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モンスターといこう  作者: hachikun
女戦士とモフモフの章
69/106

狩人ギルド(1)

移動中のイベントは地味なので端折りました。すみません。


 どこにでもいる、引き篭もり気味の少女に訪れた、驚天動地の転機。

 ごく普通のネットゲームのつもりだった。家庭内の事情とか色々で、グレる代わりにネットに溺れただけだ。いつまで篭っていられたかはわからないが、そんな、どこにでもあるような、どこにでもいるような、少々コミュ障ぎみの女の子の『青春』。そんなもののはずだった。

 それが、どこから狂ってしまったんだろう?

 気がつけば、もふもふな仔モンスターの道連れがいて。

 気がつけば、別人の容姿と名前、そして使命を与えられて。

 ただのネトゲのはずだった場所は、実は見知らぬ異世界かもしれないような場所で。

 ゲームの中限定とはいえ、わずかに居た友達とも別れ、ひとりと一匹ではるばる旅をしている。

 

 

 

「こんにちはお嬢さん、お泊りですか?」

「はい。とりあえず二泊、場合によってはもう一泊なんですけど。この子と一緒でもいいですか?」

「おっと、こりゃサーベルタイガーの仔だね?すまないけど、他のお客さんがびっくりしちまうからね」

「あー、ダメですか。宿泊料金で(うまや)でもいいですけど?」

「それはウチの方が逆に申し訳ないよ。そもそも、獣戦士や竜戦士の方に対応してない、うちの設備が問題なんだからね」

 むむう、と宿屋の主人は眉をしかめた。

 ここは名もない町。『はじまりの町』に近いが最近できたところで、やっとの事で、ただの無名の村落から町らしくなってきたようなところだった。

 新しい町だから活気に満ちてはいるのだが、いかんせん未開拓なのはどうしようもない。いろんな設備が常に不足していた。

 この宿もそうだ。

 最近できたらしくて建物は新しいのだが、どうにも無骨で色々足りないのはどうしようもない。特にモフ子の相棒であるリトルは子供とはいえ猛獣なので、馬や家畜レベルの犬猫と一緒にするわけにはいかなかった。

 まぁ、主人の言葉も確かに事実なのだが。本当に獣戦士や竜戦士に対応するとしたら、猛獣どころか竜種、つまりドラゴンを連れた客にも対応しなきゃならないのだから。

「やっぱりテント村かなぁ。今夜は屋根の下に寝て、お風呂探ししたかったんだけど」

「おや、あんたひょっとして西の国から来たのかい?」

「へ?違うけど。なんで西の国?」

「知らないか?なんでも、西の国じゃ異世界人めあての商売で、風呂屋ってのを作ったそうだが。それが若い娘なんかにも大人気なんだと」

「へぇ……お風呂屋さんをツンダークに?」

 思わず顔がほころんだ。

「ん?その言い方……あんた異世界人だったのかい?俺ぁてっきり」

「あはは、よく言われるよ」

 褐色の肌、それに紫がかった黒の瞳は中央大陸生まれのツンダーク人に多い。プレイヤーに人気のない片手斧で武装している事もあり、モフ子をツンダーク人だと勘違いする人は実に多かった。

 さて、そんな主人は「異世界人だったのか」と興味深そうにモフ子を上から下まで見た。

 実は、たまにだが自称異世界人の家出娘というのがいるのだそうだ。宿屋の主人は特にそういうのに遭遇しがちなので、最初はモフ子の事も疑っていた。ニコニコ笑顔のツンダーク顔、そして旅で薄汚れた姿の少女はどう見ても家出娘であり、なぜか常にピカピカ衣装の『世界のお客様』たる異世界人たちとは明らかに違って見えたからだ。

 だが異世界人であれば、主人には一つ教えてあげられる情報があった。

「お嬢さん。この町にはまだ風呂屋はないが、何かのツテがあれば風呂に入れるかもしれんぞ」

「本当ですか!?」

 主人は、モフ子のものすごい食い付きに思わず笑顔をほころばせつつ、ああそうとも、と話を続けた。

「この町にある狩人ギルドと錬金術師ギルドなんだが、できたばかりで同じ場所で兼営しているんだ。

 で、そのギルドの建物に風呂がある。本来は職員、それからギルドに入っている者なら有料で利用できるはずなんだが……」

「ほ、本当!?狩人ギルドに入ればいいの?ほんとに!?」

「ああ。そう聞いてる」

 おおぉぉぉぉ!と、モフ子の笑顔がキラキラと光り始めた。

「ミンスターからこっち、ずっと野宿野宿で、水浴びしかしてないんですよぅ。お風呂できるなんて……ありがとうございますぅぅぅっ!!」

「いやいや、お礼は本当に入れるとわかってからだぜ。何しろ職員とギルドのメンバー限定だから……」

「大丈夫!だって、今回あたしが来た目的って、狩人ギルドへの登録ですから!」

「へぇ……そうなのかい?しかしお前さん……ああ、わけありか」

 ふむふむと途中から納得したように主人はうなずいた。

「だったらまずギルドに顔だすといいぞ。加入するならそっちのサービスでいい情報があるかもしれないしな」

「本当ですか?ありがとうございます!いこ、リトル!」

 モフ子は親切な主人にお礼をいうと、そう言って去っていった。

 その後につづいて、子供ではあるが明らかにサーベルタイガーと思われる動物が、音もなく歩いて行った。

 プレイヤーが見れば、それはメインクーン種の家猫かリビアヤマネコ程度の大きさだった。だが、それらの猫とは身体や四肢の太さが明らかに違っていた。また特徴的な二本の大きな牙、そして山猫より小さい耳と幼さの中にも猛獣の精悍さを秘め始めた顔が、彼がそこいらのペットの猫ではなく、あの荒野の狩人、サーベルタイガー種の仔である事を明らかに主張していた。

 なおサーベルタイガー種は猛獣ではあるが、ペット兼護衛としても飼われている。特にオスのサーベルタイガーを連れたお嬢様というのは定番の組み合わせだ。人間の男なんか絶対にそばに寄せ付けないという事もそうだが、他にも理由がある。

「……しかし、やけに似合いのコンビだな。褐色の乙女伝説そのまんまじゃねえかよ」

 モフ子たちを見送った主人が、そんなセリフを漏らした。

 褐色の乙女伝説というのは、ツンダークの古い物語だ。褐色の肌と紫の瞳もつ短髪の娘、そしてサーベルタイガーの組み合わせは、ツンダーク人なら誰もが知っている古い古い物語を思い出させる。実は、モフ子たちがどこにいってもツンダーク人と間違われる理由にはそれもあったのだ。

 モフ子も、そして現時点でモフ子に関わった多くの人たちも、それが何を意味するかを未だ知らない。

 一人と一匹の運命の出会いから、一ヶ月が過ぎようとしていた。

 

 

 

 狩人ギルドの所在を聞いて移動していたモフ子であったが、途中の広場で変なものを見つけた。

「町に名前をつけよう?町名募集?なにこれ?」

 その言葉に、看板の調整をしていた青年が振り返った。

「おや、サーベルタイガーなんて連れちゃってどこのお嬢様だい?ってそれはいいか。これはね、この町に名前をつけようっていうわけで、その名前を一般公募しているのさ!」

「へぇ」

 そういえば、確かにここはまだ名がないと聞いていた。

 名前の公募なんて地球みたいな事するんだなぁと思い、モフ子は思わずクスッと笑った。

「ここの人じゃなくても応募していいの?」

「応募するだけならね。その代わり採用になっても謝礼は出ないよ?ま、出るったってお小遣い程度だけどね」

「へぇ。ねえ、ギルドに登録してもダメかな?」

「ギルド?商業ギルドって感じじゃないね。冒険者?それとも狩人かい?」

「狩人ギルドだよ。今から登録にいく途中なんだけどね」

「そういう事か」

 ふむ、と青年は少し考え、それから言った。

「登録しましたよって後から言ってくれても有効にするよ。でも、あくまで当日登録の場合だけだけどね」

「わかった。じゃあさっそくだけど『モニョリ』ってどうかな?」

「モニョリ?変わった名前だね。意味はなんだい?」

「えっとね、異世界語の『もにょる』が元なんだって。意味は『微妙』とか『なんとなくパッとしない』『イマイチ』とかだね」

「……その意味を普通、町につけるか?」

「あはは。ごめん」

「ふむ、まぁいいや。異世界語が元っていうのが気に入った。いいぜ、それも提案してみようか」

「え、いいの?」

 青年はモフ子の言葉に少し黙ると、にやっと笑った。

「ここだけの話だがな。昔、『バカの町』って町があった。当時は商業ギルドの中心地だったんだがな」

「……」

「別にダジャレでもなんでもないぞ。名前で騙されてバカが釣れると面白いですなって大笑いして、そのまま採用しちまったそうだ。提案する方もする方だが、採用する方もなんか面白いだろ?」

「……それ本当?マジでそんな名前にしたとこがあるの?」

「嘘じゃないよ。西の国の首都『パラマンタ』なんだけどさ、なんか文法おかしいよね?陽炎の町(マンタ・ラ・パラ)を町の名前にしたっていうんなら、普通それって簡略型にしても『マンタパラ』とか『マンパラ』だと思わないか?」

「……そうだっけ」

「おや、お嬢様は西の国じゃなかったのかい?まぁいいや。

 ちなみにこれは実話だぜ。西の国の首都は元々商業ギルドの町『パミラマンタ』だったんだ。だけど大きくなっちまって、さすがにバカの町じゃまずいだろって改名したんだよな。まぁ、その件で商業ギルドの本拠地は出て行っちまったけどな」

「へぇぇ」

 この西の国トピック、実にバカバカしい話だが実話である。パミラとは人名なのだが、昔話『軽いパミラ』の主人公で、そのまんま頭の軽い者、つまりおバカの形容になっている。ついでにいうと『パミラマンタ』という名称自体が作中に出てくるバカと脳天気の町をも意味する。

「よし、話戻すぞ。えーと……モニョリ、でいいんだな?」

「うん」

 青年は手元にあったメモに、羽根ペンでモニョリと書き込んだ。

「意味は異世界語だよな?微妙、いまいち、パッとしない、でいいよな?」

「そう、それで正解」

「よし。最後にお嬢様、キミの名前は?」

「モフ子」

「ありゃあ偽名か。ちなみにどこ出身だい?」

 青年はちょっぴり残念そうに、だがにっこり笑った。

「あはは、ないしょ。でも、この名前で狩人ギルドに登録するから完全な偽名じゃないよ?」

「なるほど。だったら連絡先には問題ないな。よし、じゃあ登録の方はよろしくね」

「はーい」

 そして挨拶をすると、モフ子とリトルは今度こそ狩人ギルドに急いだ。

 

 

 

 狩人ギルド、兼錬金術師ギルドは、ちょうど広場の反対側にあった。

 後にモフ子も知る事になるが、ギルドには必ず共通の看板がある。つまり、狩人ギルドは弓の、そして錬金術師ギルドは草花をあしらった看板をつけるのが決まりである。で、ここは弓と草花が同居していて、誰が見てもふたつのギルドが混在している事が伺われた。

 古めかしい木製の扉をそっとあけると、きぃぃ、というかすかな音と共にゆっくりと開いた。

 中は静かだった。

 内部は木の香りがしていた。使われている建材は主に木材で、古いものに見えた。だが建造して間もないのだろう。どこかから真新しい木の香りがしていて、それはフロアーの中に充満していた。

「ごめんくださいー……」

 一度声をかけて、それから中に一歩踏み込む。

「いらっしゃいませ。何か御用ですか?」

 女性の声が響いてきたからどこかと思えば、奥にカウンターがある。そこにも弓と草花のふたつの看板がとりつけてあり、どちらでも兼用の窓口であると主張していた。

 モフ子は意を決して中に入った。リトルもその後を音もなく、のんびりついてくる。

 カウンターの女性は白い肌の美女だった。こんな場末な、もとい、落ち着いた感じの雰囲気にはちょっぴり不似合いなほどにきれいな女性であったが、近づくと、ツンダークで矢の手入れによく使われるパブラ油の香りがした。移り香にしては強いもので、おそらくは手に染み付いているものと思われる。

 こんな美女の狩人、かっこいいだろうなとモフ子は思った。

「何か御用ですか?」

「はい。狩人ギルドに登録したいんですけど」

「狩人ギルドへのご登録をご希望ですか?失礼ですが、どなたがご希望でしょうか?」

「はい、あたしです。あ、これまだ小さいけど、あたしの相棒です」

「……」

 女性はモフ子を見て、そしてリトルを見て、ちょっと困ったような顔をした。

「いい斧を持っているようだけど、ごめんなさい。使った事がおありかしら?ここは狩人ギルドよ、冒険者ギルドと間違えてないかしら?」

 初心者の小娘と間違えられたらしい。冒険者気取りの仔猫連れのガキと思われたか。

 確かに、モフ子は自分が熟練者とは思っていない。だがお子様扱いはさすがに心外だった。

 だから、はっきりきっぱり告げた。

「さて、狩人ギルドの加入資格を知らないから問題ないとは断言できないわね。

 でも、パブラ油の臭いを消すのって狩人なら常識よね?町中なら必要ないと思ったのかもしれないけど、その程度の配慮も考えないような輩に素人呼ばれる筋合いは、さすがにないと思うけど?」

「あら、油の臭いくらいは勉強しているのね。でもね、お嬢さん。実績のない者を狩人ギルドに加入させるわけにはいかないの。そんな、親から貰ったピカピカの斧をこれ見よがしに振り回すような輩は狩人ギルドには不似合いなのよね。さっさとご両親の元に帰るか、さもなきゃ大人しく冒険者ギルドの門を叩きなさい?あちらは誰が来ようと拒否なんかしないから」

「……はぁ」

 モフ子は論争が嫌いだった。特に物分りの悪い女のそれは不毛すぎるので本気で大嫌いだった。

 まぁ、この性格と短気さが女子同士のコミュニケーションを阻害させ、ひいては引きこもり同然の暮らしにつながった原因ではあるのだが。とはいえ、そういう性格なのだから仕方ない。

「上に高レベルの人がいるわね。三人か。一番高い人がギルドマスターかしらね。貴女じゃ話にならないから直接いかせてもらうわ。じゃあ入るわね。何か壊れても全部あんたのせいだから、よろしくね」

「はあ?貴女何いってるの?」

 その言葉を無視してカウンター横のドアを開けようとする。だが当然びくともしない。

 だ、その背後から女の嘲るような言葉が追いかけてくる。

「毎年そういうバカがいるから、当然ながら人間の力程度じゃドアはびくともしないわよ。わかったらさっさと引き上げ──」

 引き上げなさい、と言いかけた女の言葉は、最後まで続かなかった。なぜなら、

「『筋力増強最大レベル』」

 いきなりモフ子は筋力増強を仕掛けたかと思うと、腰の片手斧を引き抜いた。そして、

「『壁抜き』!」

 そう言ったかと思うと、建物全体が振動するような、爆発のような打撃が起きた。

「!?」

 女が気づいた時にはドアは跡形もなくなっていた。

「なにこれ、手応えないっつーかずいぶん脆いドアねえ。まぁ、最終ダンジョンのドアと比べちゃいけないんだろけど、なんつー安造作なのよ」

「最終……!あなたまさか異世界人!?」

「すみません、おじゃましますー」

 モフ子は女の存在を完全に無視すると、のしのしとあがりこんでいった。

「ちょっと、貴女待ちなさ……!」

 止めようとした女の前にのこのことリトルが現れた。

 リトルは確かにサーベルタイガーだが、まだ子供だ。さすがにこの一ヶ月で成長はしているものの、それは「確かにこいつは猫ではない」という大きさと体格になったにすぎない。それに一人前のハンターならば、サーベルタイガーのあしらい方くらいは知っているものだ。

 だが、リトルは普通のサーベルタイガーではない。いきなり女に向かって強烈な、しかし音のない叫びを浴びせたのだ。

『!!!』

「!?」

 見えない何かに女は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて崩れ落ちた。

「リトルやりすぎ。ま、いっか。あの程度で死にゃしないでしょ、プロだし」

 ほれ、おいでと手招きするモフ子にニャアと鳴くと、満足そうにリトルはとことこ歩いて行った。

 どうやらこの一ヶ月で、モフ子の脳筋&好戦的な性格がすっかり伝染(うつ)ってしまったようだった。

 さて、モフ子たちが階段をあがると、そこには用心棒らしい男が二人いた。薄汚れた、しかし、いかにも実践的でデキそうな男たちだ。むさ苦しいが。ひとりは金髪でヘアバンドをしており、もうひとりはスキンヘッドでちょっと小太りしている。

 モフ子はとりあえずにっこり笑うと、ぺこりとお辞儀をした。

「すみません、狩人ギルドに登録したくて来たんですけど」

「はぁ?」

 どんな曲者が来たかと思っていたのだろう。丁寧なモフ子の態度に、ふたりの男は眉をしかめた。

「登録なら下の窓口だろ。何があった?」

「いやぁ、それがですね。受付のお姉さん、あたしを見ただけでイヤミたらたらに門前払いしようとするんですよね。あたし、少しがんばってお話しようとしたんですけど、こりゃあ時間の無駄だと思ったんで、そのまま横のドア開けて入ってきちゃいました。お話のわかる方、おられますか?」

「いや……受付ってサンディだよな?あいつ、あのカワイイ面でとんでもなく強ぇはずなんだが」

「そうですか?でも、受付のお仕事してるのに、町ではちょっと強すぎるパブラ油の臭いさせてましたよ?あたしに山で猟のイロハを教えてくれたおじさん、狩人は町の人の嫌がる臭いをさせる事が多いから、そういう事は気をつけろって言ってたんだけど、違うの?」

「それは違わねえな。そのとおりだ」

 金髪の男の方がフムフムと頷いた。

「だけどよ嬢ちゃん、そいつがフェイクだとは思わなかったのかい?」

「フェイク?来るかどうかもわからない新入り志望の小娘追い出すために、わざと油の臭いをさせとくって事?いやぁ、それこそお笑いなんだけど?」

「ほほう」

 スキンヘッドの男の方も少し考えた。

「だけどよ、おまえさん登録が目的なんだろ?荒事起こして中に踏み込んで、それを理由に登録拒否されたらどうするつもりなんだ?」

「どうするつもりも何も。あたしに非があるなら謝るし、真正面から正式に加入申し込みをしてきた者よりもお馬鹿なクソ担当の方が大事ってギルドだったら、そもそも登録する必要ないでしょ?試金石になってちょうどいいんじゃない?」

「……おまえなぁ」

「すんげえ脳筋……」

 男ふたりが呆れ返って頭を抱えたところで、

「あっははははっ!面白いじゃないか!」

「お、親方?」

 奥の部屋から声が聞こえてきた。年かさの男性の声だった。

 何か足音がしたかと思うと奥のドアが開き、少し頭髪の薄いおっさんの顔がのぞいた。

「なになに、サンディをぶっ飛ばしたって?そりゃあ元気なもんだ。いいよ入りな、話をきこうじゃないか」

「し、しかし親方?」

「あー君ら、この騒ぎについては秘密ね?サンディにも後で注意するけど、君らも釘さしといて。見た目で門前払いする前に、ちゃんとステータスチェックしとけってね?」

「へ?ステータスですかい?」

「このお嬢ちゃんの歳で獣戦士だぜ?ワケありに決まってるだろ?まったく、ちゃんとみりゃあわかるだろうにね」

「け、獣戦士!?了解!」

「うん、よろしくね」

 男はにこにこと笑い、

「さ、中においでお嬢さん。そこのサーベルタイガー君もね」

 そう言って手招きをするのだった。


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