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番外編 カルゾメイドの溜め息!side:マリンpart7

「ま~りん!」

パロマがニヤニヤして手招きしてきました。


あの顔。

パロマがああいう顔をする時はロクなことがありません。


「何?」

カルゾ邸の朝は早いです。

使用人一同、朝から走り込みをしたり早朝稽古をしたりしているので、ソーヴェ様以外の人間は日の出とともに活動をしています。


私も軽く身体を解して戻ってきたところでした。

パロマは昨日、ナルドさんと宿直を変わっていたので徹夜明けでしょうか。

今までの経験上、徹夜明けの彼女のテンションは危険です。あんまり、関わりたくないところですわ。



「ヴィンセント様、さっきお帰りになったわよ~」

「へぇ、予定より早かったわね。昼頃かと思ってた」

「でしょ?それでさ……」


パロマに耳元でゴニョゴニョされました。



「ムリムリムリッ!!絶対にバレるって」

「大丈夫。きっちり気配消しておけば」

「自信ないよ~!」

テンション高いパロマにあっという間に医務室に連れ込まれ、ベッドの奥のパーティションに押し込められた私。


「マリン、息しちゃダメよ!」

無茶苦茶です。息しなかったら死んじゃうよ~!



廊下で人の気配がした途端、素早くパロマはベッドの下に潜り込みました。


それと同時にヴィンセント様とナルドさんが医務室に入ってきました。


やれやれです。


変なテンションMAXのパロマに「面白いものがみれるから」と押しきられてしまいましたが、主の話を盗み聞きして何が面白いんでしょう。


思いっきり後悔しながら私は息を殺しました。


「おや?」

ほら、バレた~!


ヴィンセント様は怪訝な顔をしながらも、優雅に医務室の診察用の椅子に腰をかけられました。


絶対バレたよ。

何で、黙ってるのかしら。


「どうされました?」

ナルドさんは何も気づいていないようです。

「いや、何でもないですよ」

ヴィンセント様はそういって、またニヤニヤ例の笑いを浮かべました。


あ、あれ。また何か悪いこと考えてるやつです。

最近、私わかるようになってきた気がします。



「どれぐらい痛みますか?」

ヴィンセント様が机においてあった聴診器をクルクル長い指で回しながら、ナルドさんに目の前の回転椅子に座るように促されました。

「失礼します」

促されるまま、素直に座るナルドさん。


「よし!」

ナルドさんのメガネ(伊達)を外し、机の上に置くヴィンセント様。


「な、何をするんですか?」

ヴィンセント様の整った顔が目の前に迫ってきて、椅子から転がり落ちんばかりに慌てるナルドさん。


「何って診察ですよ」

淡々と答えるヴィンセント様。

「それ、必要です?」

「必要」


絶対うそだぁ~!

明らかに私達が覗いていることを承知で、ヴィンセント様、ナルドさんで遊ぼうとしてますね……。


この光景、ウィル様でよく見たような気がします。

最近、ウィル様が居ないから、もしかしなくてもヴィンセント様は退屈されてるようです。

近頃は真面目人間のナルドさんで遊ぶのがお気に入りのようですね。ナルドさんはストレートに反応されるので、気の毒過ぎます。


しかし、ウィル様は拳一つほど、ヴィンセント様よりも背が低くていらっしゃいましたし、何となく少年ぽさが残っておられ、妖しい美少年風でしたが、ナルドさんだと長身のヴィンセント様より少し高いので、お二人を並べるとまた絵的に萌えポイントが絶妙に違いますね…。


黒髪の執事と金髪の美青年の組合せもなかなか…。


はっ、私ったら何を……!



「さぁ、じゃ脱ぎましょうか」

「ヴィンセント様、そのセリフやめてください」

「では、私が脱がせてあげましょうか?」

ナルドさんの耳元で囁くヴィンセント様。


うわぁ、やぁらしい言い方……ほら、ナルドさん真っ赤になってるし。


「自分で出来ます!」

「自分から脱ぐ派ですか?意外に大胆ですね」

「私は女子じゃないですから」

自分でシャツの前ボタンを開けるナルドさん。


「これでいいですか?」

半端にシャツを寛げた状態で座り、ヴィンセント様を見上げるナルドさん。


きゃ~っ、腐女子には鼻血もんのショットかも。



「痛むのはここですか?」

「はい」

ナルドさんの鍛えられた胸筋に、骨折をしっかり固定するバンドのようなものが見えました。

シャツの裾から手を滑らせるヴィンセント様。


「いっ痛っ……」

ナルドさんが痛みで顔を歪めました。


うわっ、色っぽい……。


「そんな顔されると私も我慢できませんよ?」

「何をです?」

思いっきり嫌な顔をするナルドさん。


「こういうことですよ」

ヴィンセント様がナルドさんの顎を持ち上げました。


あまりの突然の出来事に理解できなくてフリーズするナルドさん。




ガタンッ!!


あ、パロマ、ギブアップだ。


ベッドの下から覗いていたパロマが鼻を押さえて悶えています。

徹夜明けの腐女子には刺激が強かったみたいです。


「な、なんですか?」

硬直が解けて、ヴィンセント様から離れると、女子のようにシャツを慌ててかきあわせるナルドさん。


「す、すみません……」

顔面血塗れのパロマが、ベッドの下から二人の前に這い出ていきました。


「わぁっ、そんなところで何やってるんですか?パロマ…」

ナルドさんが呆れたように言いました。


ですよね。血塗れだし……。


「先に来て、当直明けで休んでいたというところでしょうか?ご苦労様です」

ヴィンセント様はニッコリしてパロマにタオルを投げました。


「し、失礼しました~!」

タオルをキャッチしたパロマは鼻にタオルを押し当て、バタバタと廊下に飛び出して行きました。


ひーん。私を置いてかないでっ。



「ヴィンセント様、いつから彼女に気がついてました?」

ナルドさんが恨めしそうにヴィンセント様を見ました。


「ここに来た時ですけど?貴方は気づきませんでしたか?」

「まったく。本当にヴィンセント様は近頃悪ふざけが過ぎます。これでは今度は私、BL執事じゃないですか…」

ガックリと肩を落とすナルドさん。


「まぁ、今更変わりませんよ。監禁執事もBL執事も変態感は同じです」

自分のせいなのに、慰めにならないセリフを吐くヴィンセント様。


「変わります。私はこれ以上変態扱いはごめんです」

「安心して下さい。どれだけ魅力的でも私は貴方は襲いませんから」

「襲われても困ります。お願いですから早く、普通に治療して下さい」


「あぁ、そうでしたね」

本来の目的をヴィンセント様はすっかり忘れていたようです。


「ウィルがいませんので、久しぶりですが」

ヴィンセント様は診察台の近くから、大きなモニターがついた機械を引き摺ってみえました。


これはベイト製の医療機器で確か、「超音波何とか」ってウィル様が以前言ってたような…?


モニカが大怪我をした時など結構、この邸で怪我人が出た時の使用頻度は高い機械です。なんでもこれを使用すると体内の治癒力が高められる効果があるそうですが、どうにも扱いが難しいらしく……。

ユッカでも使用できるのは、ウィル様かヴィンセント様だけだと聞いています。何でも「らいせんす」とやらが必要なんだそうです。


どういう仕組みかはさっぱりですが、モニカの大怪我の時はあっという間に治ってしまいました。効果が抜群なのは間違いないです。



ナルドさんの背中にプローブと呼ばれる端子のようなモノを当てながら、モニターを真剣に見るヴィンセント様。

気のせいか、機械から放たれる光にお二人がぼうっと包まれているように私には見えました。


さっきのBL風景も素敵でしたが、これはこれで神がかった美しい光景でしたわ……。


私がうっとり見惚れているうちに、治療はあっという間に終わってしまいました。


「はい、終了です。骨折バンドはもう暫く後で外して下さいね」

「ありがとうございました」

シャツのボタンを止めるナルドさん。

心なしか、動きは先程よりも軽くなっているような気がします。機械の効果?が早くも出てるんでしょうか。凄いですねぇ。



「ところでヴィンセント様、この機械って私は脱ぐ必要ありました?以前、ウィル様にお願いした時には脱いだ記憶がないのですが……」

「いや、全然。服の上からでも何ら問題はないはずですよ」

「じゃあ何で……」

大きな溜め息をつくナルドさん。



「サービスですよ、ね?」

「はぁ……?」


私の潜んでるパーティションの方を見て、ニッコリされるヴィンセント様。



本当に我が主には敵いません。

それにしても、いったい私はいつここから出ていったらいいんでしょうか……。



ナルドさんの深~い溜め息と私の溜め息が重なりました。

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