脇道25 :私が迷惑掛けた戦艦たち-2
戦艦ネルソン改造?改設計? ヴァンガードに捧ぐ?
ヴァンガードという戦艦がイギリスにいました。
もう解体されていますから過去形ですね。
地中海、アフリカの戦争が真っ盛りの1941年10月に起工、ですが進水は連合軍の大陸反攻後、ドイツ国内に戦闘が移った1944年10月。
既にイタリアは降伏してイタリア海軍はなく、ドイツ海軍はシャルンホルストが沈められティルピッツは半死半生状態でした。
完成したのは1946年5月。
戦争に間に合わなかった戦艦です。
そして13年ぐらい旗艦を務めたりしましたが、解体されました。
私はハセガワのプラモデルで知りました。
イギリス最後の戦艦。
なのに主砲は第一次世界大戦当時のハッシュハッシュクルーザーの古いもの。
既に空母が主体となった第二次世界大戦後の海軍に就役した新造戦艦。
凄く不思議な、奇妙な戦艦だな、と思った覚えがあります。
前述の「私の愛した戦艦」というサイトでヴァンガードが取り上げられており、久々にその存在を思い出しました。
どうしても戦争に参加していない戦艦は影が薄くなりますね。
そのサイトでは、ヴァンガードが対戦艦大和用に計画された、とありました。
確かにヴァンガードは、それまでのイギリス戦艦の集大成と言える完成度の高い戦艦です。
イギリス戦艦史上、最良で最強の戦艦でしょう。
起工されてから竣工まで次々に入ってくる戦訓を取り入れ、時間をかけて作られていますから。
元は戦時急造艦だったのですが。
第二次世界大戦の思わぬ勃発はドイツ海軍のZ計画を吹き飛ばしましたが、イギリス海軍の第一次世界大戦遺物整理計画もぶっ飛ばしました。
軍縮条約に縛られて不充分な性能のキングジョージ5世級5隻に引き続き、ライオン級が建造される予定だったのですが。
本当の意味での新戦艦と言える、ライオン級5隻の建造を諦めざるを得なくなりました。
それでもイギリスには、ヨーロッパの各国海軍が汲々として建造していた15インチ砲戦艦が13隻もいました。
それどころかヨーロッパ唯一の16インチ砲戦艦も2隻いました。
ですが、戦争が始まると戦艦が次々と沈められ、旧式戦艦だと力不足と判断されたのでしょう。
戦時急造艦として古い砲塔を流用した戦艦が企画されましたが。
何で竣工まで5年も掛かる?
おそらくティルピッツがフィヨルドに引きこもり、地中海の一連の海戦で旧式戦艦でもイタリア新戦艦に対応出来る目処がつき。
余裕が出来てきて、設計変更を重ねたのでしょうね。
でもその頃には戦争の推移から、戦艦を新造する意義が失われていった事にも気づいていたかもしれません。
ヴァンガード進水の6日前、10月24日には最強の戦艦武蔵がシブヤン海で空襲で沈められました。
どのような戦艦であろうとも、航空機で沈める事が出来る。
その報を知っていたかどうかは判りませんが、ヴァンガードの進水は行われ工事は中止されませんでした。
多分、その時点でヴァンガードを建造する意味は、軍事的にも政治的にも喪われていたはずです。
というか、意味が喪われたと知りながら建造を続けたのではないかと思います。
おそらく。
戦後、大英帝国、世界帝国が終焉する事は判っていたのでしょう。
同時に世界に冠たるロイヤルネイビーが終わる事も。
そして栄光ある英国海軍の主役だった大砲を備えた軍艦も。
戦列艦シップオブザライン、装甲艦アイアンクラッド、戦艦バトルシップ。
(英語を無理にカタカナに訳していますので見苦しい点がありますでしょうが)
これらも飛行機運搬船(エアクラフトキャリアーの直訳)に追われて消えていく事も。
なので、ロイヤルネイビー最後の戦艦は、英国戦艦最高の戦艦にしたかったのではないでしょうか。
中途半端なハウが最後なのが許せなかったのではないかな、と思ったりします。
消えていく戦艦という艦種。
装甲という甲冑を纏い、主砲というロングランスを構え、蒸気タービンという馬に跨がり、全力で敵に突撃する。
謂わば大海原の重騎兵 heavy cavalry と言えるようなもの。
その戦艦のメモリアルモニュメント、セノタフ、慰霊碑として作られたのがヴァンガードという戦艦ではなかったのか。
私の勝手な思い込みです。
本当のところなど判りません。
でも、だとしたら。
ヴァンガードという戦艦は可哀想な戦艦だったと思うのです。
第二次世界大戦が終わって苦しい英国経済。
アメリカには21世紀になっても払い終わらないレンドリース代金、借金もあります。
なのに何故、意味のないヴァンガードを作ったのか。
もうひとつの理由だろうと思うのは、イギリス海軍のプライドが傷つけられたままだったから、ではないかと思います。
今の日本では”危ないヤツ”と思われるかもしれませんが。
自分の国が好きな人は、自分の国が強いと嬉しいものです。
イメージとしてはプロ野球チームのファン心理に似ているでしょうか。
その強いチームのスター選手、巨人ファンなら伝説のONから原、松井。
現在なら坂本、岡本。
阪神ファンなら藤村富美男から田淵、掛布、バース、金本から現在の大山。
彼らはその時代のチームの象徴であり、ファンからの声援と期待を一身に受ける存在です。
同じように国の強さの証である軍隊。
海洋国ではただの人間の集団である陸軍より、強力な兵器である軍艦の集団、海軍の方が人気がありました。
そして、その象徴である戦艦は国の誇りであり、同時に自分たち国民の誇りでもありました。
第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の戦間期。
その時代の最強戦艦は、セブンシスターズと言われた16インチ砲戦艦7隻でした。
そのうちの2隻があった日本では「陸奥、長門は日本の誇り」と賞賛されています。
アメリカではテネシー級2隻と合わせてビッグファイブと呼ばれていたようです。
ですが英国ではネルソン級は不人気でした。
艦形が斬新すぎたから、でしょうねえ。
主砲を前部に集中配置した姿は均整美がないとされ、世界最醜悪姉妹などという評もあったようでした。
代わりに英国人の誇りだったのがフッドでした。
軍艦美の極致と讃えられ「マイティ(強大な、偉大な、世界最強の)・フッド」と呼ばれていました。
実際、排水量は戦間期の戦艦の中では最大、主砲は16インチ砲を除けば最強の15インチ砲8門、速度は巡洋艦並みの31ノット。
まさに英国海軍の誇りと象徴でした。
最強戦艦。
どのような相手にも撃ち勝つ事が出来る。
それが宿敵ドイツの新鋭戦艦ビスマルクにあっさりと沈められた。
激闘の末、というならばまだましだったかもしれません。
一発も当てられず、僅か5斉射目に轟沈。
一緒に行った新鋭戦艦プリンス・オブ・ウェールズも蹴散らされて。
結局、足が止まったビスマルクを延々たこ殴りでやっと沈めて、ゲッペルスには”自沈してやった”とまで言われる始末。
英国の、英国海軍のプライドが深く傷ついたのはお判りでしょう。
フィヨルドに籠もったビスマルクの同型艦ティルピッツ。
英国としては籠もったままで始末できるのが最善だったのでしょうが、英国海軍としては出てきてくれて海戦で沈めたかったのではないでしょうか。
戦争の終盤にデューク・オブ・ヨークがシャルンホルストを北岬沖で沈めましたが、それだけでは英国のプライドは癒やされなかったのでしょう。
ヴァンガードはそんな英国のプライドを癒やすために作られたのではないか、と思うのです。
英国はビスマルクを凌ぐ戦艦を作る事が出来る。
ヴァンガードがあの時あれば、ビスマルクに好きにはさせなかった。
苦しい戦争とその後の世界帝国からの衰退という状況に置いて、英国人のプライドを保つ為にヴァンガードは必要だったのではなかったのか、と思うのですよ。
フッドは完成度が高く、なかなか大規模な近代化改修に踏み切れませんでした。
もし、フッドが充分な近代化改修を受け、ビスマルク相手に互角以上の戦いを出来ていたならば。
英国海軍のプライドは傷つく事なく、ヴァンガードは建造されなかったかもしれません。
ですが、”罪”は寧ろネルソン級の方にあるでしょう。
ネルソン級がセブンシスターズにふさわしい実力を持ち、ビスマルクを圧倒していたら。
ネルソン級は陸奥の存在を認める代わりに追加保有が認められた、まっさらな条件で最新の技術を詰め込んで建造出来る戦艦でした。
もう少し使える戦艦には出来なかったのか、と思います。
ネルソン級はフッドやレナウン級を設計した大設計技師ダインコート卿最後の作品です。
35,000トンという限られた条件の中で、16インチ砲9門搭載という難しい課題を見事にまとめ上げました。
ロンドン出張中の平賀博士がこっそり見せて貰って大いに参考にした、という逸話もどこかで聞いた気がします。
その設計に意義を申し立てようというのがこの絵なのです。
うん、バカにしていただいて結構です。
自分でもそう思いますから。
ただこの時期、英国海軍では未だユトランドショックが尾を引いていたのではないか、と思います。
走攻守のバランス、というのは野球選手に言われる事ですが、戦艦も同じ事です。
走、速度と、攻、砲力と、守、装甲と。
これらを高度にバランス良くまとめるのが戦艦設計の基本スタンスなのですが。
フィッシャー卿はこのバランスを故意に崩して、走と攻が突出した巡洋戦艦を作りました。
その結果がユトランド海戦の3隻の爆沈です。
因みにドイツは走と守を厚くして、攻を薄くするのが基本スタンスですね。
その反動でしょうか、この時期の英国海軍は守、を突出して意識しています。
ネルソン級の前にイギリスはG3級巡洋戦艦とN3級戦艦を計画しています。
このG3級がネルソン級の元になった巡洋戦艦なのですが、謂わば2番砲塔と3番砲塔の間に艦橋を置いたネルソン級のような形をしています。
この後、大戦期までの間に各国では新戦艦といわれる戦艦が計画され、そこではネルソン級に採用された徹底した集中防御方式が使われていきます。
(ドイツ、ビスマルク級だけは違ったようですが)
それらは何れも主砲塔弾薬庫と機関、ボイラーとタービン、ギヤ室をバイタルパート、重要防御区画に納める設計をしているのですが。
G3級もN3級もネルソン級も、機関をおっぽり出して主砲塔弾薬庫だけを集中防御しています。
(いや、機関区もそれなりに防御していますが)
よほど弾薬庫を抜かれて爆沈するのが怖ろしかったのでしょうね。
守、特に、弾薬庫に囚われすぎているように思います。
同時に走、速度の軽視は、速度を重視し過ぎた巡洋戦艦の反省があったのかもしれません。
ダインコート卿はユトランド海戦前にはフッドというバランスの取れた戦艦を設計しています。
(フッドの発注{多分、設計終了、決定時期}が1916年の4月でユトランド海戦は同年の5月末ですから)
フッドは30ノット以上の高速戦艦でした。
確かにフッドは戦艦にはあるまじき(アイオワ級みたいですね)高速度と、戦艦より薄めの装甲ではありますが。
しかし、ネルソン級は極端でしょう。
ダインコート卿はフッドの31ノットは過剰と考えたのかもしれませんが、ヨーロッパの新戦艦が殆ど30ノット台から考えると、寧ろ時代を先取りしていたとも言えます。
ダインコート卿はネルソン級の設計にあたり、15インチ砲と装甲厚1インチ減の提案をしたそうです。
それに対し軍部は16インチ砲搭載は必須である事、装甲厚減は0.5インチ以下である事、という回答をしたそうで。
もしその時、砲門数の減少を提案して承認されていたら、というのが今回のネルソン級の高速戦艦案です。
16インチ砲を3連装2基6門として、2通りの配置を考えてみました。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門G3 副砲
最初の設定はG3級巡洋戦艦案のように、2基の主砲塔の真ん中に艦橋を持ってきたものです。
2番砲塔は後方を向いていますが、煙突などの上部構造物に妨げられて首尾線方向には砲撃できません。
ですが、まあ、砲撃できない範囲を首尾線に対し後方左右20°に抑えてあります。
一般的な中央砲塔(山城や伊勢のような)の後方左右30°よりは射界が広く取れるはずです。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門G3 副砲 側面前部拡大
ネルソン級は全主砲前方配置の弱点を補うため、副砲6基を後方に配置しました。
確かに首尾線方向には4基8門を集中できますが、片舷に対しては6門です。
なので大和型のように艦橋前後中心線上に2基を配置し、片舷8門を確保しました。
でも、英国海軍の趣味ではないような気もする。
G3級などは艦橋前後直近に砲塔を持ってきていますが。
ただ、それだと艦橋周りが余りにも殺風景というか。
艦橋と砲塔が副砲分離れているので、史実のネルソン級のように最大旋回角で艦橋が爆風被害を被る事が防げるかもしれません。
まあ、それがメリットと言えばメリットかもしれませんが。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門G3 副砲 側面後部拡大
後方首尾線方向には史実と同じく副砲8門を集中できると思います。
ただ前後に離れた4基を集中するので砲戦指揮は大変でしょうけど。
船体の形はレナウン級から持ってきました。
ただ、全長は10m短く、全幅は2.6m太い。
でも、16インチ砲を積むなら全幅30mは欲しいですし・・・・。
側面、シアーは史実と同じようにほぼ水平です。
艦首首尾線方向仰角0°射撃の要求は当然在るでしょうし。
ネルソン級は凌波性が最悪で、あの低速ですら2番主砲塔まで波を被っていたようです。
2番主砲塔横にまで波よけ、ウォータブレーカがあります。
高速戦艦として速度を上げたらどうなるか判りません。
なので、ナックルラインが出来るほど、フレアを大きく取りました。
これで、少しは凌波性が向上してくれると良いのですが・・・・。
機関は史実のネルソン級のものを2倍積みたかったのですが、載りませんでした。
ボイラー16基にしたかったところ、14基です。
出力はフッドやレナウン級の10万馬力越えはまあ無理で、7.8万馬力。
艦形も合わせて考えて、27~28ノットが出るかどうか。
ですがまあ、当時の高速戦艦たるクィーンエリザベス級や長門級よりは優速でしょう。
少なくともドイツのポケット戦艦は追い回せる?
大体、フッドやレナウン級は非常識、と言いたい。
両級とも2番主砲と3番主砲との間に長大な上部構造物があって(艦橋や2本の煙突など)。
それがまあ、優美な艦形を演出しているのですが、あの部分全部ボイラーと機械室、タービンです。
フッドはボイラーを24基、レナウン級に至っては42基も積んでいる。
先ほどフッドはバランスが取れた、と表現しましたが、それはあくまでも性能に関してであって、船体の構成から言えば極端に速度に振っていると言えます。
ネルソン級にそんな長大なスペースなど取れる訳もなく。
機械室、タービンがですね、これを載せるスペースがありません。
で、3軸です。
ドイツ戦艦の十八番ですが、イギリス戦艦が出来ないという事もないでしょう。
内軸用の機械室が後部副砲の弾薬庫に挟まれて、スペースが取れない。
まあ、弾薬庫がなくてもスペース足りませんが。
なので、外軸用の機械室の半分、つまりタービンひとつで1軸です。
場合によっては、ギヤードタービンではなくて、直結タービンにしなければならないかも。
巡航を外軸2基のギヤードタービンに任せて、戦闘時だけ内軸を動かすのであればギヤは要らないかな?
当時はギヤードタービンが出始めの頃で、フッド以外の英国戦艦は全て直結タービンです。
でも、直結タービンは1つで2軸を回していたから4軸も出来るか・・・・?
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門G3 副砲 バイタルパート配置
ボイラーや機械室のサイズは、「世界の艦船増刊、第2次世界大戦のイギリス戦艦」の解説に載っていたネルソン級の内部平面図から持ってきました。
まあ、酷い配置です。
外軸のスクリュウシャフトが船体の半分近くあって、弾薬庫からボイラー、内軸機械室まで貫通している。
前部ボイラーで作った高圧蒸気を弾薬庫をまたいで延々、艦橋下まで送らなければならない。
後部ボイラーの場所は、もうスクリュウが在って船体が切り上がっているはずだし。
史実のネルソン級も変な配置の船で、普通は船首側からボイラー、タービン(機械室)になるところ、逆、タービン(機械室)、ボイラーになっています。
おかげでスクリュウシャフトはボイラー室を貫通しているのだとか。
通常の配置だと機械室のスペースが取れないとかで、比較的自由のきくボイラーを後方に回したのだそうです。
副砲砲塔のバーベットのせいでしょうか。
まあ、おかげで艦橋直下にボイラーが来るのを避けられて煙突も離れた位置に設置できたようですが。
それでも艦橋に煤煙が逆流してきたそうです。
やはり、艦橋前後の副砲がまずかったですかね。
あれがなければ前後の主砲間を詰めて、外軸タービンを2番主砲塔の後ろに持ってこれるから。
ボイラーもG3級の煙突のように接近させてまとめて。
後部2基の副砲も艦橋周りに持ってきて。
まあ、格好優先で描いたので、詳しい内部配置については悩むのをやめにします。
意味ないですし。(笑)
普通、真面目に戦艦の設計をするなら、内部構造から始めますよね。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門G3副砲 上面前部拡大
ところで、私はいつ頃のネルソンを描いたのだろう。
本当は竣工直後ぐらいのを描きたかったのですが、射撃指揮装置や対空機銃など、その当時の仕様がよく判りませんでした。
この絵を描くに当たり参考にした元図があるのですが、多分大戦中のネルソンだと思います。
単装機銃が山ほど搭載されていたし。
おそらくボフォースの40mm4連装も、2ポンド8連装ポンポン砲も竣工当時にはなかったのじゃないかな。
(ボフォースの開発は30年代だったと思う。)
なので、年代不明です。
一応、大戦直前に史実と同程度の改装をされた船、という事にします。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門G3 副砲 上面後部拡大
で、こちらが史実よりもう少し大きく改装された、と仮定した物です。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門G3 両用砲
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門G3 両用砲 側面前部拡大
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門G3 両用砲 側面後部拡大
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門G3 両用砲 上面前部拡大
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門G3 両用砲 上面後部拡大
副砲と単装高角砲を全て両用砲に変更した、という設定です。
両用砲はキングジョージ5世級の13.3cm砲ではなく、レナウンやヴァリアントに使われた11.4cm両用砲を持ってきました。
改装なら多分、そっちを使うと思う。
機関もレナウンと同じものに変更して、11万馬力で31ノット。
もっとも外観的には煙突形状しか変えていませんが。(笑)
内部構造の検討はしていませんが、多分大丈夫でしょう。(いい加減)
先ほどの「世界の艦船増刊、第2次世界大戦のイギリス戦艦」の解説のところに馬力当たりの機関部重量概算値という数値が載っておりました。
古い戦艦、クィーンエリザベス級で50kg/馬力。
R級は酷くて68kg/馬力、レナウン級でも51kg/馬力で、フッドは意外と良くて37kg/馬力。
ネルソン級は57kg/馬力でかなり悪い。
つまりこの当時、ネルソン級に10万馬力を与えたければ5700tの重量が必要、という事です。
5700tの機関部は、当然それ相応のスペースも必要です。
ですが、WWⅡ直前ぐらいになるとクィーンエリザベス級の改装で29kg/馬力。
レナウン級の改装で27kg/馬力で、キングジョージ5世級では25kg/馬力と劇的に改善しています。
20年近くの技術の進歩が在る訳で、主にボイラーの蒸気圧と温度が上がっているのですが、まあそれだけではないでしょう。
重量が軽くなったという事は相対的に機器も小さくなったという事で、載るだろう、といういい加減な設定です。
副砲も廃止したのでバーベットと弾薬庫も要らなくなりましたし。
8基のボイラーのうち、5基が外軸用で3基が内軸用かな、程度にしか考えていません。
因みに仕様としてはこういう物です。
英国戦艦 一覧(上部)
英国戦艦 一覧(下部)
ネルソンを描くに当たって、当時の英国戦艦の主な物の仕様をWikiのデータでまとめてみたのですが。
なんか改造の度合いがバラバラでよく判りません。
間違いが多々あると思いますが、ご寛恕下さい。
本当、一時期は混乱して描けなくなるところだった。
たかが絵なのに、何、本気で悩んだりするかね。
後、ボイラー型式が「海軍式」と「アドミラルティ」とふたつありますが、これ多分同じ物でしょうね。
Wikiから持ってきてそのまま貼ったので、こうなっていますが。
で、こちらは前の物より少しはましです。
ですが、まあ平凡で、主砲塔を前に集中配置した物。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門前方 副砲
フォルムとしてはフランスのダンケルク級が近いのでしょうが。
あちらは被弾時のダメコンを考えて、1発で砲塔2つが損傷しないよう砲塔間を空けています、が。
こちらは砲塔間を詰めてその分、バイタルパートを短くして装甲を厚くします。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門前方 副砲 側面前部拡大
流石に艦橋前に副砲を置くと後部スペースが取れなくなるので、副砲は真面目に(?)後方に集中配置しました。
なので、最大旋回角で後方を撃つと、爆風が艦橋内をシェイクするでしょう。
2番主砲の上にポンポン砲を載せたので、ポンポン砲の弾薬箱?で司令塔からの視界が妨げられました。
元々、実際のネルソン級より司令塔を高くしてあるのですが、これ以上高くするのは躊躇しました。
司令塔は分厚い装甲で守られているので、高くすると重量増加とトップヘビーが怖いです。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門前方 副砲 側面後部拡大
副砲は後方に向かって背負いが3組という、極端な配置にしてみました。
後方首尾線に対し、左右10°くらいの範囲で12門が斉射できます。
片舷も8門を確保しましたが、前方首尾線方向には4門しか撃てません。
実際のネルソン級は8門が撃てたはずで、どちらが良いかなあ・・・・。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門前方 副砲 上面前部拡大
単装高角砲は中央部にまとめました。
甲板上に並べています。
ですが、史実のネルソン級は中央部の高角砲4基を一段高いところに設置しています。
その理由が良く判らない。
後部の2基は甲板上に設置していますから、甲板上でも良いはずなのですが・・・・。
まあ、こちらの設定ではポンポン砲と40mmボフォースの銃座が張り出していますので、甲板上にしか置けません。
悩まない事にします。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門前方 副砲 上面後部拡大
左舷側に、どう見ても主砲の射界を邪魔している大きなクレーンがあります。
まあ、史実にあるので仕方なく載せましたが。
これ、最初はうっかり右舷側に載せてしまいました。
絵的にクレーンの全体がよく見えるのは右舷側だったので・・・・。
ですが。
このクレーン、入港時、桟橋に接岸している時に物資の積み込みに必ず使うよね。
桟橋と反対側(船は必ずに左舷側で接岸する)にあるクレーンは役立たずだよね。
慌てて修正しました。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門前方 副砲 バイタルパート配置
相変わらず機械室とボイラーの位置は普通の船とは逆ですが、前のよりはましなはずです。
取り敢えずスペースは足りてそうですし。
補機室、発電機などが納められているところ、が司令塔の下、もっとも安全な場所にあるのは抗堪性が高くなるかもしれません。
発電機が死ぬと、電動砲塔は動かなくなりますから。
煙突と艦橋との間は史実ネルソン級と同じになりましたので、こちらも煤煙に悩まされる事になりそうです。
艦橋の形、いじってませんので。
両用砲仕様はこんな感じです。
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門前方 両用砲
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門前方 両用砲 側面前部拡大
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門前方 両用砲 側面後部拡大
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門前方 両用砲 上面前部拡大
英国戦艦ネルソン改 高速戦艦案 主砲6門前方 両用砲 上面後部拡大
両用砲への換装にあたり、副砲の砲塔、バーベットにそのまま載せてしまいましたが、甲板直置きの方が正解だったかも。
機関砲の射界は、前方、後方、両舷とも、ボフォース、ポンポン砲両方がカバーできるようにしてあります。
どちらかだけしか撃てないと、撃ち漏らしが出そうで。
英国戦艦がポンポン砲があるのにボフォースを導入したのは、またはボフォース導入にあたりポンポン砲も残してあるのは。
互いに欠点をカバーさせるためだろう、と思っています。
まさか、手に入る対空機関砲をむやみやたらに載せたのではない、とは思いますが。
前述の通り、艦橋の形はそのままです。
艦橋の形を変えると、ネルソン級じゃなくなると思うので。
ネルソン級は均整美がないとして、世界最醜悪姉妹と貶されました。
確かに主砲を前部に集中させた結果、艦橋が中央よりかなり後退してまるでタンカーのようなプロポーションをしています。
口の悪い英国水兵たちは、ネルソン級の事をタンカー扱いしてなかったかな?
ですがまあ、それだけではなく、この艦橋の形も悪評の一部だったろうと思います。
元々の形はワシントン条約前に次期主力艦として検討されていた、G3型巡洋戦艦、N3型戦艦の艦橋でしょう。
英国戦艦G3 N3
上がN3型戦艦、下がG3型巡洋戦艦です。
それをほぼそのままネルソン級に持ってきた訳です。
ダインコート卿は、軍艦美の極致と言われたフッドを設計した人です。
その同じ人が、ネルソン級を設計しているのです。
確かに、光学機器や電波機器が発達してきて、戦艦も照準や索敵や通信などの比重が大きくなってきました。
”腕”たる砲熕兵器や”足”たる機関部だけでなく、”頭”に相当する艦橋も大きくしなければならない。
従来の優雅な三脚檣艦橋ではスペースが足りなくなる。
だからと言って。
ネルソン級の艦橋はあんまりだとは思いませんか?
横から見ても真四角、前から見ても真四角、上から見たら三角形。
機能から言えば極めて合理的な艦橋形状なのですが、何というか合理性とデザインを融和させようなどと言う意思が欠片も感じられない。
まだ、公園の公衆トイレの方がデザインしようという意思を感じられる・・・・。
軍艦美の極致を設計したダインコート卿の心境にどういう変化があったのでしょうか。
まるでシュールレアリズムに走ったピカソのようです。
フッドは近代化改修が予定されていました。
おそらくレナウンのような改修が予定されていたのだと思います。
それを、軍艦美を損なうからやめろ、と足を引っ張っていた人がいたとか・・・・。
で、軍艦美で戦艦が勝てるか!、と切れたとか・・・・。
ダインコート卿には失礼ですね。
でも、想像すると楽しい。
前述の「世界の艦船 増刊 第2次世界大戦のイギリス戦艦」の表紙は、第1砲塔の前当たりの甲板から艦橋方向を見たロドネーの写真です。
「鋼鉄の城塞」と表現されていますが、最初見た時「ウルトラQ」のケムール人の顔に見えた。
英国戦艦はこの後も箱形艦橋を採用していて、クィーンエリザベス級改修の少し魁偉な艦橋から、レナウン改修の艦橋ではスマートになってきて。
キングジョージ5世級では、まるで城塞のファサードのような、威厳と格好良さを兼ね備えた物に進化していきます。
何となく、日本の平賀博士設計の妙高級の艦橋と似通ったところがあるような気がします。
何かしら関係があったのかな?
ネルソン級を見ていると、英国の作曲家エルガーの作った「威風堂々Pomp and Circumstance 第1番」を思い起こします。
この曲、最初聞いた時は何というか、ガチャガチャした騒々しい曲だ、と思いました。
とても良い曲だとは思えなかったのですが。
ただ、トリオ部分がとても綺麗なので何度も聞き返しまして・・・・。
そのうち、この前半部も”良いな”と思うようになりまして・・・・。
ネルソン級の、この愛想の欠片もないような艦橋形状。
実は一周回って、とても気に入っています。
これが英国戦艦の魅力なのでしょうか、ねえ。
「世界の艦船 増刊 第2次世界大戦のイギリス戦艦」には、「イギリス戦艦はいかに戦ったか」という記事が載っています。
それによると、イギリス戦艦の主要任務は船団護衛だったようです。
大西洋航路、地中海航路、北氷洋航路。
イギリス戦艦はドイツ、イタリアの水上艦から船団を守るため、商船船団に随伴しました。
空母のいない独伊相手なら楽だった、などと思いますか?
ヨーロッパ沿岸や地中海沿岸はイタリア空軍やドイツ空軍の攻撃範囲でしたし。
それらの及ばない大洋の真ん中はUボートの狩り場でした。
航空機相手ならまだマシなのです。
見えるし、対空砲で戦えるし。
雷跡を見逃したらそのまま撃沈されるしかない潜水艦相手には、戦艦は無力です。
それでもイギリス戦艦たちは、場合によっては商船の盾となるべく、粛々と護衛任務に従事していったのです。
英国、ネルソン提督の言葉。
「英国は各員がその義務を尽くすことを期待する England expects that every man will do his duty」
トラファルガーの時の言葉ですね。
その言葉通り、イギリス戦艦たちは「海軍の主力」などと驕る事なく、地味で、手柄などとは縁のない「義務」を、勇敢に全うしたのです。
英国の勝利のために。
もしかしたらR級戦艦の中には、敵艦に向かって主砲を発砲する事なく生涯を終えた艦もあったのではないでしょうか。
欧州の戦争が終わった時、彼女たち老嬢、オールドレディたちは傷つき力尽きていました。
動ける戦艦はキングジョージ5世級4隻と、僅かにクィーンエリザベス、ネルソンだけだったそうです。
彼女たちはその疲れを癒やす事なく、そのままスクラップにされていきました。
「もっとも活躍した戦艦」と賞賛されたウォースパイトも記念艦にされる事はありませんでした。
それだけ、イギリスという国は疲弊していたのでしょう。
それが、世界に冠たる大英帝国のロイヤルネイビーの主役、英国戦艦たちの最期でした。
戦艦の歴史の中で。
新旧のヨーロッパ最強戦艦が激突したデンマーク海峡海戦は、間違いなく最高の晴れ舞台だったと思います。
粛々と地味な任務を全うした。
この勇敢な英国戦艦たちを代表して、セブンシスターズたるネルソンとロドネーをその戦場に送ってあげたかった。
作りかけの小娘、プリンス・オブ・ウェールズなどではなく。
多分、27ノットか31ノットの速力があれば可能だったでしょう。
優美なる老嬢、フッドの前後を固める忠実なる騎士として。
そういう想像を糧として、この絵を描きました。
私はそれなりに気に入っています。




