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13話~接触 OTHER SIDE~

初めての経験「我慢」。

ぼくは我慢していた。

いつもの監視員がそばによってきて

ぼくをのぞきこんでも、

なにも感じていないようにじっとしていた。


昔かくれんぼであそんだときのように、

体をものの一部と同化させればいい。

かくれんぼ?

カクレンボ?

何だっけ?

いけない、「我慢」に集中できなくなる。

教官が手を伸ばしてきた。

やめてくれ。

唇にふれる。

ぼくには触感が宿ってしまったから、

我慢していなくてはならない。

声のない声で叫びだしそうになる。


ぼくの口からぼくの宝物がひきずりだされる。

口を堅く閉じて抵抗したい。

でもぼくの口は開閉機能がない。

タイセツなアリスが

また汚い世界に引きずり出されてしまう。

ぼくが守ってあげたかった。

口の中で子育てをする魚がいるって

図鑑で読んだ事があった。

図鑑。

ペンギンの親は足の下に子どもを隠すのだったっけ。


返して。

返せ。


ぼくは思わず、手を伸ばした。


角度四十五度。

ぼくの人工皮膚に包まれた、

何も掴んだ事のない手のひらが

宙に突き出したまま止まっている。



返して。



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