第五十二魔導 噂話
次はいつになるのかな……(白目)
私自身、設定があやふやです。ごめんなさい
星が瞬く夜の世界で雷撃・火炎・水流などが色鮮やかに、その場を彩っていた。
もっとも今の状況はロマンチックの『ロ』の字もないけどな。
一つ、二つと敵の攻撃を避けながら紅と雷現を放つが、向こうも手練。そう簡単にあたってくれないか。
「くそったれ。めんどくせー事しやがって……今日こそぶっとばしてやる! 逃げられると思うなよ! 覚悟しろよ二極精霊!」
翼足で加速し、一気に懐に飛び込む。
今なら解かる。歪で禍々しい翼と爪を持つ、その体はきっと悪意によってできているのだろう。
怒りと哀れみを抱えながら俺は二極精霊の一対。闇の精霊と再び相対していた。
◇◆◇◆◇
遡ること一週間前。
文化祭も終わり、別の賑やかさを取り戻した魔導学園。俺たちも代わり映えのない毎日を過ごしていた。
今日も放課後の教室で、直登と剣呉と残って喋っていた。別に、寮に戻ってもいいのだが菜月と美緒を待ってなきゃいけないのだ。なぜ待ってるのかって? 簡単だ。あの二人が日直で今日一日の出来事を書いたノートを提出しに行ったのだ。その帰り待ちだ。
「しっかし」
直登の話はいつの間にか変わったらしく、俺を見てため息混じりに新しく会話を始めてきた。
なんだかすげぇ、失礼な感じがするぞおい。
「文化祭が終わっても何にも変わらなかったな。もう少しイベントが起こるかと思ったんだが、そんなものもないし」
「たしかにな。だがそれに関しては柊羽にも問題があるだろ」
「え? なに? いきなりのダメだし? ちょっと悪いんだけど何言ってるのか教えてくれない!?」
その答えは返ってこず、代わりにため息と哀れみの視線だけ返ってきた。
ガラッ、と音を上げながら開けられたドア。学園指定のクリーム色のセーターを着た菜月と美緒がいた。戻ってきた二人が俺たちの輪に加わり、別の話が始まった。
「あーもー、つかれた!」
「先生、職員室にいなかったもんね。あっちこっち探しちゃいました」
「それは難儀だったな」
「そーいえば、ここ最近になってよく聞く噂話知ってる?」
「あー、学園のあらゆるとこで変な魔力を感じた、とかだっけ?」
「そそ。でも先生も上級生も何も感じないって」
「で、話だと文化祭の活気に当てられた恨みや憎しみを抱いた幽霊たちが集まって、その怨念が魔力になって残留してるんじゃないかって」
「あ、あんまり不安にさせないで美緒ちゃん」
黙って聞いていた菜月はうぅ、と縮こまっていた。ごめんごめん、とぎゅーっとその体を抱きしめる美緒。
そーいえば美緒は幽霊とかはなんともなかったんだっけ。数ヶ月前の幽霊騒動。もとい闇の精霊のことを思い出す。ここ最近なにもしてこないから忘れてたけど、あいつらシュラたち五大精霊を狙ってんだよな。
「……ん? そーいや」
「なに」
抱きついたまま低い声音で菜月がこちらを見てくる。
「文化祭の最終日に俺と雪菜先生も変な魔力は感じたな、と思い出しただけだ」
「まじか?」
「おー。でも五大精霊は反応しなかったから、その時は気のせいだと思ってたんだがそ〜でもないのかもな」
「如月君……霊感あったりします?」
「ねーよ」
軽く菜月の額をデコピンする。
これ以上この話を続けると菜月が泣き出しそうなので、止めることにして、寮へと戻ることにした。
「ん?」
最後に教室を出た瞬間。柔らかな何かが、肌に張り付くような気持ち悪い感触を覚えた。振り返っても、あるのは椅子や机だけ。
「まじで霊感があったりしてな」
冗談交じりに呟く。
その気持ち悪い感触が前にも感じたことのあるものだと思い出すのには、まだ時間が必要だった。




