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第32話 頑固オヤジの反対!

襲撃された会場から移動しながらも、私達を好奇心一杯で覗いてくる群衆の視線から私を庇うように、更に自分の胸にギュッと強く抱き寄せるサラック様。


嬉しいけど、壮絶に恥ずかしい。


「マルサネは正に血統だな」

「……お父様?」

「お前の母親もコイツに惚れてたんだ。親子で入れあげるとは……」


マルサネの母もサラック様が好きだったの?

だから、ハゲ狸。何となくエスト家が嫌いだったのね。

サラック様への嫉妬かしら?


「タウラージ。それはサリアが学園に入る前の話だろ。幾つの頃の話だ。そんな昔話を未だに……」

「うるさい。儂はお前が娘の婿になるのは嫌だ。断る」


婿?

また話が飛躍してない?


「まぁ、サリアがずっとサラックを追いかけてたのは事実だもんねぇ。私がこの国に来た頃もまだキャーキャー言ってたわよ」

「ソーヴェ!」

サラック様は面白そうに口を挟むソーヴェ様を睨みつける。


「ほら、だから最初から私の言う通り、ヴィンセントの目前からマルサネを拐って、二人で大公宮から手に手をとって逃げ出して行けば良かったのよ!」

「お前それ、昔流行ってたドラマの最終回だろ……」

「結婚式から本当は拐っていって欲しかったんだけどねぇ」

「……あのな。大公が自分の大公宮から逃げて、その後、どう収拾つけるつもりだ」

「新婚旅行でも行って子作りしてから、しれっと帰ってきたらいいんじゃないの?事務仕事はアスティが片付けるわよ」

「子作りって……何を言ってるんだ」

綺麗なお顔に似合わず、ズバズバ大胆発言を繰り出すソーヴェ様に勝てるわけがなく、すぐにタジタジとなってしまう奥手のサラック様。


「良い年したオッサンが何、照れてるの!さっさと仕込んで既成事実作っちゃいなさい。そしたら誰も文句なんか言わないわよ。何なら今から行ってきなさいよ、子作り旅行。ほら早く出発!いってらっしゃ~い」

「いってらっしゃい、じゃない」

サラック様がホトホト困った顔をされているので、思わず吹き出してしまった私。


「笑われてるわよ、サラック」

「すまない、ソーヴェの言うことは気にしなくてもいいから」



しかし、子作りねぇ。

……。

マルサネの身体は若いから作れるとは思う。


律子にとってもサラック様にとっても、四人目の子どもかぁ……。



赤ちゃん……懐かしいな。

私、律子は次に抱っこするのは孫かと思ってた……。


サラック様の赤ちゃん、可愛いだろうな~。マルサネの残念遺伝子を受け継ぐと可哀想だから、パパに似た感じの息子が良いけど、 サラック様は全員男の子だから娘が欲しいだろうなぁ……。



はっ、そんなことを妄想してる場合じゃなかった~!



「勝手に子作り旅行なんか行かせんぞ。マルサネ、いつまでデレデレした顔をしてひっついてるんだ。そいつから離れろ」


このタイミングで、まさかのハゲ狸の反対。


いや、賛成されてもまた微妙なんだけど、そんなにグイグイ引っ張らなくても。

ハゲ狸にサラック様の腕の中から引き剥がされてしまった私。


「大公妃はダメだ。アイツと子を設けても大公継承順位は一番最後。なんのメリットもない。子作りするならヴィンセントだ。ヴィンセントと子作り旅行に行ってこい」

方針は全くブレないのね、お父様。


「旅行ですか。私は国外追放されたので無理ですよ」

「は?国外追放……?」

嬉しそうな様子のヴィンセント様のセリフに、後ろに控える執事さんが固まる。


「いや、ヴィンセント。何度も言うが、お前達を処分する必要なんて何にもないと思うが?」

「そんなことはありません、ウィルブランと同じく、私も暫く国外追放でお願いします」

膝をついて礼をとりながらも力強く、サラック様に申し出られるヴィンセント様。



こないだのウィルの時もそうだけど、国外追放者って自分から追放してくれと頼むものなんだろうか?

私のイメージだけど、ヒロインを苛めた悪行三昧の婚約破棄された令嬢とかが、その悪行をもって追放されるんじゃないの?



「……そういうことか」

サラック様は苦笑して、ヴィンセント様を立たせる。

「頼むから、あんまりあちらに迷惑かけるなよ」


「え~!行かせるの?サラック」

慌てるソーヴェ様。

「まぁ、もうウィルは行ってしまったことだし。止めてもヴィンはいずれ勝手に行くだろ」


「ではもう、大公からお許しはいただいたということで。明日には出発させていただきます。

私が不在な分、しっかり働いて下さいね、カルゾ公主。では私はこれで」

もう、頭はアルルのことで一杯なのだろう。ヴィンセント様は、ウキウキした足取りで大広間から出ていった。


「あれって親に向かって言うセリフ?きっともう頭の中はヤバい妄想で一杯よ……あの執念、もっと他の事に向けてくれるといいのに」

「もう誰もお止めすることは無理かと」

カルゾの執事が諦めたようにソーヴェ様に進言した。

「そうね。私は出来るだけ足止めしたわ。後はウィルに頑張ってもらうしかないわよねぇ……」

「ウィル様でも、どうでしょうか……?」

「私、息子が犯罪者になるのは嫌だわ……」


「おいおい、ソーヴェ。いくらなんでもヴィンセントもそこまではやらないんじゃ?」

二人の会話を呆れたように聞いていたサラック様が犯罪者呼ばわりされたヴィンセント様を庇う。


「「やるわよ!」」

「「やります!」」

ソーヴェ様と執事が見事にハモってサラック様に断言した。



「マルサネ、帰るぞ」

「え?」

ボーッとソーヴェ様達の会話を聞いていた私の手を掴んでハゲ狸が入り口に引っ張っていく。


「え、ではない。舞踏会はお開きだ」

「あら、タウラージ。もう帰るの?じゃあ、マルサネは置いていきなさいよ」

ハゲ狸の言葉にソーヴェ様が私を引き留めにかかった。


「ソーヴェ、儂は忙しい。いつまでもお前らに付き合いきれるか。マルサネは連れて帰る。お前らになんと言われても、絶対、娘は大公にはやらん」

「まぁタウラージ、すっかり頑固オヤジになっちゃって……」

「あ?えっと……すみません、失礼します……」



サラック様の心配そうな視線に見送られながら、私はハゲ狸に引きずられて大広間を出たところで、私の生まれて初めての舞踏会はやっと終わったわ。



舞踏会だったのに私は全く一曲も踊らず。

いや、踊りたかったわけじゃないけど。


ステップとか知らないし。



……でもちょっと、サラック様と踊りたかった、かも…ね。

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