彼らは人知れずレベリングしている。
「なんで今日もルエなの……、なんで……、俺もユークと寝たい……」
「いい加減ショタコンやめなさいよ、テオ」
「ショタコンじゃないよ、ユークだけだよ!」
「うん、それもどうかと思うぜ……」
「ううぅ、だってぇ、最近俺には全然なついてくれないしぃ……」
「あー、ほら泣かないでよ、おねがいだから!!! 何しに来たかわかってんでしょ!」
喋りながら森の中を進んでいくのはアジェ、リーリエ、テオの三人だ。三人ともが三人とも戦闘服を身にまとい、歩を進めていく。
……、出てくる下級モンスターをいとも簡単に一蹴しながら。
◇◆◇
先陣を切るのはアジェ。大きな自身の身体と同等ほどもある大剣を重力を感じさせない勢いで降りさばき、目の前を薙いでいく。
二番目は発光の魔法、かつ後ろからの不意討ちに対して一瞥もせずに防御魔法を展開しながらも未だめそめそし続けるテオ。
後ろから、弓と短剣を使い分け、時折木枝を削ったものでモンスターの脳天をかち割りながらリーリエが声をかける。
「ねえ、本当に雑魚しか出てこないけどあってるの?」
「多分」
「うっわ……、だから今日こそアジェと先頭代わろうって言ったのに……」
「この人本能で探してるもの見つけるタイプだものね」
「遠回しに悪口か?」
振り向いたアジェに向かってテオが「後ろ」と一言。顔の向きも変えないまま後ろに大剣を翻す。生き物の肉が裂ける音だけが耳に残った。
「あと一週間なのに間に合わない気しかしない」
「それでも他に方法がないのよ……」
「ルエのドラゴンで探せないの? 上から探せばすぐ見つかりそうなのに」
「夜中にあんなにデカい竜飛ばしてみろよ、他の夜行性の奴等がこぞって出て来て阿鼻叫喚が想像に容易いぞ」
「地道にやるしかないのか……」
「このやりとり何回目よ……」
「リーリエが身体張るっていうのはどうだ?」
「この腹筋と平らな胸を見ても同じ事言えるのかしら」
「あぁ、うん、まぁ、そうだったな……」
「アジェ、あんただからモテないのよ……?」
「それより俺はそろそろ夜ちゃんと寝たい……、睡眠不足……」
そんな会話を交わしながらも足を進める一行。
そこに、それは、突如として響き渡った。
ぴぎぃいいいいいいいいい、という甲高い音。
「大変不服ながら、アジェの勘が役に立ったね」
「さっさと倒して帰りましょ。私も眠いし」
「噂が大体あってればそれほどかからないと思うぜ」
土を持ち上げて地中から現れたのは赤黒い巨体の生き物。大きすぎて視界に全体が収まらない。長い尾から目線を追ってとぐろを巻く胴体、そして頭部を見て、やっと大蛇であることが理解できる。
「目標は?」
「20枚も有れば何でも買えるだろ」
「じゃあ、ユークの誕生日プレゼント代を稼ぎますか」