第四魔導 寮が豪華すぎる
午後は丸ごと実践授業と言うわけであの後、俺は直登と一対一し、剣呉と菜月のペアと戦闘。最後に剣呉と組んで美緒と直登ペアと実践授業を終え、今は寮の部屋にいる。以前言った通り、魔導学園に在籍している生徒と教職員は皆、寮生活である。それも男子としては嬉しい男女混合の寮である。さすがに教職員は別の寮で生活しているが。
そんな中、四〇二号室で直登、剣呉と一緒にベットの上からテレビを眺めていた。
ここ四〇二号室は唯一の三人部屋と言うだけあってかなり広い。他の部屋は二人部屋のため、ベット二つとキッチン(冷蔵庫あり)、狭いシャワールームとトイレ。それと小さいテーブルと椅子、最後にテレビが備わっている。これでも豪華な方だが、ここは違う。ベット三つに、それを並べてもまだ余る広さ。加えて、キッチンに結構デカい収納棚。テーブルと椅子もあり、打って付けは薄型の大液晶テレビと二人部屋と比べると少し広いシャワールームが備わっている。
生徒によっては金を払っても住みたいだろう
ちなみに寮は15階まであり、どの階にも向かい合うように部屋が八つ存在している。1階にはフロント、食堂さらには大浴場がある。大浴場とは男風呂、女風呂に分かれており、夜の時間ではこちらの大浴場を使う。
部屋のシャワールームは朝入りたい、軽く汗をかいたから流したい、って時に使う。
そんなこんなで時刻は七時と言うわけで俺たちは一階の食堂へと足を進めるのであった。
◆◇◆◇◆
「……お前らと居ると静かに飯食べることできないよな」
スプーンを口に銜えて両隣と向かい側に座っている直登たちに言うと苦笑が返ってきた。
食堂の端っこの席で夕飯を食べているのだがどこを見てもこちら……と言うより俺意外に熱い視線が集中していた。もっとももう慣れたことだが、たまにはゆっくり静かに飯を食べたいものだ。
「で、なんだっけ? 大事な話がどうとか」
味噌汁を啜りながら美緒と菜月に視線を向けた。先ほど食堂に入ったら二人にそう言われたのだ。
「柊羽……明日、本気であたしたちと戦って」
「……は?」
食べ終えたお椀を重ねていた手が止まり、そのまま俺の視線は二人へ自ずと向いてしまう。
それもかなりマジなようであちらも真剣な眼差しで返してくる。
はぁ……一応、これでも頑張ってきたつもり、なんだけどねぇ。
「あたしたち……と言うことは二人とか?」
「いや、俺たちもだ」
俺は予想外の方向からの返しに面喰ってしまった。
どーやら、直登と剣呉も俺と戦いたいって奴ね。まったく、俺はお前と戦いたい───って、どこの漫画だよ。
「あらら、直登も剣呉もどーしたん? いつもなら言わないのに」
「いやぁ、魔導師として強い相手と手合せしたいと思うのはいけない事なのか?」
直登はデザートのストロベリーアイスをスプーンですくい上げ、それをこちらに一旦向けるとパクリと口に含んだ。剣呉も何も言わないが多分同じ理由なんだろう。
あっ、魔導師ってのは魔導を扱う者をさす。
魔導師にも種類があって下から下級・中級・上級魔導師となっている。さらにこの上級魔導師を超える魔導師ってのが極級魔導師と呼ばれ、現在世界で3人しか認められてない。そのうちの一人が女性であることも驚きである。
余談だが魔導実習などの時に使われている結界を壊すことが出来れば極級魔導師と同等の実力を持っている、と考えた方が良いな。
「……」
これははぐらかせる状況じゃないよな……あんな思いはしたくないんだけどな……
脳裏によみがえってくる子供のころの記憶。
ハッキリ言って思い出したい記憶じゃない。俺は直登と剣呉とは中学からの付き合いだがそれ以前が、な。
そーいや、菜月と美緒とはこの学園に入ってからの付き合いか……意外と短いんだな。
「分かった。ただし、時間は朝の人がいない第三グラウンドで」
渋々了承したのだが、それは口にした瞬間後悔することになった。両隣の直登と剣呉は明日が楽しみだ、と言わんばかりの鋭い視線。向かいの席に座っていた美緒と菜月はやったね、と互いの手を取り体を密着して喜ぶ。
これの何が悪いのか? と普通なら思う。いや、こいつらが喜ぶことは別にいいんだ、問題は……
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」
周りの生徒だよ。お前らただでさえ二学年で人気なんだからそんなイケメンフェイスをこんな場所で見せるなよ。女子なんか黄色い声を出して、男子なんて美女が二人体を密着させてる図を見て……鼻血出してる。
俺はややカオスとなった食堂を早々に立ち去るのであった。