11.アジトでの決戦
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「おお、良い品じゃねえか。よくやったな。ほらよ」
大男は宝石箱と宝玉のついたブーメランを受け取った後、金貨を数枚床にばら撒いた。
大男の膝ほどまでしかないルルートは、その金貨を素早くかき集める。
「おい、みんな。こいつが良い品を持ち帰ってきやがったぜ!」
「やったな」
「まだ町のやつら、隠してやがったのか」
「これで俺らは大儲けだ。今日は乾杯するぞ!」
「「うおー!!」」
盗賊達は、酒を飲んで大盛況だった。
「きょうはって……いつもかんぱいしてるくせに」
ルルートは、トチを手で遊ばせながらスカーフの下でボソッと言った。
(金貨3枚……これで、また生きられる)
しかし、いつもの仕事後とは異なり浮かない表情をしていた。
(ウチに食事をくれたさっきの人、今頃困っているかな……でもいいんだ。私はずっとこれで生きてきた。盗られる方が悪い)
そう思い込んで自分を納得させようとしても、ルルートの心にはなぜか、わだかまりが残った。
「まだ町のやつらはこういう大事な物を持ってやがるかもしれねぇぜ。明日でも襲いに行くか」
「それはいいな。男どもを今度こそぶった斬ってやる」
そう男達が騒いでいたが、アジトの扉を叩く音が聞こえ急に辺りが静かになった。
男達が顔を合わせ、斧や大剣を持って構える。
扉を勢いよく開けると、魔獣二匹を連れた少年一人と少女一人が並んで立っていた。
「知ってる顔じゃねえな……餓鬼、何者だ?」
「盗品を全て町の人に返却して。あと連れ去った女性や子供達も全員町に帰して」
「なんだと? ふざけているのか? そんな義理、おまえらにはねえぞ!」
盗賊達は現れた二人に武器を振りかざすが、逆に少女の足の長い蹴りで吹っ飛ばされてしまった。
「侵入者だ! 殺せえぇぇ!」
残った男達も突然の敵に戸惑ったが酒を投げ捨て、各々斧や、大剣を手に取った。
(あの、おねえちゃんだ!)
トチを懐に隠したルルートは驚き、酒樽の中に身を隠しながらも、戦いの様子を見守った。
盗賊達は立ち向かうよりも早く少女に格闘技を入れられてしまい、後から入ってきた巨大な砂色の魔獣に噛みつかれてバタバタと倒れていく。
間もなく、立っているのは残りわずかとなった。
「おまえら……なにしにきた? 金ならここにある。取っていけ」
盗賊の一人が金を差し出したが、現れた二人は首を縦に振らなかった。
「先ほど提示した要件を全て行って、フォッグスが解散するなら私はもう動かないわよ」
「フォッグスが解散? そんな馬鹿な」
そう吐き捨てたが言った傍の男の顎が蹴り上げられたのが見え、盗賊達は怯えて何度も頷いた。
「約束して。本当に解散していなければ、もっとひどいことになるわよ」
「はい。約束します、だから許してください!」
残った盗賊達は鉄格子の鍵を外し、盗品を全て二人の前に差し出した。
「よし、お前たちもこいつらを連れてどこかへ行くんだ」
「はいぃ!」
盗賊は倒れた男達の分も外に運び込んだ。
解放された町の女性達も二人にお礼を言って盗品を持って、霧の町へ帰って行った。
やがてアジトに残ったのはフォルナとリュキ、そして酒樽で隠れているルルートしかいなくなった。