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モンスターといこう  作者: hachikun
世界の謎を追いかけてみま章
36/106

北へ行こう(5)出迎え

 寒風吹きすさぶ中、たったふたりの一行はようやく橋の半ばまで到達した。

 幸いなことに、途中から次第に風はやみ、天候も落ち着いてきた。ただし太陽が傾いてくるにしたがって急速に寒さは増していて、ヒルネルはともかくほむらぶの方は態度のはしばしに寒さがにじみ出るようになってきた。

「大丈夫、ほむちゃん?」

「今のところはね。休憩所に入ったら上着を取り替えるわ」

「今替えてもいいよ?」

「いい。それより、あれが気になって仕方ないから」

「……まぁね」

 そう。寒いは寒いが、ふたりにはそれよりもずっと気になる事があったのだ。

「視界が悪い時にも気にはなってたけど……これって」

「うん。そっくり」

 ふたりの目の前にあるのは、巨大な休憩所とその入り口。

 どうやら馬車以上の大きさの乗り物を想定しているらしい。入り口のところが橋の本線からゆっくりと枝分かれして、ゆるりとカーブを描いて中に入るようになっていた。そして行き先には設備らしい建物の他に巨大な広場があり、そこはおそらく乗り物を停める場所。

 そう。ふたりはこの建築、というか施設をよく知っていた。

「サービスエリアよね」

「うん。高速のSAだよねえ」

 道路がアスファルト舗装とはちょっと違う不思議素材である事を除けば、まさに高速のサービスエリアそっくりだったのだ。

「ま、そんじゃ、とにかく急ごうか」

「うん」

 

 

 

 事前にソーヤで聞いていた通り、施設には入り口があった。

 そこだけ妙に今のツンダーク風の、明らかにあとづけの扉のロックを外し、開いた。

 中はすっかり冷えていたが、ほむらぶはすぐに中央の焚き火スペースのようなところに移動し、そしてアイテムボックスから(まき)の山と(すみ)、それに枯葉の塊を一組だけ取り出した。小さな火炎魔法でその炭に火を入れ枯葉を少し広げたうえ、これまた初級の風魔法で軽く煽ってやると、乾ききった木材に炭火、さらに枯葉のおまけまでついた炎は一気に燃え上がりだした。

 本来、焚き火の火というのは文字通り、木そのものに火が入らなくては意味がない。だから火をつけてすぐは輻射熱も少なく急には暖かくならないのだが、ほむらぶの持ち込んだセットは違っていた。どういう仕掛けなのか、数分とたたぬうちに焚き火は強烈な熱を放射しはじめた。そして、さほど広くない休憩スペースは次第に落ち着ける空間へと変わっていった。

「すごいね。早い」

「特製焚き火セットよ。実は魔法薬関係と同じくらい人気あるのこれ」

「へぇ。でも火付けなんてこの世界の人なら子供でも」

 子供でも使える技能なのではないだろうか?

「このセットのコンセプトは『コンビニエンス』だから。薪にも火を導入するための付呪を編みこんであるし。多少お天気が悪くてもすぐ使えるの」

「……それは便利かも」

「でしょ?実際、リピーターの人が多いのよね」

 一種のアイデア商品なのだろう。

 そんな話をしながら、さらにアイテムボックスから何か箱を取り出す。

「なにそれ?」

「これ?『食材セット・焼き物用』だけど?」

 これもまた商品らしい。

「ねえ。ほむちゃんって錬金術師だよねえ?」

「そうだけど?」

「取り扱い商品が妙に世帯じみてるのはどうして?」

「何かおかしいかしら?もともとわたし自身が使うために作ったものだし」

「……プレイヤーならアイテムボックスに入れとけば、いつもできたてだよね?」

 ヒルネルの疑問は当然ともいえた。

 ツンダークには料理人プレイヤーもたくさんいたが、アイテムボックスのおかげで完成した料理を簡単に保存できた。実際、ヒルネルのアイテムボックスにも、自分は食べないが情報収集の時に配るお菓子や、贈り物をするための惣菜セットなどがちゃんと入っている。

 だが、そんなヒルネルにほむらぶは異を唱える。

「それが合理的よね。でも野外で作って食べるのって、それはそれでちょっと楽しくない?」

「……それは」

 虚をつかれたような表情のヒルネルに、ほむらぶは続けた。

「まぁ感情論は置いといて合理的にいえば、錬金術なんてやってると現地で素材を加工してみる事もあるのよね。全部持ち帰って拠点で試行錯誤っていうのもいいんだけど、やっぱりそこはケースバイケースでやりたいわけ。

 で、お料理も同じことがよくあるでしょう?よくしらない現地の素材を、ちょっと現地で試してみたり。そうでなくても焚き火でお茶くらいは入れたりもするし」

「……なるほど」

 言われてみればそうだ。

 まぁ、そもそもヒルネルは料理をしないが、そんな彼女にとってみれば料理は食材を使った一種の錬金術といえなくもない。

「そっか。わかった」

 ちなみにツンダークにも空腹の概念はあったから、プレイヤーにも食事は重要だった。

 だがしかし、専業料理人系のプレイヤーはミミたち同様、後期には自分の情報を出さなくなっていたように思う。先日のモニョリでの事もそうだが、専業料理人は普通に地元にまじり、一般プレイヤーとは普通に交流しなくなるケースも多々あったのだろう。そんな事をヒルネルは考え、とりあえず納得した。

「貴女も食べる?ロミは?」

「いらない。ロミは移動中、わたしの血をあげてるからいいの」

「え。ロミって吸血種だっけ?」

「違うよ。けど、わたしが吸血種になってからこの子もそういう体質になったみたい。普通の食事もするけどね」

「……なにそれ。そんな事ってあるの?」

「よくわからないけどね。けど、気がついたらそうなってたよ?」

「そう」

 ペットにしろパートナーにしろ、人と動物は当然だが別の生き物だ。人間側の体質が変わったからってその影響を受けるわけがない。それくらいの事はほむらぶにもわかる。

 ではなぜ、ヒルネルたちのような事が起きるのか?ツンダーク式吸血鬼の特殊性だろうか?

 即席の焼き場をこしらえつつそんな事を考えていると、つんつんと小さな手がほむらぶをつつく。

「ん、いいよ。ここから置きなさい」

 そうほむらぶが指示すると、アメデオが慣れた手つきでひょいひょいと、肉や野菜の刺さった串を並べはじめた。

「ほんっと慣れてるねえ」

 バーベキューの手伝いをする猿。ほむらぶには普通なのかもしれないが、ヒルネルの目にはひどくシュールに見える。

「そりゃあ、うちの子だもん」

 ふふーんとドヤ顔でちょっと得意そうなほむらぶ。

 そうこうしているうちにも、ぽかぽかしてきた室内に、さらに良い匂いまでただよい始めた。

「アメデオ、それあんたとりなさい。え、わたし?ありがと。自分のは?こら、好き嫌いしないの」

 そのままふたりで食事タイムに入った。

 食事のいらないヒルネルはそんなふたりを微笑んで見つつ、自分のアイテムボックスから一輪のバラを取り出した。

「……」

 そのバラが手の中で急速に生命力を失い、枯れていくのを少しだけ見ていたが、やがて顔をあげて立ち上がり、大きな窓の外に目をやった。

 窓は現代地球のそれと見た目はほとんど変わらないものだった。ただし見た目だけかもしれないが。というのも、はめ込みになっていて開く事ができない代わりに、いかにも経年変化に耐えそうな、頑丈きわまる取り付けになっているからだ。

 いや、窓そのものはいい。ヒルネルは外に目をやった。

「やっぱりこの風景、サービスエリアっぽいね」

「そうね。やっぱり高速道路だったのかしら」

「どうだろうね。地球とはクルマの事情も違っただろうし、ちょっと想像つかないね」

「そうね」

 ヒルネルは、ほむらぶの推測を肯定も否定もしなかった。

 ところで。

「ん?」

 やがて、焼き系とは違う匂いが漂ってきたのに気づき、ヒルネルはそちらに顔を向けた。

「え?それいつ用意したの?」

 見れば、いつのまにか小さな鍋がひとつ火にかかっている。ヒルネルが外を見たタイミングで置いたのだろうか?

「これ?たまごスープ」

「たまごスープ?そんなものツンダークにあったの?」

「ううん、作った」

「へぇ」

「ふっふっふっ。錬金術師なめんなよ?うまみってやつも再現したぜい」

「おー」

 得意げに微笑むほむらぶに、思わずヒルネルは笑いそうになった。

「なによ?」

「器用だなって。ちなみに、他にはどんな料理を再現したの?」

「ひ・み・つ」

「えー」

「ヒルネル、貴女食べられないでしょ?だったら意味ないじゃないの」

「それはこれとは話が違うと思うんだけど。それにどうしても食べられないってわけじゃ」

「無理して食べる必要ないでしょ?」

「えー」

「えーじゃないの」

 暖かい炎。友達とのやりとり。

 たったふたりと、お供の動物二匹。

 わずかそれだけの道連れなのだけど、そこは確かに暖かい空間があった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 さて、厄介な問題は翌日に起きた。

 朝はとりあえず順調だった。冷えきった寒さに身を縮めつつも、そそくさと出発用意をしたふたり。ほむらぶの全身もこもこ毛皮装備にヒルネルが思わず笑ってしまってひと悶着あったりはしたものの、だいたい予定通りに出発する事もできた。

 そして今。かなり対岸に近づき、もう少しで橋も終わるというところなのだが。

「これは困ったわね」

「だねえ」

 ふたりの目線の向こう。そこには狼らしき動物の集団がいた。

 ツンドラオオカミ。ツンダークの寒い地域にはよくいる大型種の白い狼で、成体ともなればほむらぶですら乗れそうなほどの精悍な容姿と頼もしい大きさになる。

 それが、目線の向こうに大量にいるのだ。どう見ても十頭やそこいらではきかない数が、まるで陣取るかのように。

 これは洒落にならない。

 しかも橋の出口を塞いで待ち構えているわけで、つまり回避手段すらない。

「ほむちゃん、あれが迎えって事は」

「ないと思う」

「だよねえ」

 なんとなく、それはふたりとも感じていた。

 どういう理屈だかわからないが、あの狼たちはペットやテイマーの連れているそれとは違う。そういう実感があった。そして彼らの狙いは自分たちであるとも。

 ふたりの洞察は正しい。

 ツンドラオオカミの習性は地球の平均的なイヌ科の動物とほとんど変わらない。つまり徒党を組み戦術を使い、時には陣形まで作って狩りをする。今回のオオカミたちもそうで、はるばる橋を渡ってくる人間の姿を遠方から感知したのだろう。気配を殺してはいるものの「ごはん、はやくこい」と言わんばかりの雰囲気が遠目にもありありとわかる。

 まぁ今回の場合、ふたりは運が悪かったともいえる。

 通常、ツンドラオオカミはこの季節はもっと寒い地域にいるはずなのだ。だからソーヤの街の人たちも、今の季節はいないと思うけどオオカミには気をつけて、でたら怖いよ以上の警告はしなかったのだから。

 しかし、ただ運の悪さを嘆いても道は開かない。

「じゃあ、どうする?」

「攻撃するしかないわね」

「だねえ。いつ攻める?」

「そうね」

 何かを探すように周囲を見ていたほむらぶは、やがて覚悟を決めたようにウンと頷いた。

「なに?」

「とりあえず、ここから攻撃するわ」

「ここから?」

「ええ。これ以上近寄ると接近戦に持ち込まれる可能性があるし、いい狙撃ポイントがあるわけでもないし。だったらここでいいわ」

 アイテムボックスから大型の弓を取り出した。

「すごい弓ね」

 和弓だろうか?弓に詳しくないヒルネルにはよくわからないが、明らかにほむらぶの身長より大きな弓だった。

 それに、何かこれ自体にも強化はなにかの魔法がかかっているようだ。

「これ、本来は長射程狙撃用だから。アメデオ、青い壺出して」

 その声に反応したアメデオが動いた。ほむらぶの背中のリュックからポンッと飛び出して地面に降りると、ほむらぶと同じように見えない空間から小さな……ただしアメデオの尺度では十分大きな青い壺を取り出した。

「ちょ、アメデオもアイテムボックス使えるの?」

「正しくは空間魔法の一種ね。でもあんまり入らないんだけど」

「十分すごいよ。ペットでアイテムボックス使えるなんて初耳だし」

「ま、その話は後でね」

 そう言うとほむらぶは矢を一本召喚し、そしてアメデオの壺にその先端をつけた。

「付呪。『魔導炎(ソーサリアンフレーム)』レベル9」

 何かが軋むような音がして、矢全体が赤く染まる。

「爆炎系?橋までぶっ壊しちゃうんじゃない?」

「大丈夫、これは『意思ある生き物』の精神に干渉して自然発火させる魔法だから」

「へえ……ああそうか、それじゃ橋は燃えないわけか」

 生き物を自然発火させるのなら、橋に影響はないのだろう。炎で炙られておかしくなる可能性はあるが。

「いくわよ。念のため少し離れてなさい」

「りょうかいー」

 ヒルネルとアメデオは少し下がり、距離をとった。

 それを確認すると、距離ほむらぶは弓をきりりと引き絞り、そして、

「……疾っ!」

 ほんの一瞬、軽い風切り音とともに赤い矢がほむらぶの手元から姿を消し、

 そして次の瞬間、

「!」

 視界の向こう、待ち構えていた狼たちの群れを包むように、巨大な炎が燃え上がった。

「ギャンッ!!」

 突然の炎に狼たちはあわて、悶え狂いはじめたのが遠目にもわかるが、

「だめ、押さえ切れない」

「あら」

「こっちに来る!」

 ほむらぶが顔色を変え、持っていた大弓を即座にしまいこんだ。いつもの野戦用の小型弓に切り替える。

 だが。

「ちょっとヒルネル、貴女!」

「まかせて。一頭なら何とかなる」

 それだけ言うとヒルネルは迫り来る狼に向かい、そして手を伸ばし、

「『そこまで』」

 たった一言、魔力の篭った言葉を狼にたたきつけた。

 そしてその瞬間、

『……』

 こちらに向かって疾走していた狼が突然、ゆるやかに動きを止めた。

「『攻撃よりも仲間を助けなさい。全滅の危険を犯すべきではない』」

『……クゥ』

 狼は少し抵抗するかのように鳴いたが、すぐに(きびす)を返した。炎に巻かれてパニック状態の仲間の元へさっさと駆け戻っていく。

「ふう。凄いわね」

「凄くない。同士討ちさせるつもりだったけど無理だった。すごい抵抗だった」

「そうなの?」

「今のわたしじゃ追い返すのがせいぜい。それ以上は無理」

 動物相手は難しいねえ、と自嘲するようにヒルネルはつぶやいた。

「十分よ、ごくろうさまヒルネル。これで……」

 これで進めるわ、と言いかけた瞬間、それは起きた。

「!?」

  

 ドゴオオオオン、と、強烈な地響きを伴った大音響が。

 

 それは本当に突然で、なんの前触れもなく起きた。

 少し余談になるが、ふたりの渡っているノーザ大橋は単体の巨大橋である。力学的には完全に固定されておらず両大陸の間に吊られた構造なのだが、少なくとも橋梁の専門家でないヒルネルやほむらぶにはそこまではわからない。ただヒルネルは例の昔の趣味の関係で、ノーザ大橋がどれだけ途方も無い技術の上に作られているか、という事は理解していた。日本にも瀬戸大橋など海にかかる橋はあるが、これほど巨大なものはまずない。理由?簡単である。たったひとつの橋だと壊れた時のリスクが洒落にならないので、複数の橋の集合体として架橋するためだ。

 その巨大なノーザ大橋が揺れた。それも大きく。

 二人は浮足立った。これほどの巨大橋を揺らすほどの大きな力がなんなのか、理解できないままに。

 ドーン、ドーンと揺れは続く。さすがに一発目ほどの強さはないが。

「い、いったい何が」

「ほむちゃん、あれ!」

 思わず反射的に頭上の安全を確認し、次に掴まる場所を探していたふたりだったが、その異常なものに気づいたヒルネルが声をあげ、それを指さした。

「え?」

 ほむらぶも、ヒルネルの声に反応し、その方向を見て思わず固まった。

「……マンモス?」

 そこにいたのは、一頭の巨大な象……そう、地球人目線ではおそらく大多数の者がマンモスと呼ぶ古代の巨大象に似ていた。

 それは全身、もふもふの毛に包まれていた。あいにくと牙の大きさはそれほどでもないのだが、そんなもの問題にしないような巨大な体をそのマンモスは所有していた。何しろ、ライオンほどもあるはずのツンドラオオカミたちが子犬の群れに見えるような大きさなのだ。

「マンモス……マンモスみたいだけどさぁ。なにあの大きさ」

 ヒルネルもほむらぶも、あまりのサイズの途方もなさに目が点になっている。

「ヒルネル」

「なに?」

「貴女、この距離からあのマンモスのスペック見られる?」

「苦しいと思う。そもそもレベル的に無理かもだ」

「お願いできるかしら?わたしには無理みたいだから」

「わかった。やってみる」

 ヒルネルの目が開かれ、何かを見ているようだったが、やがて「ふむ」と唸った。

「本来は無理だけど、強引に読んでみた。見る?」

「種族特性ってやつかしら?さすがね。でも見るってどうやって?」

「『ウインドウ共有化』って知ってる?チュートリアルなんかで指定した他人にメッセージを見せたりするのに使うアレなんだけど」

「知らない。なにそれ」

「やっぱり。すぐ横にいないとダメだし、そもそもマイナーな機能だもんね……はいどうぞ、設定したよ」

 その言葉とともに『共有』というスタンプのついたウインドウがほむらぶにも確認できた。

 

 

 

『グリディア』種族:グランマンモス Lv不明 性別:female

 特記事項: 地の神の祝福(アースクエイクLv不明)、天空神の祝福(重力制御能力)

 特記事項2: 同乗者あり(ピン:コネクトラビット)

 テイマー・サトルの群れにおける獣種の仲間では最大級。肩までの高さが10mに達する。

 グランマンモス種は陸上の通常生物ではツンダーク最大であるが、そんなグランマンモスの中でも彼女の大きさは突き抜けている。(いくらグランマンモスでも普通、高さ8mを超える事はまずない)

 この巨体を支えるため、グリディアはドラゴンと同様に無意識に重力魔術を操っている。またそれゆえに、この大きさになっても普通に生き延びているのだろうと推測される。

 その最大の攻撃は自分の大質量と重力魔法を組み合わせた地震攻撃である。もちろんそれは飛行生物には効かないが、相手は無意識に重力魔術を操る存在である。油断は禁物。

 ただし、ご当人は至って穏やかな性格である。ゆえに貴女が彼女に害する意図がない限り、友好に接する事を強くおすすめする。

 なお、グリディアとはツンダーク語で『おふくろさん』的な女性に対する尊敬語である。

 

 

 

「肩の高さ10メートルって……イベントモンスター級のマンモス!?」

 ちなみに地球では、最大級と言われるマンモスの肩高ですら5.1メートルである。未発見の種もあるかもしれないが、さすがに10メールに達する事はないだろう。というのも、最大のマンモスと呼ばれる松花江マンモスですら推定体重20トンに達するからだ。かりに10メートルあったとして松花江マンモスと同じ体格なら、その体重は60〜80トンとなる。陸上生物でこの重さはいくらなんでも無茶というもの。

 ウインドウにもあるが、重力を制御できているからこそ生き延びている、という推測はおそらく正しいのだろう。

「みて、ほむちゃん。オオカミが逃げてくよ」

「あんなにいっぱいいたんだ……」

 距離が遠いので小さく見えるが、あの一頭一頭がおそらく、さきほど相対したオオカミと同様のサイズだろう。それがわらわらと、まるで蜘蛛の子でも散らすような物凄い数が逃げていく。

 さすがに、ゾッとした。

「同乗者ありってなってるわね」

「ここからじゃ見えないけど、そうみたいだね。知らない種族だけどウサギかな?」

「たぶん。ミミさんの言ってた子だと思う」

「りょうかい。じゃあ行く?」

「ええ。もうちょっと待って安全が確認とれたら行きましょう」


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