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番外編 白百合館へようこそ!part6 side:マリン

目の前の男達は2人とも大した実力はないが、この媚薬に犯された身体では、襲ってくる凶刃を跳ね返すのが精一杯だった。

身体の中から突きあげる衝動に、満足に立つこともままならない。


「はっ……はぁ、はぁぅ……」


(……マズい!)

1対1であればまだしも、相手は2人。


そんな私を嘲笑うかのように、男達は間合いをジワジワと狭めてきた。


「くっ……!」

すんでのところで突き出された剣先をよけるが、足を滑らせバランスを崩してしまった。

私はとっさに地面に転がると、一回転して男達の凶刃から逃れる。


「あぁんっ……」

地面に肌がつくだけでも、フワフワとしたむず痒いような感覚に襲われた。

(もぉぉっ! 本当に何よ、これぇぇぇっ!!)


「遅効性の媚薬か……? 誰に盛られたのか知らないが、ずいぶんと辛そうだなぁ? 俺たちが楽にしてやろうか?」

「結構よ!」


男は両手に半月刀を持ち、カンカン!と先程とはうって変わった余裕な表情で、立て続けに連続攻撃をかけてきた。

それを受け止める衝撃で私の身体に変な感覚が走る。


変な声をあげたり、力が抜けてしまうのを歯をくいしばって全力で防いでいるうちに、気がつくとじりじりと高い邸の壁側へ後ずさってしまっていた。


もう逃げ場は、ない。


「あきらめろ……」

ニヤニヤと突きかかってくる男の一刀目をギリギリかわし、二刀目を受け流すとその腕を掴んで思いっきり身をしずめ、身体をそらして背後に投げ飛ばした。

男の身体はどさりと地面に叩きつけられる。


「はあっ、はぁっ……あぁんっ!……私をナメるんじゃないわよ!」

片膝をついて息を弾ませながら私は吐き捨てた。


投げられた男は、すぐにヨロヨロしながら立ち上がる。

(……まさか! 私の力が入らないせい!?)


この状況に私は内心焦りまくった。

(これはヤバいんじゃ……)


「おのれっ、小娘……! 俺たちがたっぷりと泣かせてやるから覚悟するがいい」

頭を振るとビュッと半月刀を突きだす。


「あぅっ!」

私が咄嗟にそれを受け止めたところで、男はニヤリと笑い、私の構えたショートソードごと力一杯壁に向かって叩きつけた。


壁に叩きつけられた私は、ズルズルと地面に崩れ落ちる。


「さぁて、何処の間者か吐いてもらおうか?」

「……しつこい」

「まぁ、いい。身体に聞いてやるか……」

男の指が私の顎にかかる。


ペッ……!


「汚い手で私に触るんじゃないわよ! このゲス野郎!」

「こいつっ!!」

顔に唾を吐きかけられた男は激昂して、反射的に私の頬を平手で強く打った。


……血の味がする。

唇が切れたんだ。


頬がジンジンした。


それがまた、心地よいような変な感覚をもたらすのが泣けてくる。

(やだぁあ……! これじゃ私、まるで変態じゃないのっ!!)



「なぁ、あの箱は何だと思う?イゾラ」

私を後ろ手に縛りあげようとしている男にもう一人の男が声をかけた。


私がカルゾ邸から持ってきた荷物に気づいていたらしい。

……うまく茂みに隠し通せたと思ってたのに!


「勝手にさわらないで!」

必死に叫ぶ私をイゾラと呼ばれた海蛇の男が面白そうに押さえつけた。

「……と言われたらなぁ? 早く開けろ、ボーサ」

「了解~♪」



「……何だ、コレ?」

ボーサと呼ばれた海蛇の男は箱の中身を見てすっとんきょうな声をあげた。


それもそのはず。

私が大事に持ってきた箱の中から出てきたのは……。


黒い猫耳のカチューシャとお揃いの猫しっぽ。


高級品らしく、艶々とした見事な毛並みのリアルな猫耳だった。



「なんでぇぇぇっ!?」

私は腕を拘束され押さえつけられた格好のまま、驚きの声をあげた。


カルゾ邸で主人から私が託されたのは、ルーチェさんの主人に贈る予定の髪飾りだったはずなのに。

それがどうして執事長(ナルドさん)コレクション(ねこみみ)が入っているの~!?



「また、これはいい趣味してるな……?」

ボーサと呼ばれた男はニタリとすると、私の頭にその猫耳カチューシャを装着した。


「はぁん……!」

髪の毛や耳にボーサの指が触れただけで私の意思に反して、悩ましい声が出る。


(こんなの変態道まっしぐらじゃないの! 覚えてなさいよ、パロマ! 絶対にソーヴェ(ごしゅじんさま)様にいいつけてやるから!!)

涙目で、目の前の男たちを精一杯見返しながらパロマを呪う私。


「いい仕事したな、ボーサ!」

男たちの目の前には、猫耳カチューシャをつけた発情して涙目で悶える巨乳のロリ顔メイド。

スカートが破れ、チラチラ見える白いむっちりした太腿もまた扇情的だ。



男たちはちらり、とお互いに目配せをするとゴクリと大きく喉をならして私に飛びかかってきたのだった……。

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