友人、招待す!
「ロウラがこの学校に編入するなんて思わなかったよ」
放課後の校庭。
体育館の前で、グレンは私にそう言った。
「私もこの学校に編入するなんて思わなかったわよ」
夕日にツインテールを煌めかせながら、私はグレンと目線を合わせずにそう言う。
まさか私に友達ができるなんて思わなかったし。
そもそも、こんな美少女の私に友達ができないこと自体がおかしいのだが。
「これで毎日遊べるね!」
グレンが笑顔を見せてくる。
「毎日は来ないわよ?」
この子は何を言っているんだろうかと、私はグレンを見た。
「え? どうして?」
不思議そうな顔をするグレンに、
「私、特待生だから。自由登校なのよ」
「特待生? 確かにロウラの魔法は先生もびっくりしてたけど……そんなの、この学校にあったんだね」
グレンが感心したように言った。
私が校長につくらせたのだ。
魔法で操って。
まぁ、そんな些細なことはどうでもいい。
とにかく、私は友達がいなかった。
だから、これまで友達とやりたかったことをグレンとやるのだ。
そう、あんなことやこんなことを。
私はわざと思い出したように言う。
「私、グレンのお家に行ったことあるのよね」
「そうだね。夜中、僕が寝てる間に窓から遊びに来てくれたよね」
グレンは笑顔で言った。
私は顔を真っ赤にした。
「何よそれ! 私がグレンに夜這いかけたみたいじやゃない!」
「え、でも……」
いきり立った私に、グレンが驚いて絶句する。
まずい、このままではグレンに嫌われかねない。
「ま、まぁいいわ。夜中に行ったのは事実だし……」
私はクールにそう言うと、横目でグレンの顔色を伺った。
グレンは笑顔で私を見ていた。
私は顔を赤くして目をそらす。
だが、私の妄想実現は揺るぎない。
「私もグレンの家に行ったんだから、グレンも私の家に来る?」
余裕のある言い方に成功した私。
長い一瞬の間を空けて、グレンが言う。
「いいの?」
私は緊張をごまかすために、とにかく余裕そうな気持ちをつくる。
「ええ、いいわよ。グレンがどうしても来たいって言うなら」
グレンは少し考えて、
「でも、女の子の家にお邪魔するなんてなぁ……」
(っ! こいつ……!)
私の緊張が沸点を超えた。
「なんなの、あなた! 私の家にどうしても来たくないって言うの!?」
「え!?」
グレンがびっくりして声を上げる。
私は止まらない。
「だってそうでしょ!? どうしても来たいなら来てもいいって言ったのに、断るってことは、どうしても来たくないってことじゃない!」
「え? いや、なんか違うような…」
「来たいの!? 来たくないの!? どっち!?」
「え……その、行きたい……です」
私は嬉しさを顔に出した。
「なによ、来たいんじゃない。しょうがないなぁ」
顔が緩む。
とても幸せな気分だ。
グレンは私を見てドキドキしていた。
ちょっと表情が固いのは、緊張のせいなのだろう。
私みたいな美少女の家に誘われたのだから仕方あるまい。
「それで、ロウラのお家はどこなの?」
そう言えばとグレンに訊かれる。
「うんっとね……」
〝魔王城〟と言って伝わるのだろうか。
ここからの道なりを説明した方が確実な気がした。
「ここから、ずーっとあっちに行った所よ」
我ながら分かりやすい説明だ。
「へー」
と、グレン。
ほら、伝わった。
「じゃあ、行くわよ。グレン、空は飛べる?」
「空? え、うん」
返事をしたグレンは、何やら神妙な顔をした。
その全身に魔力が満ち、ゆっくりと身体が浮いていく。
一体何に憧れているんだろう。
「まぁいいわ、私の魔法でいきましょ」
そう言うと私は、グレンと一緒に軽やかに身体を浮かせた。
「わっ!」
グレンが声を上げる。
私たちは空高くへと舞い上がった。
赤く染まる街が広がり、夕日が眩しかった。
「いくわよ!!」
私は初めて友達を家に招待することに胸をときめかせながら、大きな声で言った。
テンションに比例して、勢いよく空を飛ぶ私たち。
「ええーーーっ!?」
なぜか奇声をはっする不思議な友達と一緒に、私は平地や森や山、そして海を越えて魔王城へと向かった。




