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side:ゲンメ公女マルサネ part2

「っ痛てて……」

「……!」

「お嬢、どこかお怪我をされましたか?」


あたしの呻き声に、慌ててガヴィとボーカがとんできた。

「あ、大丈夫。単なる筋肉痛だから」

「はぁ」

「本当、鈍っちゃった。あんなちょっとのことで、身体が痛くなっちゃうなんてさ」

あたしは、ストレッチをしながら身体の骨をポキポキ鳴らした。

「いてて……我ながら、剣が重いってありえない~」


「……」

ガヴィとボーカは顔を見合わせた。

「ちょっとのことって……、殆どお嬢が片づけちゃいましたよね?」

「そう?」


あたしに襲いかかってきた海蛇たちは、久しぶりに暴れたあたしのウォーミングアップにもならなかった。

囮として、見通しのよい橋の上で待ち構えるあたしに何の作戦も芸もなく、我先に毒を仕込んだ暗殺剣を突き立ててくるばかりだったので、全員一人で返り討ちにしてやったのだ。


まだ、カルゾ邸の使用人の方が手応えがあるんじゃなかろうか。

イスキア本体の海蛇じゃなくて、組織の下っ端をよこすなんてゲンメも随分と舐められたものだ。



「俺達、あいつらに毒を撒き散らされると困るから、止めを刺しただけですよ?」

「う~。それそれ。一撃で急所を狙ったのに、致命傷にならないなんて……パワー不足もいいところ。身体が軽くなってスピードは上がった分、以前よりパワー不足は否めないわね」

「確かに。お嬢の戦い方、だいぶ変わられましたね」

「変えないと仕方ない。パワーで押せないんだから」

「はぁ」

「それより、サヴィートはまだ?」

「後処理に時間がかかってるのでしょう。奴らの始末は気をつかいますから」

海蛇は身体のあちこちに毒を仕込んでいることが多い。下手に触ると検分する者の致命傷になりかねないので、闇の者たちが撤去しているようだ。まぁ、処分としては焼却するしかないだろう。


「そうね。あ、やっと衛兵が来たか、表向きはこれで解放だといいけど」

エスト城下町の警備兵が走ってやってくるのが見えたと同時に、ガヴィたちは姿を消した。



「ご無事ですか?マルサネ様!」

白い鎧に身を包んだ若い衛兵が二人、息を切らして駆けつけてきた。


「ありがとうございます。学園に登園途中で突然、暴漢に襲われましたの……大変恐ろしい思いをいたしましたわ。このように、我が家の御者を亡くしました。衛兵殿、犯人を見つけて下さいませ」

座り込んでハンカチに顔を押しつけ、身を震わせたあたし。


どうかな?

自分のクサい演技に笑い出してしまいそうで、震えちゃった。


『リツコ』ならこんなことをしそうだ、と思ってやってみたの。普通の令嬢、っぽくない?



「それは……大変お辛い思いをされましたね。お気を落とされませんよう……」

「私、先日、姫様の素晴らしい歌声を聞かせていただきました。このエストの街で、ゲンメの姫様を襲うような不埒者がいるとは許せません」

驚くべきことに若い衛兵は頬を赤らめて、あたしを慰めてきた。


ふぇっ。

こんなこともあるのねぇ。


姫様扱いなんて、初めてされたかも。


あたしは、ちょっと感動して思わず立ち上がってしまった。


「あのっ」


「あっ……!姫っ」

「マルサネ様……!!」

あたしを見て何やら、衛兵たちは慌てふためいた様子。


あ、あたし。なんかやらかした?


ほら、やっぱり付け焼き刃だから。

お姫様のふりなんてするもんじゃないわよね……一応、これでも公女だから姫のハズなんだけどさ。



ちょっとガッカリして、下を向いたあたしの方にずっしりとしたものが掛けられた。


「え……?」

どうやら、歌が素晴らしかったとか言っていた衛兵が自分の上着をあたしにかけてくれたようだ。


「私のもので大変申し訳ありませんが、暫く我慢下さい。直ぐに着替えを手配させますゆえ」

「はぁ……」

「女性をこのような目にあわせるとは……なんと卑劣な……ご安心下さい。他言は致しません」

「ぇえ?!」


そこであたしは、自分の姿を見下ろして、何を言われてるかようやく理解した。



ビリビリに破かれたドレスのスカート……(剣を振り回すのに邪魔で、自分で破いたヤツ)。

裾は足首に結ばれ、 全身や顔に点々と血痕がこびりついている……(全部、返り血だ)。



「ちょっとぉ!あんたたち。言っとくけど、あたしは犯られてなんかないんだからねっ!!」

お姫様にあるまじき大声で、あたしは衛兵たちを怒鳴りつけてしまったのだった。

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