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お金がないから成仏してね?

まったりまったり更新してきます。pv数も伸びてるってことは更新待っててくれてる人もいるのかな?

やあなかなか申し訳ないくらい待たせちゃってますが、ゆっくりいかせてもらいますねー。あんまり意気込みすぎるとすぐいきぎれするし。

 気がつくと俺は自宅の布団にくるまれて眠っていた。

 ぼんやりとしながら、乾燥して開きたくないまぶたを瞑ったままでとりあえず携帯を手探りで探す。所定の位置で毎晩充電機にアナを掘られて身体を火照らせているはずの携帯はどこにもなく、手に当たるのは細長いコードと畳のガサガサとした手触りばかり。

 仕方なく瞼を開けて上体を起こす。周囲を見回して、ないものが携帯だけでないことに気付いた。


 いつも目覚ましがわりにしていたラップ音が聴こえない。

 目障りなくらいに発生したポルターガイストがひとつも発生していない。

 胸から幽体離脱とか言って起き上がるバカがどこにもいない。


 不意に喉が苦しくなる。


 そうだった。あいつらは一人残らずクラムボンしたんだった。クラムボンクラムボン。クラムボンよりかはシャボン玉飛んだの方が近いかも。


 そうか。俺は昨日、本当に人との繋がりを全て失ったのだ。

 

 急に鼻頭が熱くなり、涙が流れて息が苦しくなる。嗚咽を漏らして、小学生以来というくらいに無様に泣いた。

 いなくなったあいつらとの思い出が走馬灯のように流れて、また涙がこぼれてくる。


 変なことばかり考えていたからか、それまで友人なんてものを持ったことのなかった俺に初めて友達だろうと言ってくれたあいつら。

 俺の変だ変だと言われていた考えを変だけど面白いといってくれたあいつら。

馬鹿にしてきたし、正直ちょっとうざいときもあったけど、寂しいときもずっと一緒にいてくれたあいつら。

 俺に内緒で俺以外のメンバーで出かけて事故ってぐちゃぐちゃになったあいつら。

 車のなかで発見された俺の名前が書かれた包装紙と血に濡れたカメラ。

 死んでちょっとたってから俺が心配で成仏できねぇと笑いながら文字通り飛んできたあいつら。

 一人生き残っている俺。


 そしてまた俺は一人だけ生き残った。


 視界の端でなにかがごそりと動いた。来客用の布団に見知らぬ男がくるまっていた。

 その顔が昨日見た男だったことに気付く。昨日こいつはなにも知らないといった。しかしそんなことあるのだろうか。あんなところに立っていてそんなことあるのだろうか。俺はこいつを見逃していいのだろうか。こいつを殺さなくていいのだろうか。


 俺はテーブルに起きっぱなしにされた瓶を手にとって這いつくばってそいつに近づいた。枕元に膝立ちして、瓶を振り上げる。男はまだ寝息をたてている。

 心臓がどくどくといっているのに頭から血の気が引いているように頭がふらふらする。男はまだ寝息をたてている。

 荒い呼吸を整えるために深く息を吸い込む。一、二、三回。男はまだ寝息をたてている。

 最後により深く息を吸い込んで止める。男はまだ寝息をたてている。


 瓶を思い切り降り下ろした。聴こえたのは固くて鈍い音。周りの音はなんにも聴こえなくなった。しかし目は目の前の男から話さない。


 死んだのだろうか。

 それを望んでいたはずなのに俺の膝は笑い出す。誰もいなくなった俺を俺の体すらも馬鹿にしているようだ。


 俺はなんでこいつを殴ったのだろうか。こいつが犯人なんて確証もなく、こいつ自身それについては否定していたというのに。


 俺の膝はこんな俺の状態と、この状況に大爆笑中で、そんな状態で俺の身体を支えてられるわけなく、俺はオンナノコ座りのような態勢になった。そうして男のことを見ていると膝だけでなく全身が震えてきた。一旦は収まった息もまた荒くなっていく。


「はっ、…………はっ、おい。起きろよ。……おい。おいってば!」


 俺は男に必死に呼び掛けた。昨日自分で裂いた口の端の瘡蓋が剥がれて痛むが気にしない。

 自分で打っておいて何をやってんだと自分でも思うが、体の震えが止まらないのだ。痛みなんかよりその震えを止めたくて、でも体の震えは止まらなくて、口の中もからからに乾いて、だけどそれらの症状はこの男が起きてくれれば収まるのだと思ったのだ。

 声をかけるだけでなく、頬を少し強めに平手で打つ。一度では起きる気配がないならばもう一度、もう一度と何度も男の頬を打つ。一度ごとに強く。張っていく。そしてついに全力で手を振り抜こうとして、その手を阻まれた。目の前の男の手だった。そして男は俺のことを睨みながら言った。


「超いたい……」


 その目は涙眼で、頬は真っ赤に染まって腫れていた。








 俺はとりあえず謝っておいたが、一応俺の中ではこいつは超一級不審者である。あの場に偶然居合わせたということに加えて、何故だか俺の家に泊まっていたこいつを不審者と言わずしてなんと言うのだろう。いや、他の人がどう思うかは知らない。しかし俺からしたら当面のところは不審者以外の何者でもない。

 俺は用心しておくに越したことはないと考え、先程こいつの頭に叩きつけた瓶を手元に置いておいた。親友たちと叩いて被ってじゃんけんぽんで培った俺の反射神経なら大抵のことにはこれで反応できるであろう。

 というか、そういえばさっきぶっ叩いたのだった。


「頭……大丈夫か?」

「突然なんっつう失礼なこと抜かしやがるんですか!?」


 いや、一応本当に心配しての言葉で、そういう意味ではなかったんだけれど、まぁそういう意味でも心配ではあるけれど。なんで初対面の人んちに我が物顔で泊まってんのよ。しかも昨日の俺はなかなかのキチガイっぷりだったと俺の海馬が幾度となく思い出させてくれている。もう恥ずかしすぎて思い出したくないのに目の前の男の顔を見るたびに勝手に思い起こされてファびょぁぁっぁああああああああああ


「あんたこそ頭大丈夫ですか!?」


 突然頬をこねくり回しながら正座のままうつ伏して悶えだした俺に対して男がもっともなことを言う。はい。ダメです。もう昨日ぶっさして引き裂いた傷跡いじめなくちゃ正気を保てないほど恥ずかしい。でも痛い。これものっそい痛い。


「ちょっ!!血!傷跡開いちゃってますから!ガーゼ真っ赤!落ち着いて!ほんとお願いだから!見てるこっちが痛いから!」


 男がそう叫んびながら俺を抑えようと必死に俺にしがみつくが、俺は止められはしない止まらない。羞恥の力はムゲンダイィィィィ!!



 そんなこんなで十分後

 はしゃぎ疲れた成人二人はマットの上で汗だくになりながら荒い息を交わしていた。

 絡み合った手足は網を辿る蔓のように複雑怪奇に結ばれて、俺たちはその熱い体温をお互いに感じあっていた。

 俺はそんな風にされてピクリとも動かせない体を動かしてどうにか脱出しようと必死にもがく。しかし男はそれを必死に阻止して俺の瞳をまっすぐ見つめる。

 俺はこいつからは逃げられない。そう。どんなに逃げようとこいつからは逃げられない。そう思うと体から力が抜けた。もうどうにでもなってしまえ。そんな気分だった。

 男はそんな俺を見て満足したのか薄く笑った。そして俺の頬に手を当ててーーーーガーゼをひっぺがした。


「いってぇぇぇあぁぁぁぁああああ!!!!!!」

「はいはい。ガーゼ変えますからねー。タオルでちょっと傷跡押さえててください。ほら。いい大人なんだから手当てしてくれてる人をそんな涙目で睨まない」


 どうでもよくなかった。ものすごくいたかった。

 俺は再び抵抗を試みるが、一度拘束された体はもう自分の意思では動かせない。男はてきぱきと手慣れた所作で再び開いた俺の傷を手当てしていく。

 俺は完全に男にされるがままで、涙目でそんな男を睨んでいることしか出来ない。男はその間にも俺の傷口に薬を塗ったり、傷を縫ったり、いたせり尽くせりな介護な訳だが、そんなん感謝するどころかこれ絶対嫌がらせだと確信できるほどの痛みが継続的に俺を襲うわけで、やっぱりこいつは殺してやる!主にみんなの復讐的な意味で!痛いからって八つ当たりしてる訳じゃないんだから!


「殺シテヤル」

「はっはっはっは。そんな怖い目されたってもう怖くないですからねー。あなたの生殺与奪の権利は私が持ってるんですから」


 生殺与奪。


 とても物騒だ。しかし、実際こいつは俺の親友たちを殺したやつなのかもしれないのだ。中に浮いていたとしても人の形をしたものを容易に殺すことのできたこいつが俺を殺せないとは限らない。

 俺は再びはね上がる鼓動と、激しくなる呼吸を悟られないように意識しながら俺を押さえつけるそいつの顔を見た。

 そいつは楽しそうににやにやと笑っていた。


「ところであなたは攻めと受け、どちらに興味あります?」

「いやだああああああ!!!」


 その日、俺は大切なものを失った。

読んでくださってありがとうございます。

やー、毎日更新してる人たちってすごいですよねー。どうやって時間捻出してるんだろう。本当にすごいなぁ。

私は「盾の勇者の」とか「スライムに転生」とか好きですよー。毎日更新されてるって読者側からしたらありがたいですもんねー。


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