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魔導学園の頑張らない少年  作者: 暇な青年
第三章 文化祭
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第四十八魔導 文化祭三日目 智香と凛編 中編

あ、あれ?おかしいな。前後編のはずが前“中”後編になってるぞ?

おかしいな~

 熱々の焼きそば片手に階段を上る、上る。二階から四階へ。

 四階──罫線三年生のフロアに出ると、やはりここも人が多い。

 さて、凛姉のクラスを探すか。まぁ、探すまでも無いだろうけど。


 階段から数歩前に歩き、右左と首を動かす。右は人通りも多く、どの教室にも均等に、いや、若干の差はあるがお客が入ってる。左も右と同じく若干の差はあるがお客が入ってる──のだが、一番奥の一つ手前の教室だけ他のクラスを圧倒してるところがあった。


 「あそこだな」


 本当、凛姉と智香を探すのは楽でええな。 

 手に持った焼きそばはやはり熱いままだ。教室に入る前に一番奥の教室を見てみると手前のドアには『3B 控室』と書かれた紙が貼られている。


 いらっしゃいませ~、と教室に入った時、透明感のある女性声が俺をお出迎え。

 で、ここはなんの出し物だ?


 入口のドアから見える範囲で教室を見渡す。

 手前のドアは塞がれていて入れない様になっている。奥のドアからしか入れない様になっていて、入ると目の前に受付? カウンター? レジ? どれが当てはまるか分からないが机二つ横に並べ、先輩(女子)が二人椅子に座っていた。そこまでは良いんだが……なぜ二人ともナースの格好を? これは突っ込むべきなのか?

 教室の角に置かれたミニコンポからゆったりとした音楽が教室内を流れている。

 で、先輩たちの後ろには四つの椅子が俺から見て縦に並べられ、お客であろう人たちが座っていた。

 最後に目を引くのがこれ。教室の後ろ半分をシャットダウンする真っ白なカーテンが天井から垂らされていた。


 なんだこれ? 教室の後ろ半分何にも見えねーじゃん


 困惑しながら受付……と思われる場所に座っている先輩に声を掛ける。


 「あのー……」


 「いらっしゃいませ。癒しの間“風水”へ、ようこそ」


 「……癒しの間?」


 「はい。ここは精霊の力と私たちの力でお客様に癒しを提供する場所となっております」


 ニコッ、と営業スマイルと分かっていても可愛い笑顔に目をそらしてしまう。先輩はピンク色の髪を長すぎず、短すぎずの長さで再び営業スマイル。微妙に首を傾けて、覗き込むようにしているのはワザとなのか?


 「精霊の力ってのは分かるけど、私たちの力ってのはどーゆう事ですか?」


 それに対してフフッ、と悪戯っぽく笑った先輩はただ一言。


 「それは入ってからのお楽しみ、ですよ?」


 「うっ」


 や、やばい。なんか──ヤバい!

 よく分からないが俺の中の何かが──


 そこまで来て分かった。中ではなく外だった。ディーネさんが威圧を掛けてますね。はい。

 姿は見せずこの威圧……姿現したらどーなってたことやら。つか、なんで怒ってんの?


 「あっと、それはまた今度で。実は凛姉──じゃなくて、藤原先輩います?」


 「あら? 凛に用なの? ……どういった関係で?」


 初めの挨拶以外、ずっと黙ってたもう一人の先輩が掛けてるメガネの縁に手を当てながら聞いてくる。見た目は黒髪で凄く知的な感じなんだが……メガネの奥の瞳には好奇心旺盛です私、って書いてありますよ?


 「えーっと、弟です。一応」


 「「えっ!?」」


 それに二人は目を見開き、同時に声を上げる。それに順番待ちしてるであろうお客も何事かとこちらに視線を向けてきた。


 「ほ、本当なの!? そんなこと初耳よ!」


 「いや、ちょっとまって葵! たしか私達が二年生に上がった当初、凛が一年の男子に抱きついたって事があったはずよ! まさか……」


 「そのまさか、ですよ。ははは……」


 そんな昔の事を引っ張ってこなくていいですよ。あれはある意味トラウマだったし。

 乾いた笑いが口からでる。


 「という事はいつも凛が言ってた男子が君なのか。ほーほー」


 いつも言ってた?


 「へーへー」


 何を?


 「「なるほどな(ね)~」」


 「あ、あの先輩方?」


 その最高に面白いおもちゃを見つけた、みたいな表情しないでもらえますか。なんかものすごく怖いんですが。

 メガネを掛けた先輩がメガネの縁を中指でクイッと押す。


 お、メガネをクイッ、てする人初めて見た。


 なんてよく分からない感動もすぐに消え、二人の表情は楽しそうに、悪戯っぽく笑う。それが可愛いとも恐ろしいとも取れる。


 「君、名前は──うん。如月 柊羽君ね。ちょっとこっちに来てもらいますよ」


 「ふぇ?」


 「おひとり様、VIPルームにご招待~」


 「はい!?」


 二人の先輩に拘束された俺は有無を言わさず、隣の『3B 控室』と紙の貼られた教室に連行された。

 中では休憩中の3Bの生徒(だと思われる人たち)がお茶なり、お菓子なり、買って来た食べ物を教室の後ろに集まって食べていた。そんな中に両サイドから拘束された俺が入ったんだ。中はポカーンと呆然としていた。

 が、右側に立ってるピンク髪の先輩が楽しそうに一言。


 「VIPルームにお客様でーす! 皆、準備して、準備」


 続いてメガネの先輩が。


 「それと誰か二人受付交代して」


 それを聞いた3Bの生徒たちはうぉぉぉぉ、となぜか分からんが叫ぶ。笑う。嫉妬の声が──え!?

 とりあえず、楽しそうに教室にいた半分が出て行き、もう半分は黒板の脇に机と一緒に置いてあったベッドを教室の中央に移動させた。ベッドは保健室などで使われてるようなベッドでだ。

 そして未だ状況が掴めないでいる俺をベッドに投げ入れた──うそぉ!?


 「ぶほっ」


 うつ伏せでダイブさせられた俺は、ほんの数秒世界が回って見えていた。その間に二人の先輩は俺を仰向けにし、両手両足をベッドの縁に手錠を掛けた。


 「はいぃぃぃ!?」


 「じゃ、ちょっと待っててね~」


 「そうそう、もし無理やり壊して逃げたら……お姉さんたち怒るからね?」


 いや、そんな殺気を混ぜた笑顔で言わないで。

 ばいば~い、ともうダッシュで教室から出て行った。ご親切に鍵まで掛けて。


 こうしてベッドに拘束され、一人となった教室で俺は口を引き攣らせて待つのだった。


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