生活を切り替えよう
「にゃー」
「にゃー?」
「にゃー」
「にゃー?」
間の抜けた声の応酬がテントの中に響いている。声の主はもちろん仔猫のリトル、そして飼い主のモフ子である。
「にゃああああぁぁぁぁあああああぁぁっ!!!」
「なんのっ!」
声だけ聞いていると、あまりの間抜けさに笑いしか浮かばないのだが、映像を見れば少しは違うかもしれない。モフ子がマットの上で両手両足をがばっと広げてヒラヒラと動かしており、動くものに惹かれて襲いかかろうとするリトルを右に左に、翻弄しまくって遊んでいるのである。
「うん、いい動きだねこりゃ……って、っ!」
たまにわずかに攻撃がヒットする。で、また繰り返す。
一応この平和な遊び、モフ子的には意味があった。ぶっちゃけた話、リトルの運動能力や反射神経を確認していたのである。
そして、そこから得た結論は。
「まだ乳飲み子なのに、普通に猫くらいの戦闘力あるよねこの子。訓練できるかな?」
戦えるのだから赤ん坊でも戦わせる。さすがの脳筋思考であった。
だが実際、この方針は決して間違いではなかった。野生のサーベルタイガー種も子供の目が開いたら適当な獲物を生け捕りしてきて遊ばせる。そうやって狩りを教えていくものなのだ。
とはいえ。
「にゃあ……にゃにゃ」
「あははは、わかったわかった、ごはんよね。ちょっとまってねー」
テント内なのをいい事に下着姿なもので、ぽよん、ふにょんと柔らかい謎のものが動いている。当然そこにもリトルの目が引き寄せられるのだけど、それに取り付こうとする不埒なお子様を軽くいなしつつ、キャンプ用の深皿で作った大ミルク皿にミルクを流し込み、すっかり手慣れた生活魔法で一気に温めた。
「おっととと。あっちょっ!」
胸の柔らかいところにちょっぴりこぼれてしまったのだが、すかさずリトルが飛びついた。敏感なところを猫の舌で舐め回され、さすがのモフ子も悲鳴をあげた。
「ひゃっ!って、こらっ!」
まるで緊張感がないのであった。
「しっかし、成長早いよねえ」
昨日拾った時は目も開かず、ふにゃふにゃに見えた。それが今や小さいながらに足を踏みしめ、小さいモンスター程度なら余裕で仕留めそうだ。
たった一日足らずで、この成長っぷり。
「これがつまり、このミルクの効果って事かな?」
飲ませる前には必ず味見をし、温度を確認している。逆にいうと、毎回ひと口は必ずモフ子も飲んでいるわけなのだが、
「……気のせいだよね、うん」
自分の身体にも違和感を覚えているモフ子だが、それは気のせいではなかった。
だが、もし自分の身体に何が起きているのかを知ったらギョッとしたろうから、今は知らない方がよかったといえるだろう。
何しろ、仔猫の事にかまけてまだ、自分の顔すら見てなかったのだから。
リトルの目が開いたところで少しは安全になったとはいえ、このまますんなり町に戻るほどモフ子は脳天気ではなかった。
かつてのモフ子がペット襲撃犯で唯一、罰を逃れている事を知る者がどれだけいるか。そのモフ子が仔猫なんて連れていればそれは当然、バカを呼び寄せる。その事をモフ子は軽く見てはいなかった。
もっとも、そこまでわかっているのなら現状を正しく把握すべきであるのだが、それは仕方あるまい。モフ子はそもそも賢い娘とはいえなかったし、しかも現状、彼女の意識はほとんどリトルの世話に向けられていた。安全面だって自分の事でなくリトル中心であり、それ以外はほとんど考えちゃいなかった。
(そういや、この子に出会ってからこっち、ログアウトしてなかったっけ?)
リアル時間の方を確認すると、今は午前中。一度ログアウトして食事しておくか。
寝床は作ってあるし、ちゃんと『休息場所(オーナーのみセーブ可能)』扱いになっている。ここでログアウトしても大丈夫だろう。
「はぁ。えーと、あのね。ちょっとお出かけしてくるからね。
ラーマ様、この子のことお願いしますね?」
この世界の祈り方なんか知らなかったから、とりあえず両手を握ってお祈りして、そしてログアウトした。
◇ ◇ ◇
ログアウトしてみると、なにやら部屋の外が騒々しかった。
(何かあったのかな?)
あまり楽しい話ではないのだが、彼女の家は崩壊寸前だ。両親とも健在で上には既に社会人の兄がいて自分が下なのだが、父は名ばかりで外に家族を持っているらしいし、母がやたらと化粧映えしだしたのは何年前の事か。はっきりいって、高校生の年頃にもなって不登校、そしてVRMMO三昧の自分でもいなきゃ、とっくにこの家族はバラバラになっていたのだろう。
……まぁ、そのVRMMOキットにしても、ちゃんと家庭も顧みてますよー、という父の外面むけポーズに当て込んで買わせたという代物だったりするのだが。
それはともかく、何かいつもと騒ぎの質が違う気がする。
彼女はとりあえず下着を交換し、きちんと部屋着だけでも整えると、部屋を出て応接間に向かった。
「おはようございます、恭子さん」
「あ、おはようございま……あ、あれ?」
応接間には、そこにいるはずのない人物がいた。
「えっと、ら、ラーマ……」
「はいラーマです、水澄恭子さん。正式にはラーマ・メルルケ・アル・ツンダークと申します。こうして直接名乗り合うのは初めてでしたね?」
「あ、はい」
スッと立ち上がり、自然に出された手。思わず反射的に握り返した。
手は冷たくも熱くもなく、とても自然なものに思えた。
そう。
家族と応接間で向かい合った老齢の上品な女性は、確かにあのラーマ神なる老婆にそっくりだった。もちろん服装は日本の街角でも違和感のない地味なレディース・スーツではあったが。
びっくりしすぎて、何がなんだかわからない。
「うふふ、そんなにびっくりなさらなくても。お約束しましたよね?何とかするって」
「はい。それはそうなんですけど……早いですね、昨日の今日なのに」
確かに約束してくれた。ログアウト問題を何とかすると。
でも、なぜ現実の自宅にいるのか?
しかも、まだその話から一晩しかたってないのに?
ラーマと名乗った老婆は『恭子』の家族に向き直り、そして話を再開した。
「申し上げました通り、わたくしたちの財団では、VRMMO仮想環境を使ったAIの育成研究を続けています。この分野では何よりも経験と適性が最優先されますから、仮想環境を使ったネットゲームを公開し、その上でゲームとして楽しんでいただき、その中から最も適性が高いと思われる皆さんにお手伝いをお願いしているのです。
恭子さんはそうした皆さんの中でも最高レベルの適性をもっておられまして、わが財団の技術スタッフでも話題になっております。是非彼女をスタッフのひとりとしてお迎えしたい、そうした思いの元にわたくしが派遣されたという次第でございます」
そういうと老婆は、上品に微笑んだ。
「もちろん、これは長期のお願いになります。数年どころか数十年かかる可能性もあるかと思います。ですので、適切なお給料はお支払いいたしますし非常時の補償等もいたします。また日本でVRMMOの研究をなさっている大学の方と連携をとっておりまして、あるレベルの功績をあげてくださった方につきましては、年齢に応じた学校の卒業資格、そして最終的には大卒、さらに貢献内容によりましては doctor ……失礼、日本では博士号ですわね……博士号の取得のお手伝いもさせていただきます。
そのうえでお願いいたします。娘さんを、恭子さんを、わたくしどもの元に是非」
「……」
最初、恭子には老婆の言葉の意味がわからなかった。少し悩み、そして言葉の意味を吟味したところで、ようやく老婆の言っている事がスッと頭に入ってきた。
(ログアウト問題の解決って……もしかして、運営で身柄を預かってくれるってことなの?)
それも年単位の長さで。しかも不登校状態の自分の現状まで見て、学籍問題までしっかりサポートしてくれると?
(何それ?どういうことなの?)
正直、ポカーンとしてしまった。だが無理もない話だった。
ネトゲの中で、何か運営に関わるような役職になる。それ自体はレアケースだが皆無というわけではない。実際、RPG型のMMOでは珍しいが、ソーシャルタイプのMMOではそういう『現地担当』が配置される事があると聞いた事がある。大抵はヘビーユーザーで、なおかつ素行のよい人物だというが。
だが、いきなり職員が会いに来るというのは、さすがに前代未聞ではないだろうか?
頭がついてこない。恭子は思わず、ふるふると頭をふった。
だが。
「……」
恭子の目が老婆でなく、対面している家族の方を見た時。彼女の顔から表情が消えた。
(……こんな状況でも、この人たちはこうなんだ)
そこにいたのは父と母だった。そのはずだった。
だが、両者が並んで座っておらず距離が離れている事、そして、お互いの顔色を伺いつつ利益を計算しているのが表情から見え見えであるところで、内心、極めつけの異常事態に困難しまくっていた頭が、急速に冷めていくのを感じていた。
(……この人たちは、本当にあたしの親なんだろうか?)
得体のしれない海外の研究機関が、いきなりやってきた。あなたたちの娘を預からせろという。
普通の親ならまず驚くか、あるいは拒絶反応ではないだろうか?あるいは、我が子に事実を問いただすなり、少しでも情報を集めようとするのではないだろうか?
なのに。
こんな異常事態であるにもかかわらず、中心人物である自分の顔をどちらも見ていない。お互いの顔ばかり。
(あー……うん。わかってた、わかってたんだけどね)
ここにはもう、家族なんていなかったんだと。
ただ自分という不登校の娘がいるために、体面のために形を保っているにすぎなかったんだと。
そこに、その自分がこの家から居なくなる話が降って湧いたわけだ。おそらく、腹の中は自分に都合のいい皮算用でいっぱいなんだろう。
わかっていた。
わかっていたんだけど。
……どうして、こんな胸が痛いのだろう?
「恭子さん?」
「!」
気遣うような老婆の声に、一瞬で恭子は我にかえった。
「ちょっといいかしら?」
言われるままに立ち上がり、廊下に出た。
「あのね、恭子さん」
ぼそぼそ、と、小さな声で老婆が語りかけてきた。
「いきなりで本当にごめんなさいね。本当はもう少し時間をかけるつもりだったのだけど」
「何かあったんですか?」
「あー、それは、ご両親の口から直接聞いた方がいいと思うの」
「いいんです。アレに聞いてたら、いつになるかわからないから」
「……そう」
老婆は悲しそうに眉をしかめると、言葉を継いだ。
「ご両親が協議離婚の手続きを始めようとしている、ご存知?」
「はい」
「実はね、昨日それらの準備ができたらしくて、いよいよ恭子さんをどちらが引き取るかって話が始まるようだったの」
「……そうですか」
「ご家庭の事情に踏み込むのはどうかと思ったのね。でも」
「いえ、わかります。そんな話をしている最中にVRMMOマシンなんか使えないし、それに、両親のどっちについていくにしても」
そう。
どちらについていくにしても、どちらにも既に家族がいる。恭子はただの居候だ。
そんな状況でツンダークにログインし続けられる図太さを恭子は持っていないし、そもそもVRMMOマシン自体、置かせてもらえる可能性すらない。どう考えても無理だろう。
「そうですか。それで、こんな急に動いたんですか……」
やっとの事で本当に納得できて、恭子は大きくためいきをついた。
「ごめんなさいね。こちらがわの貴女の意思も確認せずに突っ走っちゃって」
「いえ、かまいません」
頭を下げる老婆に、恭子は続けた。
「本当にびっくりしましたけど……でも、あたしもそれでいいと思います」
「……」
「だってわたし、どっちの家族も見た事すらないんですよ?
そんな、顔も見た事もない『家族』の元にいきなり連れていかれて肩身の狭い思いをするくらいなら、たとえツンダークの中でも、自分の居場所があるならそれを守りたいです」
「……そう。わかったわ」
老婆は大きく頷いた。
「じゃあ、そういう方向でお話を進めるわね。
ああ、当たり前だけど、やめたいって思ったら、またいつでも言ってくれてかまわないのよ?明日でも、一年後でもね。その時はまた、言ってくれればいつでも相談に乗るわ。……忘れないでね?」
「はい。ありがとうございます」
ふたりは頷き合い、そして「さて」と、老婆が話を切り替えた。
「それじゃあ、また戻るけど……もしきついようなら、ツンダークに戻っていてもいいのよ?きちんと意思さえ確認しておけば、あとは私たちで何とかできるし」
「ありがとうございます。でも、見届けさせてください。何も出来ませんけど」
「そう?」
「はい」
恭子は大きくうなずいた。
「悲しいけど、でも、びっくりするくらい冷静な自分もいるんです。だからきっと大丈夫です。
それに、あんな人たちですけど、引き篭もり同然のあたしを二年も遊ばせていてくれた人たちなんですから」
「……そう、わかったわ」
そういって老婆は笑うと、
「じゃあ、おまじない」
「え?……あ」
老婆は恭子の両頬を手ではさみ、そして何かをつぶやいた。
(……え?)
その瞬間、自分の心と身体が急に強くなった気がした。……そう、まるでツンダークの中の『モフ子』のように。
「これって……」
「ふふ。これで少しは元気になれるかしら?」
「あの」
「なぁに?」
笑って部屋に戻ろうとした老婆に、恭子は思わず問いかけた。
「あの……ラーマさんて、もしかして本物の……」
「さて。それは、貴女が信じたい方を信じなさい?」
「……」
「ね?」
そう言うと老婆は片目をつむり、そして、人差し指を恭子の口に置いて、
「……はい、わかりました」
やっとの事で恭子は返事をすると、ふかぶかと老婆に頭をさげた。
「さ、いきましょ?より良い明日のためにね」
「はい!」
四人の会話は、そう長くは続かなかった。
何より恭子の両親が、すんなりと恭子を送り出す事に承認したのが大きかった。思春期の娘を得体のしれない研究機関に送り出すにしては、普通ありえないスムーズさだった。
(……)
そんな両親を恭子は、まるで自分がリアルでモフ子になったかのような冷静な視点で、冷ややかに見ていた。
意思確認における両親の同意書のところでも、流れるように印鑑が押された。
あとは学籍関係だが、そもそも中3の終わり近くから不登校になった恭子だから、特定の高校への在籍はない。そして、親しいリアルな友人との行き来もなくなっていた。
(引き篭もりのうえに友達ゼロかぁ。我ながらひどいよね)
思わず苦笑した。我がことながら情けない。
「それでは、よろしくお願いしますね。実際のお引っ越しは後日という事で」
「はい。こちらこそ」
話は終わり、一度老婆がおいとまする事になった。
父、恭子、母も三人で並び、玄関で老婆を見送った。迎えの黒い高級車に乗り込んだ老婆を見て、父と母が両脇で小さくつぶやいていた。
「大使館ナンバーか」
「何か、大きなバックのある団体の方みたいね」
何を今さら、書類はもう交わしてしまったというのに。
そう言いかけた恭子だったが、それこそ今さらだろう。内心、肩をすくめただけだった。
老婆の車が去ると、三人は機械的に屋内に戻った。
親子三人いるというのに家の中には物音もほとんどなく、ひどく寒々しかった。恭子はそのまま何も言わず、トントンと足音をたてて二階の、自分の部屋に向かった。
その時、
「恭子ちゃん」
とても小さな、小さな声で……彼女の名を呼ぶ声がした。
「なあに?」
その母親の声が、何年ぶりに自分を呼ぶ声なのかも、もう恭子にはわからなかった。
でも、呼ばれたからには振り向いた。
そこには、何か困惑げな顔をした女がいた。
「なあに?」
恭子はもう一度、繰り返した。
「……」
「用がないなら、もう行くね」
「……」
「じゃあね。あと、ありがとう」
「え?」
どうしてだろう。胸が痛かった。
部屋に入り、内側から施錠した。
机の横にあるラックから携帯食をとり、封を切って食べる。もう外に出る気がしないので缶の飲料を開けて飲み、水分も補給した。
そしてVRMMOマシンに横たわり、電源をいれた。
『VRMMOマシン起動しました。接続の瞬間に感覚が狂う事がありますが、もし、めまいや苦痛を感じましたら、途中でもただちに中断してください』
いつものメッセージを聞き流す。
接続先データとして『幻想世界ツンダーク』がセットされる。アカウントデータが吸い込まれ、やがて『モフ子』のデータが現れてくる。
『最終意思を確認します。接続いたしますか?』
「するわ」
『了解しました。しばらくお待ちください』
いつもの調子でこのまま応え、そして、「ん?」と眉をしかめた。
「ストップ、ひとつ質問!」
『中断を確認、待機します。しばらくお待ち下さい』
システム・プログラムの反応は早かった。ただちに恭子の言葉に反応していった。
『質問を受付ます。はい、なんでしょうか?』
「……いま、最終意思って言った?」
『はい、申し上げました』
「意味を教えてくれる?」
『はい』
一瞬だけ待ち時間があり、声は再び聞こえてきた。
『プレイヤー名「モフ子」の属性情報が「通常プレイヤー」から「残留者」に変更になっております。このため応答文が異なっております』
「残留者?どういうこと?」
『「ツンダーク」のユーザー属性のひとつとなっておりますが、詳しい情報は不明です。「ツンダーク」の運営の方にご確認ください』
「そう」
言われてみれば当然だ。今聞こえている声はVRMMOシステムのものであり、ツンダークのものではないのだから。
「わかった、ありがとう。接続を続けてくれる?」
『了解いたしました。では待機モードを解除、接続作業に戻ります』
その声を最後に、再び接続が開始された。
どこかから光が溢れてきて、それが恭子を包み込んだ。
『ワールドタイムゲートを通過します。一瞬揺れますのでご注意ください』
いつものアナウンスが脳裏に響き、そして何かのデータが視界を飛び交いはじめる。
『蛋白質構成変換作動開始。地球・ツンダーク界間時空偏差訂正4.5、アバター名「モフ子」データ変換開始。再構成中……完璧。異世界人保護メニュー展開・正常終了。リンケージ、よし。次に……』
何か重要データっぽいものが視界を流れていくが、モフ子は気にしない。見たところで彼女の知識では理解できない事を知っているからだ。
やがて世界が暗転し、テントの世界が戻ってきた。
「って、あんた何やってんの!?」
よほど、モフ子の戻りを待ちかねたのだろうか。なんとリトルがモフ子の身体によじ登り、下着を引き裂いて胸に吸い付いていた。
「こら!出ない!出ないから!ちょっと待ちなさいってば!」
子供どころか自分以外が触った事すらない乳首を舐め回され、思わず悲鳴をあげかけてしまった。
何とかリトルを引き剥がし、アイテムボックスからミルクをとりだした。
だが、まだ冷たいというのに無理やり強奪して飲もうとしてくるので、ムッときたモフ子はリトルの頭をポンと叩いた。
「こら!大人しく待ちなさい!」
「……」
ひどく不本意そうだったが、その声で大人しくリトルは待ちに入った。目だけは爛々と輝いているが。
「やれやれ……でも、なんか力つよくなってない?」
そういえば、身体も少しおおきくなったような気がする。
「これは……速攻で真面目に調、もとい、訓練しないとヤバいかも」
大型動物を飼う時に絶対避けなくちゃいけないのは、ナメられる事。むかし小耳にはさんだ情報がモフ子の中でリフレインした。




