2話~ぼくの発見~
アンドロイドであるぼくが見つけたものとは?
アンドロイドにとって
さしずめ「家」は収納棟であり
「学校」は訓練所だ
収納棟に戻り、各自のカプセルに収まる。
アンドロイドの機能は
スリープカプセルの自動扉が閉まると
オフになる。
そしてタイマーがセットされた時間に
扉が開いてオンになる。
その間は「無」なので、アンドロイドにとっては、
ただまばたきをしただけのようなものだ。
アンドロイドはまばたきをしないから、
それが1日1回だけのまばたき。
扉という瞼が閉じる一瞬は
目の前が黒1色になる。
扉が開くと光を感じるので世界は
黒とグレイのモノトーンになる。
明るさと暗さの違いを認知できれば
任務を遂行する事ができるので
何の差支えも無い。
また今日も同じように
隊列を組んで同じ道を歩いていく。
一糸乱れぬ歩幅で。
そのはずだった。
橋の上だった。
ぼくは右側の橋のたもとにそれを見つけた。
見つけた、ということは
ぼくは視線を下にむけていたのか?
すでにそのときまでにぼくの回路が狂って、
あごの角度がやや鋭角になっていたというのだろうか。
わからない。
とにかくぼくはそれを見てしまった。
小さい紙の切れはし、のようなもの。
この訓練施設区域にはゴミ1つ落ちていない。
よけいなものがあったためしがない。
だからその紙切れの存在自体が
まず稀有だったのだが、
それよりなにより、
それには、
色があった。
とても薄いけれどぼんやりと
まだらに色がうかんでいた。
どの色も知らない。
初めての色だ。
なぜだかぼくは
どきん、とした。
機械だけしかはいっていないはずの胸に
体液が脈打ったような感覚がおそった。
ぼくは列からはみだしてそれを拾い、
口のなかに押し込んだ
。ぼくが離れた隊列は止まることもなく進んでいる。
少し早足で隊列に追いつくと、
ぼくのために空いた場所に体を戻した。
なにもなかったかのように隊列は進む。
橋を越え、教官の待つ建物へ。