友人、歓迎す!
デリカ国のある大陸から、大海を超えた絶海の孤島。
樹海に囲まれ、山脈に囲まれた高地の上に、巨大な城が聳えている。
その空には常に黒雲が立ち込め、稲光が止むことはない。
「ここが、ロウラの家?」
そう行ってグレンは城を見上げる。
「そうよ」
胸を張って、自慢のツインテールを後ろに払う私。
ひとっ飛びで、城に行って増築したムーンルームでお茶をしてもいいのだが、これを機にグレンに私の凄さを見せてあげるのも余興ではなかろうか。
そんな理由で、私はグレンと一緒に魔王城の麓に立っていた。
「本当は、自分で海を渡って森と山を越えてここまで辿り着くのよ。でも貴方は特別、私のお友達だからね」
「あ、うん……ありがとう」
私の凄さに驚愕するグレン。
(こんなところ、わざわざ一人じゃ来ないよ……)
私はグレンの尊敬の眼差しを背中に受けながら、見上げる城に入るための洞窟に入った。
洞窟にはたくさんの松明が燃え盛り、岩肌を照らしている。
ごつごつした感じが強調され、実に哲学的だ。
「こんなに松明があるのに、煙が出ないんだね」
不思議そうに口にするグレン。
むっ……。
そこ突っ込まない。
私は無視してグレンを洞窟の先へと案内する。
すると、正面から不気味な気配と獣臭が漂ってきた。
「ロウラ、なんかいるよ!」
グレンが立ち止まって声を上げた。
「ええ、この洞窟いっぱいいるわよ」
私は当然のように言う。
「……危なくないの?」
と言うグレンに、
「平気よ」
と、返す。
平然と歩き続ける私に、おそるおそる付いてくるグレン。
すると視界の向こうに、巨大な牙を生やした大型の黒豹が姿を現した。
「シャドウ・パンサー!!」
グレンはその名を叫んで私の後ろにしがみついた。
その感触に一瞬ドキリとするが、まぁ男の子だから仕方がない。
こういうタイミングで美少女にソフトタッチをしたくなるものだ。
グレンの身体から、私にドキドキが伝わってきている。
シャドウ・パンサーは、私と私の後ろに隠れるようにして歩くグレンとすれ違い、どこかに行った。
「襲って来ないんだね……」
「ええ、ちゃんと躾けてあるわ」
「躾ける!? 魔物って躾けれるの?」
「簡単よ」
私は言った。
魔王になるだけでいいんだから。
「そうなんだぁ……」
正しい知識を身に付けて、グレンは納得した。
「何食べて生きてるの?」
「ちゃんと餌をあげてるわよ」
私がそう言ったタイミングで、グレンは洞窟の隅にある骨に目をやった。
人間らしき髑髏には気がつかなかったようだ。
次に、がしゃがしゃと音が聞こえてきた。
洞窟の向こうから姿を現したのは、甲冑を着込んだ二人の剣士だ。
とてつもなく大きな剣を持っている。
鞘はない。
「誰かいるよ!」
「暗黒将軍ね」
私は言う。
「将軍なの? 二人いるのに?」
不思議そうにグレン。
「まぁ、そういう名前なのよ」
平然と歩き続ける私と、相変わらず私に触れていたい思春期な男子グレン。
「何してるのこの人たち?」
そう言えば何をしてるんだろう。
「暇なんでしょ?」
そう言う私に、すごく何か言いたそうな感じで暗黒将軍たちはすれ違っていく。
洞窟を削り出した階段を上り、また歩いていくと、縄ばしごがあった。
そこで私はある事に気付いた。
「……グレン、先に行って」
「?」
不思議そうな顔をして、縄ばしごを昇っていく確信未遂犯グレン。
私のスカートを覗こうったって、そうはいかない。
梯子を登り、転がってきた岩を魔法でぶっ壊し、三色のオーブをはめ込んで扉を開くと、一面のマグマが広がっていた。
「……ロウラのお家って、なんか凄いね」
グレンが私の凄さに気付き始めている。
マグマの海に続く陸地を歩く私たち。
ふとグレンが言った。
「……マグマの近くって、もっと暑いんじゃない?」
ちっ。
「それにさロウラ、火山ガスって知ってる?」
「……細かいことはいいのよ」
(細かいかな……?)
最後にトロッコに乗って暗闇を走り抜け、私たちは城にたどり着いた。




