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2.遺跡の守り手

 ◆

 フォルナはグアナを全速力で走らせ、目的地の遺跡へ辿り着いた。


 リュキを乗せたオラムも火馬だ。グアナに負けるまいと、必死についてこれていた。


「グアナって本気を出すと、とっても速く走れるんだね!」


 ルルートが褒美の薬草をグアナにあげるとグアナは喜んだ。


(フォルナみたいに、がつがつ食べてる……)


 そう思ったのは、内緒だ。


「この遺跡ね」


 目の前には、古代のものであろう神殿の柱が崩れているのが見えていた。


「どこに、杖があるんだ?」


 リュキが進んでみると、深い湖の中に神殿が沈んでいることがわかった。


「杖も、あの中に沈んでいるのか?」


「まさかぁ……」


 ルルートが湖を覗き込む。


「おい、ルルート。ここには守り手もいるらしいから、安易に近づかないほうが……」


 リュキが言い終わる前に、ルルートは思わず水面に触れてしまっていた。


「まあ、水に触れたところで何も起きるはずない……ってうわっ?」


 不思議なことにルルートが触れた所から波紋が広がり、湖の隅々まで消えずに広がっていった。

 すると、何かの地響きのような音がして、水が引いていくのが見えた。


「階段ができてるわね」


 水が引いた後には長い階段がらせん状に積まれていた。


「水面に触れたら、階段があらわれる仕組みだなんて、ものすごい技術だね」


「ええ。慎重に降りましょう。杖はきっとこの先よ」


 三人は、階段を降り始めた。

 

 階段は見る限り永遠に続くかと思われたが、しばらく歩くと底が見え、神殿の入り口へとつながっていた。


 その神殿は新しいかと思えるほど綺麗で、三人は顔を合わせた後、そっと扉を開けた。

 中は、驚くほど広々としていた。

 水が引いたばかりだからか所々の隙間には水が溜まり、天井にはそれが光に反射した波の模様が、絶え間なく動いている。


「美しいわね……」

「ああ、そうだな……」


「っと、こうしちゃいられないよ! 二人とも!」


 二人はしばらく神殿内を眺めていたい気持ちになったがルルートの言葉で振り切り、杖を探した。


「奥の建物にあるかもしれないよ!」

 ルルートが指差す先には、つながる廊下の奥にまた別の建物があった。


「行ってみよう」


 三人は廊下を通り、別館の扉を開けた。


 そこに、杖はあった。


 町長が言っていた通り、杖は見事に美しかった。


 この杖も大小の宝玉が埋め込まれており、全体を見るとまるで、純白の生物のようでもある。


「本当にあったわ。これで苦しむ人々が、救える!」


 フォルナはすぐに、杖を手に取ろうとする。


「おい、フォルナ!! 気をつけろ! 周りに守り手がいるかもしれない」


 フォルナは触れる前に、慌てて周囲を見渡した。


「……いないよう、ね」


 フォルナは守り手らしきものが見当たらないことを確認すると、杖を手に取った。


 振り返り、フォルナが口を開きかけた次の瞬間だった。


「あぶない、フォルナ!」


 何かの影が視界の中で動くのが見え、リュキは反射的にフォルナを突き飛ばした。


「きゃっ!」


 フォルナは衝撃でよろめき、杖を取り落とす。


 ルルートが次に瞬きをすると、杖はなくなっていた。


「杖が……! どこにいったの!?」


「上だ!」


 二人がリュキが指差した先を見ると、天井に杖を口にはさんだ魔獣らしきものがフォルナ達の様子を窺っていた。


「あれが、守り手……?」


 それは床に降り立ち、威嚇しながらフォルナ達に近づいてくる。

 守り手は金と黒の体毛が生えていて、今にも襲いかかってきそうな獰猛な顔つきをしていた。


「あれは、見るからに危険そうだ。フォルナ! 前に火狼にやったのは、出来ないか!?」


「『語りかけ』よね。……やってみるわ」


 フォルナは精神を研ぎ澄まし、守り手に向かって大きく波動を打ち出した。


「威嚇を、やめなさい!」


 フォルナの語りかけの力強さに、リュキとルルートまで力が抜けてしまうほどだった。


 しかし。


 相手に効果は現れず、一向に威嚇を止める素振りを見せなかった。


「おかしいわ。効かないなんてこと、今まで無かったのに!」


 守り手の杖を噛んでいる口の隙間から荒い息を吐いているのがわかる。


 リュキは、仕込んだ腰帯剣を出して構えた。


「リュキ、なにそれ! あなた剣なんて持っていたのっ?!」


「ああ。モランダさんに貰ったんだ。って前見て、フォルナ!」


リュキは、剣でフォルナに急襲をかけた守り手の爪からフォルナを守った。


「フォルナ! 大丈夫?」


「大丈夫よ。ルルは下がっていて」


 フォルナはブーメランを手に取り、頭に向かって力強く放った。

 ブーメランは弧を描いて守り手の背後まで高速で廻った後、首筋に直撃しフォルナの手に舞い戻った。

 守り手の首の毛を切り裂いて、はらはらと落ちる。


「……? 妙ね、いつもと違う……」


 フォルナが再度放とうとした時。


 その次の瞬間には魔獣の姿は消えていた。


「えっ!?」


「フォルナ、危ないっ!」


 ルルートが叫んだ。


 だが、それも間に合わず別の角度からフォルナの体は鋭い爪で横殴りにされていた。


 フォルナの服が青黒く染まっていくのをリュキは見ていた。


「フォルナァーッ!!」


 リュキの悲痛な叫び声が、神殿に響き渡った。

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