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番外編 ブルーリベレーション part7

「うわっ、居たの?奏……」

歌音姉ちゃんが帰ってきて、真っ暗なキッチンでテレビもつけずにダイニングに突っ伏す俺をツンツンした。

「なに腐ってるの?奏大」

和奏姉ちゃんも帰ってきたらしい、仄かな女性っぽい香水のような匂いと賑やかさが我が家を包む。


「言いたくない」

ほっといてくれよ~。俺は今、傷心少年なんだから。


「ふ~ん」

こんな時歌音姉ちゃんはありがたい。基本、他人の事に関心のない人だから。詮索はしてこない。


「そういえばさ、野球のチケットあるんだけど。優姫ちゃんにあげてくれる?ちょうどあの子のファンの球団の試合貰ったのよね」

ひょい、と洗面所から和奏姉ちゃんが顔を覗かせる。


あ、やっぱり帰ってきてたんだ。

ただいまぐらい言ったらどうなんだ。


和奏姉ちゃんからチケットを受けとる。


え?

カップルシート?


「これ、何で姉貴が使わないんだよ。あ~、行く相手がいないのか」

「うるさいわね。おねーさまは仕事で忙しいのよ」

和奏姉ちゃんに頬っぺたをむにゅっとつままれた。

「ひゃい」


§ § §


「……という訳でな。佳彦、野球のチケット貰ってくれない?」

「要らね」

次の日、教室で朝イチに佳彦に譲ろうとしたら、予想通り即、断られた。

佳彦はああいう人が集まる空間が超苦手。だから絶対行かないと言うとは思ったんだが……。


「だよなぁ」

「どうした?誰かに売ればいいじゃん」

佳彦が首を捻った。

「これ姉貴の会社の福利厚生。指定席だから知らないヤツに売りにくい……」

「なるほど。なら俺じゃなくて、優姫にやればいいんじゃね?アイツ、確かそこのチームのファンじゃなかったか?」

「だから、もう一枚は優姫」

「……おまえ、いつからアイツと俺のくっつけ隊になったの?」

昨日からだよ!不本意だけどな!!


「さぁね」

我ながら曖昧な笑いを浮かべる。


「ふ~ん。わかったよ、それ貰ってやる」

「えっ!」

佳彦が無表情で俺の手からチケットを取りあげた。


「おっ高いカップルシートじゃん。弁当つきとは豪勢だ」

「うん、結構良い席みたいだな……」

「奏、何ショボくれてるんだよ。行きたかったらお前が最初から行けばいいだろうが?」

「優姫はお前と行きたいらしいぞ」

「へぇ、野球音痴の俺なんかといって何が楽しいのやら……」

「しらねーよ」

「良いのか?奏」

「あん?」

俺は思わず声を出してしまった。

「お前、昔から優姫のこと……」

佳彦にしては真面目な顔で言いかけたところで

「奏大!」

今一番聞きたくない、でも大好きな声に僕は振り向いた。


「なんだよっ」

俺は落ち着かない様子で立ち上がった。

と、同時に机に足をひっかけてゴツン!と机に頭をぶつけた。

「何やってるんだ、お前」

呆れたように佳彦が言う。


「いってぇ」

俺は顔を上げて額に手を当てた。

「大丈夫?」

優姫が心配そうな顔をして俺の額に手をあてた。


びくぅ!

妙な身震いをして飛び上がる俺をニヤニヤして見ている佳彦。


「だ、大丈夫だからっ」

優姫が俺の額にあてた手を振り払う。


「あれ?珍しい。加賀見って野球なんか興味あったっけ?」

優姫が目ざとく、佳彦の手にあるチケットを見て驚きの声をあげた。

「いんや。そういえば優姫は好きだもんな。一つやるよ、はい」

全く、自然にペアチケットを一枚差し出す佳彦。


「え……」

なんだよ、真っ赤になっちゃってさ。


見てられないんだよ。嬉しそうな顔をしやがって。

俺にはそんな顔、見せたことないじゃないか。


「いてて……」

頭は全く痛くなかったが、俺は頭を抱えて机に伏せた。


痛かったのは、ボロボロに傷ついた俺のデリケートなココロ……。

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