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ある音楽家の異世界暮らし  作者: 雨晴罔象
~前奏~ 新世界への旅立ち
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〈第1音〉出会い

こんにちは。雨晴罔象(アマバレミヅハ)と申します。初めての投稿です。

◆ファルコン=フロント◆


「くっ……。もうダメか」


 背中から赤い液体が流れていくのを感じる。時々意識が朦朧とし、脳内に楽しかった思い出など、様々な出来事が流れてくる。これが走馬灯というものか。


「このままじゃ、あいつとの約束も守れねえな……。こうなったら」


 俺は最後の力を振り絞り、ある魔法を放った。


「次代の者よ! この世界の安寧を守ってくれ!」


 俺の願いの集合体ともいえるそれは遥か彼方へと飛んで行った。


――――――――――――――――――


◆楽成奏一◆


「はぁ……。またダメだったか……」


 俺、楽成奏一(がくなりそういち)は、近頃就職活動に勤しんでいる。しかし、何度面接を受けても俺を雇ってくれるところはない。

 自分はダメな人間なんだな。ネガティブな感情が駆け巡る。


「まぁ、今日は寝て、明日からまた頑張るか」


 そうして俺は夕食(コンビニの唐揚げ弁当)を食べ、風呂に入り、床についた。


――――――――――――――――――


「…………うぉっ! ここはどこだ?」


 ふと気づくと、俺は周りが白で染められている、何とも不思議な空間で横たわっていた。


 体を起き上がらせあたりを見渡していると、不意に頭上からきれいな声が聞こえてきた。


「ごめんなさい。突然呼んでしまって」

「えっ? あなたは? というか浮いてる!?」

「驚かせてしまいましたね。私の名前はクリフ、妖精です」


クリフと名乗る少女は、白色の服で身を包み、金色の髪をなびかせている。それにしても……。


「あっ、私は楽成奏一です……って、妖精!?」

「はい」


頭が追い付かない。当たり前だ、妖精なんてファンタジーものでしか見たことが無いんだから。


「し、しかし、なぜ妖精がここに?」


 俺がそう言うと、クリフさんは下に降りてきて、理由を話してくれた。


「実は、私は貴方とは別の世界――言うなれば、異世界の住人なのです」

「異世界?」


おっと?


「はい。そして、私達の世界では、人知れず世界を守ってくれる、そんな人物がいたのです」


クリフさんが目に涙を浮かべて話す。


「いた……ってことは、その人はもう……」

「はい。彼―――ファルコン=フロントはある日の敵の襲撃により命を落としてしまいました。彼はその時にある魔法を使い、私クリフに彼を引き継ぐことができる者を探させたのです」


 そんなことがあったんだ……って魔法?


「すみません。聞きたいことがあるのですが」

「はい。なんでしょう」


 クリフさんが涙を拭う。


「クリフさんの世界には『魔法』というものがあるのですか?」

「ありますよ。あ、楽成さんの世界には魔法がありませんでしたね。まあ……イメージとしてはロールプレイングゲーム等で出てくるような魔法を思い描いてください」


 え? あんな魔法がクリフさんの世界にはあるの? ちょっと憧れるな。

 後、クリフさん俺達の世界に詳しいな。RPGまで知ってるのか。


「それともうひとつ。クリフさんはファルコン=フロントさんが命を落としてしまったから、彼を引き継ぐことが出来る人を探していたんですよね?」

「はい」

「で、私の所に来たと言うことは……」

「はい。あなたこそが彼を引き継ぐことが出来る者なのです」


 ちょっと待って、俺が? 彼を引き継ぐ? 自分がそんな人物に思えないんだけど。さっき企業から「あんた要らないよ」判定されたんだけど?


「しかし、何で私なんですか?」

「失礼ながら、楽成さんをここに呼ぶ前に楽成さんのことを調べさせて頂きました。楽成さんのお祖父さんは音楽家であったとか」


 確かに、俺のお爺ちゃんは音楽家だった。今はもう死んでしまってるけど。お爺ちゃん、とても優しかったなぁ。

 でも、それとなんの関係が?


「そして、楽成さんのお祖父様の血をもつ貴方が選ばれたのです」

「その……お爺ちゃんの子孫の私とファルコン=フロントさんに何の関係が?」

「彼―――ファルコン=フロントの魔法は『音楽』に関係するものなのです。なので、音楽家の血を引く貴方が次代にふさわしいのです」

「なるほど」


あまり理解はできてないけど。

この時の俺は「音楽家は山ほどいるのになぜ俺を選んだのか」という質問ができない程度には落ち着いてなかったらしい。


「どうか彼を引き継いで頂けないでしょうか」


 暫し考える。俺はそんな偉大な人の後を継げるのか。クリフさんの世界を救えるのか。


「……ダメですか?」

「いや……」


 情けない俺でも、誰かを救うことが出来ると信じて、


「やります」


 そう俺は言った。


「っ……本当にありがとうございます! では、私達の世界への扉を開けますね。あ、あと、今後私とは友達のように接してください。敬語で話さなくていいですからね。そういうのに慣れてなくて」

「わかりまし……わかった。俺のことも好きに呼んでくれていいから」

「分かりました」


 クリフがそう言うと、目の前に扉が出てきた。金の装飾がついた、立派な扉だ。

 その扉が開き、俺はその中へと入っていった。

 ここから俺の新しい人生が始まる…!

楽しんで頂けたでしょうか。良ければ誤字脱字、アドバイス等、教えてもらえると嬉しいです。


また、投稿がかなり不定期になると思われます。気長に待って頂けると幸いです。

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