第33話 国外追放の真相?
ゲンメ邸に着いても未だ、イスキア刺客襲撃のショックやら、公衆の面前でサラック様に抱きしめられた感触やらに浸ってソファーで呆けていたら、珍しくハゲ狸から投げつけるようにグラスを渡された。
「飲め」
あら?この香り……メチャクチャ良い匂いだけど、ワインじゃない?
一応、マルサネって未成年じゃなかったっけ?
この世界なら成人だからいいのか?
渋々受け取って舐めてみた。
あれ?ブドウジュースじゃん。
めちゃめちゃ濃い、スーパーでもブランド品の高いやつの味!
「それ、お前の母サリアのお気に入りだ。小さい時からよく飲んでいた」
「サリア、さん?」
「お前は当然覚えておらんだろうな。あれが死んだのはお前が三つぐらいの年だ」
「はぁ」
ごめん、ハゲ狸。
私、マルサネじゃないからそんな記憶ないよ。
「お前と母親の話をするようになるとはな。あれが死んだ時、お前は母を求めて泣いて泣いて……儂はどうしてやって良いかわからなくてな。結果、お前を見ているのが辛くて避けるようなことになったんだが……」
「……」
ほぅ。育児放棄の言い訳ですか。
男にはありがちですのぅ。
「お前はさぞかし儂を恨んでいるだろうな、マルサネ。最近はめっきり言わないが、以前は母親が死んだのはお前のせいだと何度お前に言われたことか」
「はぁ」
そのセリフ、マルサネが絶賛反抗期か、思春期娘だったからだと思うんだけどね。まぁ父子ならアルアルですね。
「どうせ恨まれてるのだ。今回もお前に恨まれるのだろうな」
「へ?」
「サングリアのこと。カフェで会ってたのは、闇どもの報告で知っていた。雑誌の企画だと聞いていたが、そんな仲になっているとは……」
そんな仲ってどんな仲よ~!
ハッキリ言ってくれ、オヤジ!
いや、やっぱり言って欲しくないかな。
それにしても、娘の生活まで始終監視してるのか~。
これじゃ、うっかりルーチェとおしゃべりもできやしないじゃないの……。
「これから恨まれるようなことをなさるつもりですか?」
「そうだな。ソーヴェはサングリアを焚きつけていたが、儂は絶対に認めないからな」
「ソーヴェ様は一体何をなさりたいんでしょうか」
「さぁな。少なくとも今回、ソーヴェはお前をエサにしたようだぞ、マルサネ」
「は?私はエサ、ですか?」
「そうだ。カルゾはあの大公宮とカルゾ邸の夜襲に関わった件でイスキアの残党狩りをしていた。ソーヴェもヴィンセントもあの性格だ。一気に片付けたかったんだろう。結果見事に誘き寄せられたしな」
「はぁ……」
「この婚約もイスキアからお前が狙われた方が有り難かったからだ。ヴィンセントの本命は予め国外に逃がしたようだしな……本当にまんまとカルゾの母子にゲンメは使われたわ」
「国外?」
「ベイトだ。あの女王とソーヴェ達は昔からつるんでいる旧知の仲だ。アルルとかいう娘もベイトにいるらしいぞ」
ハゲ狸。さすがに良く知ってるね。ゲンメの情報源や組織はどうなってるんだろう……。
ちょっと知りたくなってきた。
「お父様。何故、公子がお二人ともあんなに国外追放されたがるのか、お分かりですか?」
国外追放の謎もここで解いておきたい。
「そりゃあお前、何を企んでるか知らんが、ベイトの中枢に乗り込むためだろうよ。
ベイトはセキュリティが半端なく固い国だ。外国籍の人間は観光以外、一切受け入れない。あの国の中に入り込もうとするには、一旦ユッカの国籍を捨てないと入れないのだ」
成る程~。そういう訳だったのね。それでやけに追放、追放って言ってたんだ。
「あいつらは公子だからな、大々的に、もうユッカに籍はありませんという手っ取り早いアピールというか、手続きというか……まぁ、そういうことだ」
納得。謎は解けたわ。
ベイトの国で何が起こっているのかも気になるところだけど、ルーチェからやユッカナウなどで見聞きした限り、私が突っ込んでも何のお役にもたてないような気がする。
だって、ベイト国ってめっちゃハイテク国家だもん。
雑誌で見る限り、銀色ピカピカの建物が沢山並んでて、まるで空中に浮かぶ未来都市みたいなイメージ?
科学の力で動く機械が沢山使われてて、ユッカで使われている動力源やシステムを多数、生み出したり、日々改良を加えたりしているらしい。
最初に雑誌で見た時は、未来ものの洋画の宣伝かと思ったわ。
ちょっとだけ、観光で行ってみたい気はするけど、機械音痴の私がそんな所に行って何かのお役に立つわけがないし。
それにして、どんな人の動向をも掴んでしまうゲンメの情報網……恐るべし。




