17話~決断~
アンドロイドを解き放つ。
それは善なのだろうか悪なのだろうか。
もしかしたら自分はとてつもないスイッチを
押してしまうことになるのかもしれない。
H棟教官は何度もためらった。
それでも頭の中になだれこんできた
夢とも物語ともいえない「記憶のかけら」は
あまりに強烈過ぎて、
無かったことにはできない。
何故、自分なんだ、と思う一方で
やはり自分だから、と納得している。
祖父がやりとげられなかったことを
自分に託しているような気さえする。
「これを着ると良い。勇気が出る」
ウサギのチョッキと懐中時計を
差し出す祖父の幻。
「丸いめがねもいるかね?」
彼は、数回頭を振って、
深呼吸すると、
画面に映し出された「廃棄処理許可手続完了」の
文字に安堵した。
夜明けまでに。
急がなくては。
ファーザに申請した「廃棄」の承諾はとれた。
あとは、アンドロイド本体を
本当の意味で解放してやれるかだ。
「外にでるぞ」
アンドロイドに話しかけたが、表情はかわらない。
「行くべきところがあるんじゃなかったのか?」
つい声を荒げた。
それでもアンドロイドは動かない。
「おい」
「チャーリー!」
瞳に精気が宿った。
チャーリーの瞳が彼をとらえた。
「時間がないんだ、外へ」
チャーリーはゆっくりうなずいて、
彼にしたがって、廊下をすすんでいく。