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魔導学園の頑張らない少年  作者: 暇な青年
第三章 文化祭
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第五十一魔導 文化祭五日目 終了……そして

 長かった文化祭も今日で最後。そのせいか昨日までの盛り上がりを遥かに超える盛り上がり具合に万年やる気なしの俺も少しはやる気になってたりしている。

 きびきび、とまでは言わないがそれなりに仕事をこなしていると一瞬魔力の様な物を感じた。しかしそれは人が持っている精神魔力とは何かが違ってるように感じ取れた。振り返ってみると満員状態の教室で直登や剣呉、美緒と菜月などが休む暇も無く働いている姿。


 「……気のせいか」


 三番テーブルに運ぶ料理を乗せたお盆を片手に小さく呟いた。

 魔力を感じたならシュラたちが反応するはずだし、俺の気のせいだろう。

 三番テーブルに料理を運び終え、バックに戻ろうとしたら、教室のドアから雪奈先生が俺を指さしして、手招きするのが見えた。


 「どうかしました?」

 「いや、ちょっとな」


 腕組みをし、カラになったお盆を体の横に持つ。背中をドアに預けて雪奈先生を見る。

 俺を呼んだ本人は何とも言えぬ表情をしていた。


 珍しいな。この人がこんな曖昧な返事をするなんて。


 何事かと考えていたら雪奈先生が口を開いた。


 「如月 柊羽。先ほど何かを感じなかったか? 例えば……異質な魔力とか」

 「異質かどうかは分かりませんが一瞬だけなら魔力的な物は感じましたよ。もっとも直登たちは気づいてない様子だし、五大精霊も何の反応も示さなかったので気のせいだとは思ったんですけど」


 五大精霊と口にするとき、お盆で口元を隠し、雪奈先生だけに聞こえる様にした。

 俺の話を聞いて黙った雪奈先生。


 「そうか。私とお前が感じたのは気になるが、五大精霊が反応しないならやはり気のせいなのかもしれないな。すまないな、文化祭最終日だと言うのに変な事を聞いてしまって」

 「いえ」


 そう言って雪奈先生は廊下に出て行った。人並みに消えていく後姿を眺めていた。






 ◆◇◆◇◆

 すっかり日も暮れ、一般客を入れた文化祭が終わりを告げた。もっとも学生である俺たちにはこれからメインイベントが控えているんだけどな。おかげで片付けは二の次で彼氏は彼女を、彼女は彼氏を呼びに、気になる相手がいる生徒はその子の下へと。そーいう約束は事前にやっとけっての。

 ん? 何を言ってるのか分からないって顔してるな。奇遇だな俺もだ。


 「いや~、まさか柊羽が文化祭のメインイベント。夜のキャンプファイヤーを知らなかった、なんて思いもしなかったぞ」


 どうも一般客を入れた文化祭は16時までで、18時から第一グラウンドで焚き火を囲んでキャンプファイヤーやるらしい。毎年やっているらしいが、去年の俺はそんな行事知らなかったし、くたくたになってたんで寮でぐっすり休んでた。


 「お前がいなかったおかげで菜月と美緒は去年不満げに俺らと踊ったんだぞ」

 「そうだったな。他の男子から誘われまくってたから、お前の代わりで踊ったんだっけか」

 「そこ! なに言ってんの!」

 「そ、そうですよ二人とも! たしかに他の男子に誘われて困ってましたけど、如月君と踊りたいとは一言も……」


 去年の文化祭を思い出しながら語る直登と剣呉。あー、俺がぐっすり休んでる間に面白いことがあったんだなぁ。

 つか菜月と美緒は何を真っ赤になって否定してるのやら。どうせ菜月は男が苦手だから、人畜無害の俺を。美緒は誰か一人を選ぶと悪いと思って、いつも一緒にいる俺を選ぼうとしただけだろ。


 夕日が窓から差し込み薄暗い教室をオレンジに染め上げる。教室内では俺たち以外にも数人いる。そのほとんどがキャンプファイヤーに誘う相手がいないのか、残った飲み物を片手に騒いでいる。

 俺たちも飲み物片手にだべっている。余ったお菓子などもあり、軽い打ち上げ状態である。しかしこの場にはうちのクラス以外の生徒も何人かいる。そう、凛姉と智香である。


 まぁ、凛姉とはあんなことがあったから目も合わせられない状態なんだけどね。ハハ……


 「さっきから凛姉と柊羽なんか様子変じゃない?」


 智香よ! なぜ今それを口にした!


 「ソ、ソンナコトハナイヨ。ネ、シュウ」

 「あ、うん。そうだね~」


 凛姉よ、いくら動揺してるからってそれは無いよ。長年一緒に生活してきた智香でなくてもそんな反応したら誰でも何かあったって考えるよ。


 「柊羽ぅ」

 「如月く~ん」

 「柊羽」


 いや、あのねお三方なんか怖いですよ。めっさ怖いですよ。目がマジなんですけど?


 「そ、それはともかくキャンプファイヤーだっけ? 皆は誰かと踊るのか?」

 「「「「えっ!?」」」」

 「え、じゃねーよ。魔導学園の美人姉妹の凛姉と智香。同じ学年だが男子から人気の菜月と美緒。それこそ男子生徒がほおっておくわけねーだろ? もしそんなかに意中の奴がいたらこんなとこで俺らと駄弁ってる場合じゃないだ……ろ…………あれ? なんか皆さん、さっき以上に目がマジなんですけど」


 「あーあ」 

 「口は災いの下、とはよく言った物だ。あ、直登。俺の分も取ってくれ」

 「はいよ」


 まるで何かから逃げる様に俺から離れていく直登と剣呉。しかもそれを誤魔化すように飲み物取りに行ってるし。凛姉の挙動もいつの間にか消えてるし。

 あら? 打ち上げで騒がしくやっていた他の生徒たちもいつの間にか消えてる。



 「柊羽くんはそろそろ気づいてくれてもいいんじゃないかな~」

 「そうですよね~」

 「如月君。私前にも『乙女心を勉強した方がいい』って言いましたよね?」

 「なんであたしはこんなやつを……」


 よく分からんがなんかヤバそうだ。俺も直登と剣呉の方へ……


 逃げようとしたその瞬間様々な色の光が教室を彩った。

 ちょっ!? なに魔導ぶっ放そうとしてるの!?


 「取り敢えず、いっぺん死んどけ」

 「そうだな」


 「おまっ──────」


 直登と剣呉の友達に向かって言う台詞とは思えぬ台詞に反論しようとしたが、女性陣のそれぞれの得意魔導が背後から俺を襲うのであった。


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