引っ越しマニア
引っ越ししてから数日が経った
前のアパートより2部屋も多い家は独身には広い気はしたが、住めばあまり気にならなくなった
もともとそこまで物を買い込むほうではなかったため寝室とリビング以外はなにもない状態だ
だがそれが逆に心地良い
こまめに片付けているはずがいつのまにか物であふれている、というのはよくあることだ
どうやら自分で思っているより掃除は苦手らしく、だからこそ引っ越ししたてのなにもない今が嬉しくも思える
スッキリとした部屋で仕事を片付ければスッキリと終わる
時計を見れば、家を出ようと思っていた時間より一時間も早い
使い終わった資料をシュレッダーにかけ、そういえば休み明けはゴミ出しの日だと思いいたった
ちょうどゴミもたまっていることだし、ゴミ袋を取り換え口をきつく縛った
新しいゴミ袋が入ったゴミ箱というのは少し気持ちが良いものだ
どうせだから掃除もやってしまおう
サラッと始めた掃除はこれまたサラッと終わり、ゴミを捨てようと思った時、新しいゴミ袋が出迎えた
なんだかせっかく新しいゴミ袋なのだからこれの中に捨てるのはもったいない
きつく縛ったゴミの入ったゴミ袋の口を開け、そこに捨てれば満足感が心をみたした
充実感のある休日だ
今日の夕飯はいつもより高くて良いかもしれない
鼻歌混じりに、予定より少し遅い時間に家を出た
それからまた数日経った
何も入ってないゴミ箱の横にある、ゴミのたくさん入ったゴミ袋の中をギュッと押し込んだ
周りにはどうしても入りきらなかったゴミが少しこぼれてしまっていた
そういえば、メガネ屋とスーツ店から届いていた手紙も捨てなくてはいけない
手紙が届くのは良いが、いかんせん住所を書かれると資源ゴミで出せなくなるから困ったものだ
手紙を取りに帰ってくるとゴミ袋は横に倒れていた
次の休みは掃除だな
ゴミ袋を立て直しながらぼんやりそう考えた
掃除は嫌いじゃない
上手くできはしなくても好きな方だ
平日にも軽く、休みの日はたまに本腰を入れて掃除はこまめにしている
やっと来た休みの日にはもう廊下まで物が侵食していた
基本的に仕事と、ご飯も外で食べるために家にいることの方が少ないというのにどうしてこうも物であふれかえるのか
首を傾げるばかりだ
半年が過ぎた
あんなに広く感じた部屋はどこも物であふれ、足の踏み場もない
唯一空間があるのはベットの上とゴミ箱の中ぐらいなものだ
あぁ、もっと広い部屋に引っ越さなくては




