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陰陽少女と闇の少年

陰陽師、というものが大好きです((


今も実在することを願っています((

 しんと静まり返った夜明け前。


 空は黒い絵の具で塗りつぶしたかの如く真の黒。

 完全なる、闇。


 街灯の明かりもなく、唯一頼りになる月や星も雲に隠れてしまい辺りは闇に包まれている。


 そんな中、静寂を打ち消すかのように少女の声が響いた。


「滅っ!!」


 暗闇で顔は認識できないが、声からすると10代後半ぐらいだろうか。


「あぁ、もう、滅しても滅してもどんどん湧いて出てきやがってっ……!」


 少女にしては少々乱暴な言葉づかいで、彼女はなにかぶつぶつと独り言をいう。


「……こういう時に兄貴たちがいれば……、……悔やんでも始まらないな!」


 前向きな発言をしたかと思うと、一瞬にして彼女を取り巻いていた空気が張りつめた。

 

「――――――天津さえも振り向かず全てに屈せず染まらず、善より悪に敬する神よ。我は求める、全てを染めた漆黒の翼をっ…………!」

 印を結び、儀式通りの歩調で前へ進む。

「――――――闇の神、真夜しんや!!参られよ、そして君臨せよ!!!!!!」


 彼女が呪文を唱え終えるのとほぼ同時に、彼女の前に突風が吹き荒れる。


「……我を呼んだのは…………あぁ、なんだ深夏(みなつ)か」

 現れたのは幼い少年だった。

 年はせいぜい10くらいだろうか。

 少し吊り上った大きな瞳は吸い込まれそうなほどの闇が渦巻いている。


「あぁなんだとはなんだ。これでも術者の端くれだぞ」

 深夏はむっとして頬を膨らませる。

 

 この暗闇でも闇の神である真夜には昼間の如く視野が広いわけで――

「そういうところが子供だと、いつも言っているだろう。まぁ、そういうところが我は好きなのだが」


 見た目が10代前半だが、言うことが年寄り臭いのは、やはり彼は何千もの月日を見てきた神だからだろうか。


「かっ、可愛いとか言うなっ」

 頬を真っ赤にして俯く深夏。

 真夜は面白そうに目を細めて、くすりと外見に似合わぬ笑い方をする。


「して、深夏。今回は何用で我を呼んだ?」

 右の耳のみについている黒曜石でできたピアスを(いじ)りながら、真夜は逸れかかった話題を元に戻した。

「あぁ、うっかり我を忘れるところだった」

 先ほどまでの雰囲気とは一変し、目が術者のそれになる。


「今日はやけに九尾の調子がいいみたいで……。あまりにも悪霊が多いんだ」


 そう言って前方を見据える。


 ゆらゆらと青紫に歪んだそれは、見ているだけで背筋が凍るような威圧感がある。

 悪霊。

 人々はそう呼ぶ。

 それらは次第に形を作り、様々な容姿に変化する。


 女の姿のものもあれば、幼い少女の姿もあり、小さな少年の姿もある。


 極端に女性が多いのは、嫉妬深い生き物が女だからか。


「ちっ、また湧いて出やがって……」

 深夏は舌打ちをすると、巫女装束には少々不釣り合いな日本刀を鞘から抜き取ると、何度か素振りをし感覚を確かめる。

 しばらくし満足したのかすでに近くまで来ている悪霊を見据えた。

 

 15の少女がこの光景を平然と見る様はなかなか凄惨な図だ。


「ふむ、我は奴らをすべて消滅させれば、今回の仕事は終わり、ということになるのだな」

 腕組みをし、真夜が深夏に問う。


「いや、真夜は保険。もし私が失敗したら、のね」

 深夏はそういうと、小さく何かを唱える。


 途端彼女が構えていた刀が青白く光り始めた。

 銀の鱗粉を纏ったそれは、見るものを魅了するような輝きを放っている。


「ほぉ、今宵は深夏の本気が見れるのか?何百……いや何千と生きてきて、此処まで嬉しいことはない」

 真夜は大袈裟にそういうと空高く飛んだ。


 そして、着地する。

 宙に。

 まるでそこに地面があるかのように。

 空に着地した。


 するとそれを待っていたかのように、深夏は刀を構え、

「全てを照らすは光!!我が妖刀、鱗鐘!応えよ、そして目覚めよ!!」

 神々しいほどの光を放ったそれを自らの体ごと一周させる。


 すると彼女を中心に銀の鱗粉を纏った風が回りだす。


「烈!!」


 竜巻のように深夏を取り巻いていた風はその言葉に反応し、一瞬にして波のように広がり悪霊を滅していく。


 次々と滅せられていく悪霊は白い光の粒子になっては消えていく。


 その光景を見ながら一言。


「……腹減った」


 昨夜からなにも食べずに、深夜まで町中を駆け巡った少女の切実な気持ちだった。

おかしなところがありましたら、遠慮なくご指摘ください

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