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第21話 神の恵み?

「本日はお日柄も良く~お招きありがとうございます。ただいまご紹介に預かりましたマルサネ・ゲンメでございます」

あぁ、これじゃ結婚式のスピーチじゃないのっ…。


膝のガクガク、止まれ~。


「えっと……大公様、ソーヴェ様、おめでとうございます? 」


しまった。二人の結婚式じゃないんだから。


おめでとうはなかったぁ!

じゃあ、正解は何だぁ!!


事前に色々覚えたスピーチ、何にも役にたってないじゃん。

頑張って貴族の挨拶とか検索したのに……。



顔が強ばって、ひきつっていくのが自分でも分かる。これ、マルサネの顔だから、ビジュアル的に悲惨だろうな。


よし、取り敢えず謝ろう。

謝って終わっとこ。


「今まで私の素行で皆様にご迷惑をかけてすみませんでしたっ、これからは心を入れ換えて頑張りますっ!」


心っていうか、中身ごと入れ代わってるけどね。


「私に出来ることであれば、今後はこの国のために全力で取り組んで参ります。皆様、どうかマルサネ・ゲンメ。マルサネ・ゲンメをよろしくお願いいたします」

私は大声で一気に捲し立てた後、大公と群衆に深々と頭を下げた。



嗚呼、最後は選挙カーの最終日みたいになっちゃったよ……。

私、声には自信があったから、若い頃ウグイス嬢のバイトしてたことがあって……つい出ちゃったわ。


清き一票って言わなかっただけ、自分を褒めよう…。



再び、どよめく群衆。

(「猿姫が謝ってるぞ!」

「どうした?何かの茶番か?」

「挨拶は妙な言い回しだが、敬語使って喋ってる……」)



「ぶはっ。貴女、面白い人になったわね。マルサネ」

ソーヴェ様が口元を押さえ、笑いをこらえながらこちらを見ていた。


「一生懸命な挨拶、大義であった」

大公から平然とした声がかけられたが、大公の口元もぷるぷる震えてる。


絶対、笑うのを堪えているわよ、あれ。


「今後は心を入れ換えて我が国の為に働くと良い」


さすが、国主。耐えて厳格な表情に戻る。


「貴女に何か出来ることなんかあって?マルサネ。何か一つでも取り柄があったかしら?」


隣から蛇姫に公然と因縁をふっかけられる。

全く、イヤな女だわ。


思わず、キッと睨みつける。


「おお、怖い顔ですこと。いつもみたいにキーキー言って、暴れ狂うつもりですの?」

「暴れないわよ。取り柄があるかどうかは、貴女以外に判断してもらえばいいわ」

「ふん、生意気ね。じゃあ、今ここで何かしてみなさいよ」

「は?」

「貴女に出来ることがあればね」

「どういう意味かしら?」

「貴女ができるのは、せいぜい猿真似ぐらいってことよ。そうね、猿回しはお出来になって?」

「言ってくれるわね……」



しまった。

公衆の面前で蛇姫とバトってしまった。


でも、後には引けないわ。

こんな、自分の娘みたいな小娘に負けるもんですか。


私はユッカ大公の前に進み出て、頭を下げた。

「大公様。突然ですが、私の願いをお聞き届け下さいますでしょうか?」

「何だ?申してみよ」

「お祝いに今から一曲、披露させていただきたいのですが、よろしいですか?」


「何を言い出すの?マルサネ。貴女の歌なんか冗談じゃないわよ。貴女、キーキー叫ぶだけの国宝級音痴じゃないの」

私の申し出に、蛇姫が白い目を向けてきた。


あら、マルサネ音痴だったの。


まぁ、そうかもね。野放し教育で誰も何も、マルサネには教えて来なかったみたいだから。



「ほぅ。マルサネが歌う、というのか。よろしい、許可しよう」

「ありがとうございます」



私は胸を張って息を大きく吸った。


よし。



私は、一礼するとゴスペルソングの定番を歌いはじめた。


……♪~♪♪~


あぁ、いい声量が出るわ。気持ちいい。



マルサネは腹筋が鍛えてあるから、腹式呼吸もバッチリ。高音も若いし、綺麗に伸びる。


私は目を瞑って、自分の中から天井へ音を絞り出すような感覚で、歌を紡ぐ。



ザワザワしていた会場も、シン……と静まりかえり、「素晴らしき神の恵み」のメロディーが異世界に響く。




気がつくと、私は万雷の拍手に包まれていた。

大公も立ち上がって拍手している。


わぁ、スタンディングオベーションだぁ……。

私は頬を染めて、深々と挨拶をした。


蛇姫は呆気にとられてこちらを見ている。


へへ~ん、蛇姫め。ザマーみろ。


町内カラオケ大会連続優勝、学生時代はゴスペルコンテストでグループ優勝、ママさんコーラスで鍛えた伝説の律子さまの歌声を舐めるなっての。


あ、声帯はマルサネかぁ。まぁ、基本的に歌は身体の使い方、声の出し方次第ってことよ。


不思議なもので、昔から歌ってる時だけは緊張しないの。プロの歌手になる程の根性はなかったけど……私、人前で歌うのは結構好きなんだよね。



それにしても、さすが万国共通のメロディー。

異世界でも通用して良かったわ。グッジョブ!律子。

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