第五十魔導 文化祭四日目 直登と剣呉編
おひさしぶりです。
言うまでも無く、やはり内容が薄いです。はい
文化祭もついに今日を含めてあと二日。やっとこの大変さから解放される。そんな事を考えながらすることはやはり仕事だった。
「いらっしゃいませ~」
「そこっ! シャキッとする!」
指ささなくてもいいよ、委員長。
今日の天気は昨日と違い、灰色の雲が空を覆ってはいるが雨は降っていない。次々とやって来るお客に対応が追い付かない状況だってのは分かってる。分かってるんだが、
「忙しいのは嫌いなんだよなぁ」
ボソッと小さく呟いたそれは、誰に聞こえる事も無く消えて行った。しかたない、と自分に言い聞かせ俺は再びやる気が感じられない挨拶を口にするのだった。
◆◇◆◇◆
「今回の休憩は俺たち全員合ったな」
「そうだな。昨日までは誰か休憩してるときは、誰かが働いてたからな」
「ってことで、野郎だけで文化祭まわんぞ!」
「お~」
そんなこんなで直登に続く様に俺と剣呉は教室から出る。廊下は今日も賑やかで人の流れが多い。もはやこの光景にも慣れてしまった。
直登を先頭に一列になって人の流れをかき分けて進む。
「そーいや、どうだった?」
後ろを歩いてる剣呉が唐突に聞いてきた。俺は振り返る事無く、人波の向こう側に見える灰色の空を見上げる。
「どうって、何が?」
「おせっかいな忠告をしてやったろ? 昨日までの文化祭どうだった?」
あぁ、そうゆうことね。『恋愛』と言う名の青春は楽しめたか? と言いたいわけね。
灰色の空から前を歩く直登の背中に視線を戻す。直登はアレもいいな、腹減ったわ、など教室の前を通るたびに目移りしている。
「ん~……あれを青春と言っていいのか分からないが、楽しい文化祭だったな」
「……そうか、それは良かったな」
背後で微かに剣呉が笑った……と思う。なんとなくそんな気がした。
突然前を歩いていた直登の足が止まり、俺も止まる。何事かと思い、直登の視線を追ってみると一番の奥の教室には一枚の紙。
『カラオケ大会』
達筆な字とマイクと音符の絵が描かれた縦長の紙が椅子の後ろ側に貼られている。
「入るか?」
「え?」
「なんなら付き合うぜ……剣呉が」
キメ顔で言ったのが悪かったのか次の瞬間、後頭部から痛みが襲ってきた。何も殴らんでもいいやろ。後頭部を抑えながら振り返る直登に笑いかける。
「え? いいのか?」
「……珍しいな。いつもなら俺たちに構わず自由気ままに行動するお前が、今回は俺たちを気にするとは……文化祭最終日は大嵐だな」
「ぶっ飛ばすぞ!?」
胸の前で拳を作る直登。
「確かに剣呉の言う通りどうした?」
俺も剣呉の様にズバッとは言わないが自由気ままってのは否定しない。その直登が今日は大人しいと言うかなんというか、確かにここに来るまでに目移りはしても行動には移さなかったな。
「いや、その…………」
「うん?」
なぜか言い難そうな表情をし、頬を掻く直登。俺と剣呉は続きを待つ。
「こーみえて俺、カラオケ行った事ないんだよな」
「「……は?」」
「いや、正確にはあいつとは行った事あるんだが、それ以外の、まー友達とは言った事ないってことだ」
ここでいう“あいつ”とはおそらく幼馴染の彼女の事だろう。それはともかく、知らなかったな。直登が彼女以外とカラオケに行ったことないなんて。確かに言われてみれば誘った記憶も、誘われた記憶もねーし、他の誰かと行くところも見たことないな。
「なんだ直登。歌唱力自身が無いのか?」
「なっ!? ちげーよ! ただ……」
「ただ、なんだ?」
やはり恥ずかしいのか直登は頬を掻きながら窓から外の景色を眺めながら次の言葉を言った。
「お前ら、こーゆう事に興味ないと思って誘わなかったんだよ。柊羽は歌うのめんどくせぇ、って言いそうだし、剣呉も興味なさそうな感じしてたからさ。誘い難かったって言うか」
「…………ぷ!」
神妙な顔して何を言うかと思えばそんな事か。思わず剣呉と一緒に笑いをこぼしてしまった。
直登も笑う事ねーだろ、と恥ずかしそうにそっぽ向いた。
「あはは、わりぃわりぃ。いや、カラオケね。そうな、カラオケな……くくく」
「わ、笑いすぎだ柊羽……くく」
「おめーもだよ! たく、こんなことなら言うんじゃなかったぜ」
「そーいうなって。そーだな。なら今度菜月と美緒も誘ってみんなでカラオケに行くか。どっかの馬鹿が無駄な心配しないで済むようにな」
「賛成だ。俺も歌うのも聴くのも嫌いじゃない。音痴の歌以外ならな」
「俺見て言ってんじゃねーよ! 上等だ! 得点勝負しようじゃねーか剣呉! 買った方が昼飯一回分だぞ」
「いいだろ。その勝負受けよう」
おーい、俺を置いて話を進めるな~。いやまて。勝負事はめんどくさいのでやはりそのまま進めてくれ。しかし直登もバカだよな。別にカラオケぐらいいつでも行くっつのに。俺そこまでぐうたらに見えるのか?
二人のやり取りを放置しながら俺は首をかしげるのであった。




