7.予感
フォルナ突然思いついたように「ねえ、これから一緒に旅をしない?」と言った。
「僕と?」
「旅となれば一緒の方が心強いし、楽しいわ」
「僕は大歓迎だけど…………僕は宝石屋だから、また盗賊が僕らを襲ってくるかもしれない。そうすれば、君に危険が及ぶ」
「そんなの、大丈夫よ。私達二回も盗賊に遭遇しても生きてるのよ。私はとても幸運の持ち主だから、そんなの心配ないわ。しかも…………私は地図が読めないから、あなたに読んでもらいたいし、料理もお願いしたい…………なんて」
「……わかった。君が良いなら一緒に行こう」
リュキは握られた手に力をこめる。
「これからよろしくね、リュキ」
「ああ、よろしく、フォルナ」
グアナもよろしくと言っているつもりなのか、眠っているリュキの火馬、オラムのたてがみの毛づくろいをした。
突然体を触られた驚きで火馬が嘶き、グアナを蹴飛ばす。
「もう、何やってるのよ、グアナ」
「オラムも、やっと起きたか」
二人は、呆れた顔を見合わせて笑いあった。
二人の旅は、始まったばかりだ。
◆
「夕暮れの盗賊達がゴレッツの王子サマから金をたんまり頂いたらしいぜ」
「まさか、見つかったのか?」
「ああ。手の甲に模様がある男をトラモント平野で見つけたらしい。次は、近い霧の町に向かっていて、陽の王国のやつらは、水の国の領地で簡単に手出しできないから金さえ与えりゃあ強盗団の俺らが勝手に殺してくれると思い込んでるらしいぜ」
「本当か? おい、霧の町にくるってのは。そいつは赤子の手をひねるようなもんだ。金儲けができるぞ!」
大男達がアジトの中で酒を思う存分飲み、笑い呆けていた。
盗賊達のアジトは地下のような場所でとても汚く、あちらこちらにいろんな物が投げ捨てられている。
その様子を、鉄格子の中に入れられた女と子供達が感情のない瞳で眺めていた。
床には手ほどの小さな魔獣が木材を齧っている。
そこへ、酔っ払いの盗賊が掴み損ねた瓶が落下して、魔獣は隅の方へ走って逃げた。
隅の小さな影から手が伸び、魔獣を包み込んで優しく撫でる。
「おい! 餓鬼! 仕事だ」
影がもぞりと動く。
「今の話、聞いてたか? トラモント村から来た石屋を油断させて、金目の物を盗んで来い。石屋をやっているそうだから、太陽石や夜光石をたくさん持っているはずだ。そうすれば、すげえ儲かるぞ。お前も一生食べていけるようになるかもな?」
その言葉に反応して、影が立ち上がる。
「おう、行ってこい。ここに持ち帰ってくれば金貨をやるぞ!」
声をかけた男が瞬きすると、もう影はいなくなっていた。