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モンスターといこう  作者: hachikun
サトルとテイマーとウサギの章
3/106

立場の相違(1)

相席になった女性の裏側の話。

 サトルと別れて店を出た女性は、さっそくペット連れ友の会に向かった。正規プレイヤー初のペット連れ出現は大ニュースであり、是非とも仲間に伝えて喜びを分かち合いたかったからだ。

 実のところ、モブにちょっかい出して懐かれるプレイヤーはそこそこ存在する。

 だが懐いてすぐのペットは正直いって戦闘の邪魔にしかならないし、そもそも彼らは速攻で逃げてしまう。また、ある程度より親しくなったとしても連携プレイをとるわけでなし、プレイヤーの指示にだって従わない。さらに、迂闊な真似をして怒らせたペットに背後から襲われるプレイヤーまでいた。

 是非はともかく、そんな状況でペット連れのプレイヤーが増えるわけもなかった。

 では現状のペット連れプレイヤーは何者かというと、多くはペットかわいさにプレイスタイルを変えた者たちだった。彼らの多くは狩人・漁師のように特定のフィールドに特化したり、あるいはいっそ生産職に身を固めた。特に初期のうちはお試し期間扱いで職業変更が容易なので、この時期にペットに出会った者は思い切りよく極端な職種に行った者も少なくなかった。

 そう。一見お遊び染みたペットシステムだが、プレイヤーを各ジャンルに拡散させるという意味では大きな役割を果たしていたのである。

 閑話休題。

 さて問題の女性である。彼女は友の会ギルドの建物に向かいつつ、同時進行でギルド専用掲示板に報告をした。

 

 

ミミ『報告。正規プレイヤー初のペット連れだよ!お話もしたよ!』

ほむらぶ『おつかれっす』

ノマ『おお!』

ひるねる『ほほう!』

菜種油『町まで連れ帰ったんですか?ならば、にわか(・・・)でなく本物の仲間って事になりますが』

ミミ『それどころか!食堂で相席になってね!情報交換しながらお話したのよぅ』

ほむらぶ『おお!新しいお仲間ですね!』

菜種油『して勧誘は?そこまで有望ならばもちろん』

ミミ『あーごめんなさい、それは断られた』

ひるねる『ほほう?それもまた珍しい』

菜種油『ミミさん、その人どんな容姿でした?あ、それと性別は?』

ミミ『へ?布の服に最初の靴だったよ?男の子』

ほむらぶ『初期装備?なんで?』

ミミ『それって不思議なの?お食事だから着替えたんじゃ?』

ほむらぶ『いやいやない、それはない!』

ミミ『へ?なんで?』

菜種油『ほむらぶさん、ミミさんはフィールド知らないからその説明じゃ無理です』

ほむらぶ『?』

ひるねる『ミミさん、食事中に警戒が必要ないのはこの町だけなんですよ』

ミミ『へ?そうなの?』

菜種油『ですです。ミミさん職人さんで普段は出ないし出る時は護衛つきですもん。知らなくても無理はない』

ミミ『そっか。なるほど』

ほむらぶ『なるほど!』

ひるねる『ほむらぶさん、平常運転だなぁ』

ノマ『ww』

菜種油『その男の子ですけど、もしかしたらレア職に就いてる可能性がありますね』

ミミ『レア職?』

菜種油『はい。布の服と最初の靴って、どんな職業でも身につけられるでしょう?』

ミミ『あー、なるほど。服装からお仕事が推測できないんだね?』

菜種油『はい。布の服でペット連れって情報だけじゃ、どんな職種でもありえますから』

ノマ『そうかな?むしろ絞りやすくない?』

菜種油『どういう事です?』

ノマ『今レア職って言われているもので、中身が解明されてない職業って何があるかしら?』

ひるねる『えっと、内政系がほとんど全滅だよね』

ミミ『内政って……それNPC用職種ってやつでしょう?プレイヤーが就くのは無理って聞いたよ?』

菜種油『ミミさん、それプレイヤーの推測なんですよ。確定情報じゃないんです』

ミミ『うそ。初耳!』

ノマ『でも内政だったら隠す意味あるかしら?』

菜種油『それはわからないです。まぁ、あくまでここは推測の場ですから』

ほむらぶ『テイマーは?』

ミミ『え?』

ノマ『は?』

菜種油『はい?』

ひるねる『おおテイマーですか!確かにレア職だし詳細も判明してない、隠す理由ありまくりでしょうね。興味深い』

ノマ『まさか。だってテイマーって戦いに向かないんでしょう?その彼って誰かとつるんでるの?』

ミミ『ひとりみたいでした。そもそも初心者で始めたばかりって』

ノマ『だったら無理じゃない?いくらうさぎでも丸腰の初期レベルじゃ強敵でしょう?テイムどころかペットにもできないんじゃ?』

ひるねる『いや、待ったノマさん』

菜種油『ほむらぶさん、たぶん根拠あるんですよね?悪いけど説明頼みます』

ほむらぶ『おけ。つまりテイマーってローブも鎧も金属製の武器もダメなんだ。この町じゃ布の服くらいしかないはず』

ミミ『げ、そうなの?』

ほむらぶ『そう』

ひるねる『なるほど。そもそもソレしか選択肢がないってわけか』

菜種油『さすがに一理ありますね。ほむらぶさん、また何か浮かんだらよろしく』

ほむらぶ『わかった』

ノマ『うーん。じゃあ、とりあえず私達の方針は?』

菜種油『接触を続けてみるのがいいと思います』

ひるねる『ほう。その心は?』

菜種油『無理に僕らの仲間にする必要はないです。けど、本当にテイマーなら周りが動き出してからが怖い。僕らはペットもちってだけでテイマーとは関係ないのに色々言われたりしたからね』

ミミ『そうね。ああいうのがまた起きるのはイヤだもんね』

菜種油『ミミさん、悪いけどもう少しその彼と接触頼みます。代償といってはなんですけど、僕の権限でできるかぎり、ミミさんとこに卸してるマリウス・スパイダーの糸の値段を下げられるよう交渉してみますんで』

ミミ『うわ、ありがと。でも無理しないでね。お互い無理のないように』

ひるねる『そう、無理のないように。それが一番』

ノマ『そうね。ってごめん夜泣き、落ちる!』

(ノマさんがログアウトしました)

ほむらぶ『いてらー』

菜種油『いってらっしゃい!』

ひるねる『リアルママさんは大変だなぁ。むしろよくこんなゲームできるな』

ほむらぶ『推測だが、昼は助けてくれる人がいるんじゃないか?けど夜はそうはいかないから』

菜種油『だね。ノマさんの農園がなかったら僕らは苦労してたはずだからねえ。リアルママさんに大感謝ですよ』

ひるねる『農業は地味だからやりたがらない人多いもんなぁ。収入いいらしいが』

ほむらぶ『このゲームは空腹の概念がある。NPC食料は高すぎる。第一次産業、絶対必要』

ミミ『うんうん。あ、ギルドホーム着いた。ちょっと落ちますー』

菜種油『了解』

(ミミさんがログアウトしました)

ほむらぶ『まだ見てるか?菜種』

菜種油『ああ。ミミさんには言えない事だろ?』

ほむらぶ『そうだ。問題の人物だけど、テイマーと判明したら』

菜種油『転職をすすめろ、だろ?』

ひるねる『えええ、なんで?レア職じゃん?解明が進めば』

ほむらぶ『ひるねるの言う通りだよ普通は。だけど今はまずい』

菜種油『初期にテイマーをさんざ試して痛い目を見た連中、今は攻略組の最前線にいるんだけどさ。たまにテイマーになろうとするヤツを捕まえちゃ嫌がらせするんだよ。あいつら古いから人脈も広いし、はじめたばかりのプレイヤーなんて、直接攻撃できなくたって潰す方法はいくらでもあるし』

ひるねる『……なんだよそれ。そんなんアリなの?』

ほむらぶ『気持ちはわかる。オレ、そういうのに別のMMORPGで対抗してボロッボロにやられまくった事あるから』

ひるねる『……』

ほむらぶ『もし問題のヤツがテイマーで、連れてたうさぎがペットじゃなくテイミングした使役獣だっていうんなら、今は一番危険な時期だと思う。オレがそいつの立場なら、他のプレイヤーから身を隠して活動する方法を探すよ。それがなければ……』

ひるねる『なければ?』

ほむらぶ『わからん。だけど、ひとつだけ確かな事はある』

菜種油『何です?』

ほむらぶ『ミミさんが接触する事はそいつのためにもなる可能性がある。つまり』

菜種油『こっちに相談してくるなり、あるいは危険を感じてなんらかのリアクションを起こすかって事?』

ほむらぶ『正解。だからミミさんの接触は悪い事ばかりじゃない。彼女には申し訳ないが』

菜種油『そっちは僕が何とかしますよ。でも、ほむらぶさん。彼女が好きならもっと直接アプローチすればいいのに』

ほむらぶ『なんの話だ?』

菜種油『いえいえ』


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