世界を救うために必要なもの。
「その結果、コインではなく、石になったと」
神妙な顔で頷くルエにリーリエが頭を抱えた。いいんじゃないの、とテオがいなす。
「不当に安いよりは、不当に高い方がまだどうとでも出来るよ」
「誕生日プレゼントのために石砕くの? 最終目的遠退かせてどうするのよ」
「正直世界平和よりユークの誕生日の方が大事なんだけど」
「同感」
その回答をする魔術士と召喚士に対して、リーリエはいっそう大きいため息を吐いた。自分も過保護な自覚はあるが、この二人はよりいっそうその傾向が強い。
「でも、」
この世界で石と交換出来ないものは、おそらくないだろう。
なんでも、ユークの望むものを与えることが出来る。
しかし、それをユークが良しとするかと問われれば、それは違うのではないだろうか。
彼の大目的は、世界を救うこと。
だって、
異世界から来た勇者達は一向に世界を救ってはくれないから。
この世界は紅い石を集めて聖域の神殿に供えなくては、神の怒りは収まらないとされている。
異世界から勇者が来るようになったのは、ここ近年になってからだと聞いているが、彼らは湯水のように石を砕いていく。際限があるのどうかもわからないそれを、どこで手にいれるのか、世界を救う手段であるそれを、容赦なく消費していく。
それがあれば、強い仲間も、立派な武器も手にはいる。現に、彼らは多くの強力なパーティーを引き連れて旅をしていると聞く。
でも、その目的はユークのそれとは違う。
より強く、より裕福にならんとするその旅路は、幾つもの村を焼き、大勢の民を殺して進む。
ユークの村がそうされたように。