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魔導学園の頑張らない少年  作者: 暇な青年
第三章 文化祭
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第四十七魔導 文化祭三日目 智香と凛編 前編

おぅ……今回も一話でさっさと終わらせるつもりが前後半になってしもた。

 文化祭三日目。今日も学園は賑わいを見せてはいる。が、昨日、一昨日とは違うところが一つ。

 お盆片手に窓を眺めると、びしょびしょに濡れている。さらに窓の外へと視線を向けると、どんよりとした厚い雲に覆われ、一向に止みそうにない雨が降り続いていた。


 「さすがに雨だと一般客は少ないな」


 店内を見渡すと昨日、一昨日と比べると一般客が少なく、在校生が多い。それでもやはり、先ほど言った通り学園は賑わっている。

 こっちとしては客が少なければ少ない程やることが少なくて楽なんだけどな。


 「しゅ~う~、そろそろ三時だし休憩して来いよ」


 「お、もうそんな時間? 真面目に仕事してると時間が早く感じるわ」


 「そーゆう台詞は俺たちの様に必死に仕事してから言え」


 「へ~い……って、まるで俺は必死に仕事をしてないみたいな言い方しないでくれる?」


 これでも俺的には結構頑張ってんですよ? ぶっちゃけ、文化祭始まって今日が一番働いてると思うね。


 「わりぃわりぃ」


 一ミリも悪いと思って無いだろ。お前。

 別にいいけどさ。


 「それじゃ、俺は休憩してくるよ」


 「おー」


 文化祭始まってからまだあの二人に会ってないので、今日は会いに行ってみるか。

 雨雲に覆われた外をエプロンを外しながら眺め、教室から出ていく。






 ◆◇◆◇◆

 階段を下り、二階に下りるとやはりここも賑やかで、廊下に人の波が右から左、左から右へと流れている。で、階段前から各教室の前ドアの上に付いているネームを見て、智香の教室を探す。


 今思ったけど、智香は何組だっけ?


 額に拳を当て思い出そうとするが思い出せん。仕方ない、一組づつ探してくか。めんどくせ──ん?


 一組づつ探して行こうとしたが、一番奥の教室だけ他の教室と比べて人が多い。多分智香の教室だろう。こーゆう時、人気者は簡単に探せるな。

 一番奥の教室に向けて人並みに逆らわないよう、流れに任せて奥の教室へと足を進める。途中、他の教室の生徒が、たい焼きいかがっすか? とか、たこ焼きうまいで~、とか呼び込みが聞こえたが振り向くだけで脚は止めない。


 さて、智香の教室(と思われる)に入ると、ソースの匂いが鼻腔をくすぐる。どうやらここは焼きそばを売っているようだな。文化祭と言えば定番商品だな。


 微妙に開けてある窓の付近で借りてきたであろう鉄板を使って三人の男子が必死に焼きそばを作っている。その横では数人の女子が売り子としてパック詰めされた焼きそばを売っている。その数人の中に探してた女子が混じっていた。


 「…………」


 本当、同い年の女子と並ぶと小せえし、童顔だな、智香の奴。

 隣りの女子と比べて見ると頭一つ分程低い。それでも見た目とは対照的で実力は学年トップとは恐れ入る。


 容姿と実力に振るポイントでも間違えたんじゃねーか?


 焼きそばとデカデカと書かれた黒板を見ながら、そんなバカなことを思ってしまった。

 そろそろドア前から動こうとしたとき、売り子の方から、あ! と驚いたような声が聞こえた。声の方へ視線を向けた。

 しまった、と言いたげな表情をサッと隠し、何でも無いよと言いたげな表情で手を振って挨拶する智香。それに手を振りかえす。


 「焼きそば一つ」


 教室内は鉄板の置いてある場所以外は買った焼きそばをすぐ食べてもらえるよう、机を並べて一つの大きなテーブルにしてる。座って食べてる生徒も焼きそばを待っている生徒も殆ど智香が目当てで来ているようだ。

 それらを避ける様にして智香の前に行き、金を渡す。


 「ありがとうございます。今新しく作り始めたから少し待って貰えますか、柊羽」


 ストックしてあった焼きそばは少し前に売切れたらしいな。となりで必死こいて作ってる男子からは、ストックが無くなったぞ、と慌ててる。ご苦労様です。


 「おう。焼きそばはついでだったし問題ない」


 「ついで?」


 「おう、ついでだ」


 受け取った金をプラスチックの入れ物に納めながら智香はチラッとこちらを見てくる。

 智香の左右で売り子をしていた女子は智香ちゃんの知り合い? と智香の後ろでコソコソと会話してる。


 「ほら、文化祭入ってから智香や凛姉と会って無かったから、顔出そうかと思ってな」


 「それって……私に会いに来てくれたってこと……?」


 「その言い方だと恥ずかしいが、まぁ、そのとーりだ」


 鉄板で焼かれる焼きそばを見ながら俺はそう言った。しかし、鉄板の熱気がこっちにまで飛んでくるな。それに焼きそばって数人前を一気に作ると重たいんだよな。

 ん? なんか目の前から鉄板とは別の熱が……。

 

 「うぉっ!? ち、智香?」


 鉄板から視線を戻すと茹でダコの様に真っ赤になって、今にも頭から湯気がでそうなほど智香が目の前にいた。口も何か呟いてるが小さすぎて何を言ってるか聞き取れない。口の動きから同じ言葉を繰り返してるようだが。

 後ろでコソコソと会話してた女子も、智香ちゃん!? と慌てて肩を揺さぶったり、声を掛けたりしている。そらもう必死に。


 「お客さん。お待たせしました。出来立て、熱々の焼きそばでーす! 気を付けてくださいね」


 「あ、ども」


 鉄板で焼いてた男子が売り子が渡せる状況じゃないってことを察したのか、渡してくれた。

 う~ん、もう少し智香と話したかったがこれじゃ無理だな。凛姉の方に行くか。


 売り子の女子二人に智香の事を任せて、俺は焼きそばの匂いとお客で一杯の教室を後にする。その時、後ろから大きな声でありがとうございました! と聞こえた。


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