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払暁の魔獣使い フォルナ  作者: 小鳥葵
道中の邂逅
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2.盗賊との戦闘

 フォルナと石屋の男の視線が交わった、その時。


「盗賊が裏門から村に入ってきた!! 逃げろ!」


 悲鳴と叫ぶ声が聞こえ、その交わりが解けて声のした方へ顔を向ける。


 大振りの剣を持った大男がこちらへ突進する勢いで向かってきていた。


「宝石屋を狙うつもりだ! おい、リュキもそれ置いて逃げろ!」


 宝石屋の主人は、リュキという名らしい。


 リュキは店の外へ出るが、その場を動かない。その顔には、意思がみなぎっていた。


(立ち向かうつもりだ!)


「おい! 何してるんだ、リュキ!」


 大男は今にも大剣をリュキに振り下ろしそうだ。


 フォルナは、覚悟を決め、盗賊の男に近づいた。


 懐から美しい宝玉のついたブーメランを素早く取り出して、大男に狙いを定め力強く投げた。

 ブーメランはまるで意思をもつ鳥のように空中で屈曲し、大男の眉間に当たった。男は叫びながら倒れこむ。


「うぅおおぉぉぉぉぉ!」


 男は片手で額を押さえ、鋭い目がフォルナを睨みつけていた。


「……よくも、よくもこの俺をやってくれたな!!」


 男はフォルナにつかみかかろうとしてくる。


 フォルナはバックステップで避け、胴体に蹴りを入れたが、素早く足をとられて転倒した。


(この男、力が強い‥!)


 殴られる、と思った時背後からリュキが男に突進し、フォルナは攻撃を免れた。


「こ、の‥‥なにしやがる!」


 男がリュキに振り向いた瞬間、男の動作が止まり、リュキを見つめた。


 その様子にリュキも疑問に思ったようだが、機を逃さずすぐに男へ追撃を仕掛けた。


 男はリュキの拳に気づき、防御の姿勢をとって守った後、村の外へ一目散に逃げていった。



「君、大丈夫か? ‥‥青痣になってるじゃないか!」


 後ろから声をかけられたフォルナは驚いて、首の後ろの傷に手を当てた。


「え、ええ。心配ないわ。私、薬師なの」


「‥‥薬師、なんだ」


 フォルナはリュキに振り返り、急いで鞄からガーゼを取り出して、接着用の薬液をつけてから傷口を覆った。


「僕は見ての通り宝石屋をしているから、盗賊には前も襲われたんだ」


「そうなのね……あなたは怪我していない?」


「どこも怪我していないよ。お気遣いありがとう」


 リュキは脱げた手袋を取って、手にはめた。


「それよりも、この石はとても綺麗ね。こんな美しいもの、この村に来るまで見たことがなかったわ」


 フォルナは店頭に並んでいる真紅の宝石を指差した。


「これは‥‥」


「旅人さん! 大丈夫か? 怪我はないかー?」


 我に返った村人達がフォルナの元へ駆け寄ってきた。


「大丈夫。どこも怪我していないわ」


「なら良かった。さあ、今日はもう宿屋で休むといい」


「そうさせていただくわ。……では」


 フォルナは村人達に連れられて、宿屋で休むことにした。


 客室に1人になると、首の傷口を隠すガーゼを手で当てた。


(あの人には血を見られたかもしれない。もうすぐここを去らなければいけないわね)


 数分経つと、ノックとともに飯の支度ができたが食べるかと宿屋の者が聞きにきてくれた。


(ここで食べてから、準備をして旅立とう)


 食べると返事をし、食堂へ足を運んだ。


 室内は、窓から差し込んでくる光が部屋を照らして心地良い空間となっている。

 フォルナの他に泊っている旅人達が席に座って、楽しげに談笑していた。


「あ、さっきの旅人さん。こっちの席にどうぞ」


 そう声をかけてきたのは、先程の案内人だった。


「あら、あなたはこの宿屋の息子だったのね」


「そうだ。今は案内人の特訓中だからな」


 案内人の少年は、胸を張った。

 フォルナが席に腰掛けると、たくさんの美味しそうな料理が運ばれてきた。


「これがパン料理ね……とても美味しそうだわ」


「そうだ。母ちゃんが焼いたパンだから、口に合うと思うぜ」


 案内人も、隣の席に座って食事をとった。


「おや旅人さん、先程は大丈夫でしたか? この村に来たばかりだというのに、申し訳ありませんなぁ。この辺りには荒くれた者が多くいまして」


 他の旅人と話していた村長も、フォルナを気にして言った。


「大丈夫です。少し驚きましたが」


「……あんた、すごく勇敢なんだな!さっきの盗賊のやつに向かっていく姿、格好よかったぜ」


 案内人は、目を輝かせて言った。


「‥‥そんなことは、ないわ」


「謙遜するなよ。あんたのおかげで宝石屋は何も盗まれなかったんだから。一体どんな武器を使ったんだ?剣……ではないよな。短剣か?」


「ブーメランよ」


 フォルナは懐からブーメランの先を見せる。


「うおっ、いつでもその中に入れているのか」


「そう。父からの形見で……大切な物だから」


「へぇ。こんな武器見たことがなかったな。乗っていた変なロビンといい、この世界にはまだまだ知らないことがたくさんあるんだな」


「そうね……私も、この世界には知らないことがたくさんあるわ」


 フォルナは食べ始めると空腹から料理を残らず平らげた。


「ご馳走さまでした。自然の恵みに感謝します」


 フォルナは食後の祈りを捧げた後、案内人らにも感謝を告げて自室に戻った。


「さてと、これから準備しないとね」

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