」

「うん」

「それをこの場で平らにしろって?」

「うん」


 さっき聞こえた内容は間違いではないことが分かった。私の耳、疑ってごめんね。だけどやっぱり意味が分からない。


「まあ、急にそう言われてそうなるのも無理はないか」


 困惑している私にソアン君が話しかける。


「それじゃあ順を追って話していこう。ハヅミは『科学』とは何か知っているか?」

「深くはあまり知らないけど、昔研究されてた学問で、魔法学が出てきてからはほとんど研究されなくなったんだよね」

「そう。それだ。魔法が発見されていなかった時代に人類が世界の真理を暴こうとして研究してきたもの、それが『科学』だ」


 ――そう。だから私は自分のスキル、『科学者』が嫌いだ。……今はちょっと違うけど。

 『科学』は『魔法』の劣化版。『魔法』は強く『科学』は弱い。この『魔法』の時代にそんなスキルを持つとは、お前は出来損ないだ。自分たちのこがこんなのだったなんて信じられない。そう言って私の両親、いや、あいつらは私を捨てた。

 その時から本当に『科学者』が嫌いになった。さらには自分自身も嫌いになった。

 なんでこんなすきるが、なんでわたしが、わたしはわるいこなの? もういや、しにたい、このスキルさえなければ、わたしは悪い子、死にたい、私が悪いの、辛い、死にたい、死にたい、けど生きたい、死にたい、助けて、死にたい、何で、何で、何で、何で、……、


「大丈夫かハヅミ!?」


 肩が揺さぶられるのを感じ、はっとする。


「ど、どうしたの? ソアン君?」

「俺が話してたら、突然ハヅミが、どこかに消えて行ってしまいそうな、そんな感じがして……。本当に大丈夫か?」

「あ、大丈夫大丈夫! 心配させてごめんね!」


 うん、もう、大丈夫。


「そうか……。もしまた具合が悪くなったら遠慮なく言ってくれよ」

「わかった、ありがとう」

「で、いったいどこから話そうか」

「『科学』とはの話の後からお願い!」

「ではそこから話していこう。『科学』とは俺が考えるに……。……。……。」


 ソアン君から『科学者』についてのソアン君自身の見解を聞く。その話には例えば、『科学』は『魔法』よりも強いなどといった、驚くような内容があった。


「……だから、スキル『科学者』は、魔法など使わずともこの石を平らにすることができるんだ。分かった?」

「仕組みは理解できたよ。できるかどうかは分かんないけど」

「まあそれはやってみるしかないよ。というわけで、はいこれ」


 さっきの石が私の前に置かれる。


「じゃあ、いくね」


 私は心を落ちつけてその石を見やる。


 よし。


 石の接地面周辺の剛性強化――完了。

 石に展性を付加――完了。

 石にかかる大気圧の強化――完了。


「『重圧(アトモスプレッシャー)』」


 私がそうポツリとつぶやくと、石の形がクニャーと変化し、形は歪だが平らな石板が出来上がった。


「「おお、できた!」」


 私とソアン君がそう叫ぶ。

 ……うん?


「え、ソアン君はこうなることが分かってたんじゃないの?」

「あ~いや、こうなるんじゃないかなと思ってただけで、実際にどうなるかは分からなかったんだよね。成功したようで良かった良かった」


 はっはっは、と笑うソアン君を見ながら私は、


「なにそれ」


 と笑った。久しぶりに。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 『科学者』の活用方法をソアン君と話していると「ドウポ」という町についた。今日はこの町の宿に泊まる予定だ。

 宿に泊まる手続きをしていると、宿泊客だろうか、その人たちの話し声が聞こえてきた。


「なあ、聞いたか? 王都に魔族がやってきたっていう話」

「ああ、聞いたよ。そいつのせいで王城以外はほとんど壊滅。噂ではあの王立第一学院、第二学院さえもその魔族には太刀打ちできなかったそうだ」


 王立第一学院、ソアン君の学校だ!


「ソアン君!」

「ああ、知ってる。昨日の宿で冒険者たちが話してたのが聞こえてたんだ」

「危険だって! 行くのやめよ?」


 まだその魔族がうろついてるかもしれない。そんな王都に行くなんて危険すぎる。


「危険なのは分かってるが、そこの奴隷商に行ってハヅミの所有権の移動をしないといけないからな」

「そんなのはいいから!」


 ソアン君を必死に説得する。


「それに友達にも会いに行かないといけないんだ」

「友達って?」

「あ~、うん、まあ、言ってもいいか。その友達っていうのは妖精でな、」

「妖精!? 妖精って、あの妖精!?」


 興味津々に尋ねる。


「うお! 急に来たな……」

「だって妖精だよ? 全世界の子供の夢じゃん、妖精に会うことは!」

「まあそうか」

「よし、じゃあ行こう!」

「行く気になってくれたのはうれしいが、危険だって話はどうなった?」


 足がはたと止まる。


「そうだったー! 魔族がいるんじゃーん!」


 王都の現状を思い出す。


「魔族がいるかもしれないから行かない方がいい、けど妖精には会いたい、けど魔族がいるかも、どうすれば……」


 私が1人でうんうん唸っていると、


「ハヅミ、どうせ王都には行くんだし、ここで唸ってても仕方ないよ」


 ソアン君が面白がるような目で私を見てきた。

 それはもう本当に。


「い、いやーーーーー!! 行きたくない―――――!! けど行きたいーーーーー!!」

「はっはっはっは」

楽しんで頂けたでしょうか。良ければ誤字脱字、アドバイス等、教えてもらえると嬉しいです。


(ソ):ソアン

(ハ):ハヅミ

(さ):作者(雨晴罔象)


(ソ)今回はハヅミの能力の使い方の話だったな。

(ハ)うん。まさかこんな使い方やあんな使い方があるとは……。

(さ)『科学者』はネタバレすると、威力だけは『音楽家』よりも強いんだよ。

(ソ)威力が俺よりも強いのか。………………ゴリr

   ゴンッ!

(ソ)ぐ、ぐあーー!

(ハ)ソアン君? 何か言った?

(さ)し、知ーらね。

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