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黒酢ノ短編集

「1~2時間先の未来を疑似体験できる」能力に目覚めた俺の話。

作者: 黒酢

 俺は一見、どこにでもいる普通の高校生だ。成績は決していいわけではないが悪いわけでもなく、運動も上手いわけではないが全くできないわけではない。


 そんな平凡を地で行く俺だが、一つだけ周りの人間と異なるところがある。


 それは俺が特殊な能力に目覚めた「特殊能力者」であるということ。


 俺は中学2年の夏、雷に打たれて病院に運ばれた。幸いにも一命をとりとめたのだが、退院した翌日から奇妙な症状に襲われるようになる。


 目を閉じると鮮明な映像が頭の中に流れるようになったのだ。


 最初はその症状に悩まされていたが、あるときこれが1、2時間先の自分の見ている光景であることに気が付いた。


 そして、そのことに気づいたとき以来、この能力を制御するコツをつかんだ。


 どうやら、疑似的に未来の自分を自由自在に動かすこともできるようだ。もちろんその動きによって未来で行動が制限されることは無い。


 そう、俺は雷に打たれたときに「1~2時間先の未来を疑似体験できる」能力に目覚めてしまったらしい。


 なぜそんな特殊能力に目覚めたのか、どういった原理なのかといったことは残念ながら分からない。だが、やはり雷に打たれたことが原因なのではないかと推測している。


 この特殊能力は案外役に立つ。未来で起こる現象を事前に知ることができることでいくつもの失敗を回避してきた。


 また変則的な使い方ではあるが、現実ではできないような……それこそ犯罪行為にさえ手を染めることも出来る。


 ところで、今日はこれから数学の期末テストがあるのだが、50分ほど前に特殊能力を使った。1時間後の俺は堂々と席を立ちカンニング。

 

 もちろん先生に怒られたがそれは疑似的に体験した未来の話。本番でカンニングする必要は無い。


 何が出るのかは細かく把握しているし、答えも大体把握した。そしてこの50分間で教科書の似た問題を一応復習した。完ぺきだ。


 この特殊能力さえあれば俺の未来は明るい。





♦♢

 翌朝、俺はいつものように目覚ましのけたたましいアラームにたたき起こされる。


 今日は世界史と現国に英語のテストだ。もっとも特殊能力がある俺は焦ることは無い。


 一時間目は世界史。目を閉じて1時間半後の未来を……


 「……おかしい」


 何ということだ、緊急事態だ。能力が発動しない。なぜだ……。しかし今考えている時間はない。学校に遅刻してしまう。学校についてからもう一度試そう。きっと大丈夫だ。


 「行ってきます」


 学校に向かう途中、ようやく俺は能力が使えなかった理由が分かった。


 俺の最期の記憶は、迫りくるダンプカーの巨体。そう、俺は能力を使えるはずがなかったのだ。


 なぜなら……能力を使ったときから1時間半後の世界に俺という人物は存在していなかったのだから。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 特別な力を持った主人公が、あくまで学生らしく過ごしているのが興味深いです。能力を悪用せず、自分が楽しむ範囲で使っているのが平和的に感じました。『能力を得て生き返る』という作品は多々あります…
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