06〜終〜
取り敢えず序はこれまでです。
夜明け頃にゴブリンの足止めをしていたバンおじさんが率いる村人達が帰って来た。
皆無事を確かめ合い家族で抱きしめ合っていた。
斯く言うルシアスも父のロビックに抱き締められた。
帰って来た足止め役の者達に暖かいスープを渡して労う。
日が完全に出ると村人全員が起床して朝食を食べる。
朝食といってもスープだけしかないがそれでも何も食べないよりはマシだ。
そしてもうひと頑張りと気合を入れて街へと向かう。
そこから数時間後草原までやって来たここから見える丘の向こう側に街があるので皆の歩く足にも自然と力が入り活力が湧く。
一筋の光が見えたところで絶望の足跡が聞こえて来た。
後ろを振り返るとゴブリンライダーが追いかけて来ていた。
ゴブリンライダーが載っているのはフォレストウルフと呼ばれる森林地帯に住む魔物である。
それを使役することに成功したゴブリンがゴブリンライダーへと進化出来る。
ゴブリンライダーはゴブリンよりも細身になりその分スピードが上がる。
そしてその体型はフォレストウルフに乗るのに最適な体になり風の抵抗を受けない角度を自然と身につける。
ゴブリンライダーは此方を襲わずに大きく迂回して前へと回り込み街へ行く妨害をしてくる。
ゴブリンライダーの数は30に対してまともに戦える村人は精々50人ぐらいだろうが、まともな武器は持ってはいない。
持っているとすれば農具や狩猟で使う弓やナイフぐらいだろう。
後は木こりの斧や鉈が数本程度だ。
まともな武器は唯一バンが冒険者時代の名残りで剣を一振り持っているがそれだけだ。
悩んでいると後ろから不快な鳴き声がして振り返ると後ろからはゴブリンの大群が迫っていた。
こうなれば一か八かゴブリンライダーに突っ込んで行き活路を見出すしか他はない。
バンが先頭に立ち突っ込んで行く。
それに続いて村の大人の男達が手に各々武器になりそうな物を持ち続く。
ルシオスは小振りのナイフを手に取り家族を守る様に立つ。
そしていよいよゴブリンライダーへと突貫して行った村人達がぶつかると思う直前ゴブリンライダーの後ろから矢が飛んで来てゴブリンライダーの体に突き刺さる。
ゴブリンライダーは困惑してあたふたとし出す。
それを見てバンは「オメェらここに居たら邪魔になる!みんなの所に戻るぞ!」と声を張り上げたので他の村人達は訳がわからなかったがとりあえず従った。
すると全員がゴブリンライダーから離れた所で騎兵がゴブリンライダーに突撃した。
どうやら街から騎士団が駆けつけてくれた様だ。
そしてゴブリンライダーを次々と葬り去りこちらに一騎が向かって来た。
「諸君大丈夫かね?」
話しかけて来たのは壮年の男性だ。
鍛え込まれた見事な体躯をしているのが鎧越しにもわかる。
「私の名はサカエル・フォン・ニカライウスだ。この騎士団の団長を務めている。ゴブリン共の相手は我らに任せて諸君は急ぎ街へと向かってくれ。護衛はつけられないが此処まで来る途中に魔物の姿は見えなかったので恐らくは大丈夫だろう」
村人を見渡してサカエルはそう告げる。
自信に満ちた声に村人達は安堵する。
そして村人達は言われた通り街へと向かって行く。
その時サカエルがルシオスを見て近づき「少年よ。家族を守ろうとしたその心意気見事なり。大きくなれば是非我が騎士団に参られよ。君の様な勇敢な若者が来ることを願っている」そう言いルシオスの頭に手を置き撫でる。
そして手の小振りなナイフを手に取り「ふむ、よく手入れされている良いナイフだ。良かったら交換しないかね」と良い懐から短剣を取り出してルシオスに渡す。
それは子供のルシオスでもわかるぐらいに意匠の細かい見事な短剣だ。
ルシオスは驚き「えっ!?良いのですか?騎士団長様。こんな立派な短剣とただのナイフとなんてとても恐れ多い事ですよ!?」とルシオスは驚愕した声を出す。
この短剣は少なく見積もっても金貨8枚ぐらいはするだろう。
金貨8枚と言えば平民が十数年は遊んで暮らせる金額だ。
そんな高価な物を渡されても困るぐらいだ。
その困惑を見て取ったのかサカエルはこう付け加えた。
「ならば少年よ名は?」
「ルシオスです」
1つ頷き「ふむ、ルシオスか…良い名だ。ではルシオスよ。この短剣に見合う男になれさすれば私の目に狂いがなかった事になる」
ガッハッハと豪快に笑うサカエル。
そこへ部下の騎士がやって来て「閣下。陣形を組み終わりました。ゴブリン共の中にゴブリンキングの存在を確認したとの報告がありました」
サカエルの顔は一転して厳しい表情になる。
「やはり………か。あの規模となるとやはりゴブリンキングが誕生していたか」
副官の男はええ、と相槌をうち。
「他にもゴブリンジェネラルとゴブリンナイトなどの上位種も確認できました。この分ですともしかしたら奴らの巣にゴブリンクイーンが誕生しているかもしれません」
ゴブリンクイーンはゴブリンの上位種を一定の確率で産む極めて厄介な存在だ。
ゴブリンクイーンはお腹が大きく自身ではあまり動けない為に子供を産み、その子供達が運んで来る食料を食べてゴブリンを産む。
運んで来る食料の質により生まれるゴブリンのランクが変わったりする。
なので必ずゴブリンクイーンを倒さなければならない。
「そうすると、このゴブリン達を倒した後に巣を探さなければならないか。場所はおおよそこの村人達の隣村の近くだろう」
サカエルの憶測に副官の男は同意する。
「ええ、その通りかと思います」
その光景をルシオスがジッと見つめているのに気がついたサカエルが「…おっとすまぬな。ルシオスよつまり立派な男になれという事だ」
「はい!わかりました!僕頑張ります!」
ニカッとサカエルは笑い「その意気だ!では、そろそろ親御さんの所へ戻りなさい。心配しているだろう。私達はまだ仕事が残っているんでな」
そう言い馬に颯爽と跨り騎士団に号令を下してゴブリンの大群に突貫して行く。
その光景を眺めながらルシオスはいつかは自分もあのサカエル騎士団長の様な立派な騎士になって見せると短剣を力強く握りながら決意した。
その後無事に街に着きバラバラに宿へと案内されてそこで軽く食事をしてから眠りについた。
翌朝宿に領主の文官が来て大人達が事情聴取を受けて行く。
その領主の文官に街まで迫ったゴブリンの集団はどうなったのか聞くと「ゴブリン共は我らが領主様の騎士団が多大な犠牲の中殲滅する事に成功しました。ですので安心して良いですよ」と言われた。
あの時ゴブリンの数は大分膨れ上がり5千に届こうかという程だった。
それに対して騎士団はおよそ800名だ。
だが見事犠牲を出しながらもゴブリンキングをサカエルが見事に倒し瓦解した所を殲滅していったが極少数のゴブリンには逃げられた。その一団は実はわざと逃して巣まで案内させるつもりだ。だが率いるのがゴブリンナイトの為に油断は出来ないがミスをしなければ大丈夫だろうとの事だ。
数日後見事に巣を発見したらしく騎士団を再編してサカエル率いる騎士団と場所が洞窟なのでそのサポートに冒険者が雇われて出陣して行った。
3日後見事にゴブリンクイーンと残りのゴブリンを殲滅して戻って来た。
少なくない犠牲は出たらしいが見た所サカエル騎士団長は無事に帰還していた。
ルシオスは両親の元へ行き「僕は将来立派な騎士になる!」と宣言した。
ルシオス達の村人はこの街で暮らすことが出来るようにサカエルが便宜してくれたらしく村人達はサカエル騎士団長に感謝した。
ルシオスは冒険者になり街での雑用依頼を受けて領都の騎士育成学校に通うための資金を集める為に頑張って依頼をこなしていった。
立派な騎士になる為に!
これにて"ある者の騎士物語【序】"は終わりです。
次は"ある者の騎士物語【前編】を予定しています。




