13.紋章のある男
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客室に着くと、まず三人は食事を満足するまで食べた。
「あんなに買っていた食材が、もう半分しかなくなっているわね……」
「これじゃ、すぐに僕の宝石を全部売る羽目になるよ……」
リュキは宝石箱を抱え込み、悲しげな顔をした。
「霧の町で僕らは優遇されているから、ここでまたたくさん食材を買いたいところだけど……」
「普段の町の人の食生活もぎりぎりだし、ここで買うわけにはいけない、というかできないわ」
「仕方ない、この次の町で買い足そう」
ひと段落つくと、二人はルルートの素性を聞いた。
ルルートは、盗賊団に入り盗みで生活をしていた女の子であった。歳は数えておらず、わからないという。親も知らず、盗む以外の生き方を知らなかった。
フォルナとリュキはこれまでの旅の経緯を話した。
「だから、ウチがプルシュカ語を話せなくてびっくりしたんだね……」
「そうよ。……そうだわ、後で本の解読ができる人を探さなければいけないわね」
「モランダさんの息子さんに聞いてみよう」
その後、言いたいことがあるようにルルートはじっとリュキを見つめていた。
「どうかしたのか?」
そうリュキが聞くと、ルルートは「リュキは、宝石屋だよね?」と質問した。
「そうだけど……」
「うーん……フォルナとリュキは、トラモント村から来ているし……」
「ルル、どうしたの」
フォルナはルルートをルルと呼ぶことにしたのだった。
「それがね……ウチは、トラモント村から来た宝石屋から盗むように言われた。だからリュキがそうだと思って、盗んだんだ」
「よく、僕が宝石屋だとわかったね……」
「うん、ウチわかるよ!」
「私には……わからないわ。それで、何かあるの? ルル」
ルルートはリュキの顔を見上げた後、決心したように突然リュキの手袋を外した。
「あ」
目にもとまらぬ速さだったのでリュキにも止められなかった。
リュキの手の甲には、紋章の印があった。
「やっぱり、リュキの手にある!」
ルルートは困惑した表情で、二人を見つめた。
「ウチは、紋章がある悪人を捕まえろって、聞いたんだ……リュキ達は、追われているの?」