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魔導学園の頑張らない少年  作者: 暇な青年
第三章 文化祭
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第四十六魔導 文化祭二日目 麻美と雪奈編

本当は「菜月と美緒編」やろうかと思ったがさっさと次行く!


今回の後半部分は柊羽の視点から○○の視点に変わりますで!

 「いらっしゃいませ~!」


 元気な挨拶で文化祭二日目の第一号お客様を迎える直登。

 それに続く様に次々とお客の波が押し寄せてきた。ウェイターである俺たちは急いで接客を始める。


 「ご注文はお決まりでしょうか?」


 お決まりの台詞をほほ笑みながら言う剣呉の姿にクラッとする女子生徒や、


 「ご注文がお決まりになりましたらおよびください」


 丁寧にお辞儀をし、ニッコリと天使の様にほほ笑む菜月の笑顔に男子生徒は全員ノックアウトしてたりと、二日目始まったばかりだが、順調な滑り出しだな。


 「そこのボケッとしてる、気の抜けたウェイター。注文を頼みたいんだが」


 「んぉ!? すいませんでした、お客……さま…………」


 自分でもボケッとしてる気の抜けたウェイター、に反応したことをどう受け止めたらいいのやら。

 振り返ってみると一つのテーブル(二つの机を合わせた簡易的な物だが)には俺の良く知る女性が二人座っていた。

 一人は薄茶色したセミロングの麻美さんだ。大変そうね、との一言に、俺は頷いて完全同意。

 で、その麻美さんの向かいの席に脚を組んで座っている紫髪の女性。俺に対して酷い物言い(いや、俺的には何とも思って無いけどな)をしたこの人は、詫びれる様子も無く鋭い視線が俺を貫く。


 「何してんですか、雪奈先生」


 「バカかお前は。客が店員を呼ぶってのは注文するか会計するかだろ」


 いや、他にも呼ぶ理由はあるでしょうよ。まぁ、口答えするとめんどくさそうだから言わないけどさ。


 「そーですよねぇ。えっと、それじゃあ、ご注文をお伺いします」


 エプロンのポケットからメモを取り出す。それを確認してから麻美さんがミルクティーを頼んだ。つづいて雪奈先生がコーヒーを頼む。

 メモった注文を繰り返す。


 「以上でよろしいでしょうか?」


 「そうだな……ついでにお前を注文する」


 「はい。追加で俺を……ん?」


 メモに走らせたペンをピタッと止める。

 聞き間違えたのかな? と、俺は雪奈先生を見るが、雪奈先生は麻美さんとお喋りを始めてしまっていた。横目で麻美さんを見てみるが、困った表情をしながら雪奈先生とのお喋りを続けている。


 どーすっかなぁ


 手にあるペンで頭を掻くのだった。






 ◆◇◆◇◆

 委員長に事情を離し、俺だけ少し早めに休憩に入った。

 エプロンを脱ぎ、注文のコーヒーとミルクティーをお盆に乗せ二人の席へと向かった。


 「おまたせしました~」


 「それが客に対する言葉づかいか?」


 「今から休憩時間なんで」


 「ごめんに柊羽君。涼子ちゃんが無茶言って」


 困った顔で謝ってくる麻美さんに大丈夫ですよ、と一言。 

 さて、どこかに余った席はないものか。

 このテーブルは椅子が二つしかないので俺は立ったまま視線を教室のあちこちに向けた。教室の隅に余りの椅子が重ねられておいてある。俺はそれを取って、二人の間に座った。


 「こら麻美。まるで私が無理やりこいつを呼びつけたみたいな言い方をするな」


 「え~、今のはどう見ても涼子ちゃんが無茶言って柊羽君を呼んだ風にしかみえないよ~」


 お~、やはり親友だな。他の先生なら雪奈先生にそんな事言わねーだろうし。てか、言えねーだろうな。ただでさえ極級魔導師ってだけで他の先生は怯えてるしね。


 まぁ、見た目は教師、生徒合わせても学園一と言っても過言ではないと思うよ。

 と、楽しそうに笑っている雪奈先生を見て思う。


 「で、どうだ? 美人なお姉さんを二人も独占しているこの状況は」


 あー、自分で言っちゃいます? それ?


 確かにチラチラと周りからの視線が、ね。麻美さんは他の男性教師陣に人気だし、厳しく怖い雪奈先生も何だかんだ言って男子生徒から見れば綺麗なお姉さんだもんな。

 けど、俺はこの視線に対しては何も感じてないなぁ。だって、今まで二学年の美男美女と一緒に行動してきた時や、凛姉と智香と一緒に行動してた時も視線の雨だったしね。今さらどーという事はない。


 「そりゃ、まぁ、嬉しいですよ。美人なお姉さんが二人もいるなんて……これが両手に花ってやつですかね?」


 「そうだな。周りの男性の羨み、妬みの視線をお前を貫いてるな。で、正直に言ってどちらの花を手に入れたい?」


 あー、やっぱり視線には気づいてたのね。麻美さんは何を言ってるの、って顔してるけど。 

 それと後半の質問は一体どーうゆ意味でしょうね?


 「ここにきて意味が分かりません、なんてつまらない台詞は無しだぞ。如月 柊羽」


 「…………」


 んー、困ったなぁ。たまーに雪奈先生って無茶な質問してくるんだよな。だが、今日は逃げ切れる自信がある。なぜなら、隣には麻美さんがいるからね。

 という事で、さっそく麻美さんに助けを求める。


 「……麻美さん、雪奈先生を止めてください」


 「ん~、私も柊羽君がどの花を手にしたいのか気になるな~。あ、別にここに無い花でもいいわよ?」


 「へっ?」


 あれ? いつもなら助けてくれる優しいお姉さんの麻美さんが助けてくれない……だと!?


 「ほう、やはり他の花にも目移りしてるのか。如月 柊羽」


 「うん?」


 「柊羽君?」


 「如月 柊羽?」


 「…………」


 あのぉ、目が怖いんですけどお二方。

 雪奈先生は目に殺気が籠ってるし、麻美さんには殺気は籠ってないけど、何か別の物を感じる。いや、本当にそんな物があるかは分からないけど。


 とりあえず、ここで俺が取る行動はただ一つ!

 時計を見て──


 「あぁ!? モウコンナ時間ダ。ハヤク仕事ニ戻ラナイト」


 ──全速離脱!


 若干、片言で棒読みっぽかったが気にせず、じゃ、と挨拶も手短に俺は椅子を持って席から逃げる様に離れる。

 後ろから二人の怒った声が聞こえてきたような気もするが今日は無視して、全力で逃げる!






 ◆◇◆◇◆

 柊羽君が席を離れてすぐに涼子ちゃんはつまらなさそうに、それと同時に意外そうな表情で言葉を吐いてきた。


 「ちっ、逃げたか。それにしても麻美まで乗って来るなんて……やっぱあんた──」


 「ちょっと面白そうだったからよ」


 そう。面白そうだったから、からかった。

 そのつもりだったのだけれど、なぜか残念がっている自分に私はやっぱりそうなのかな、と考えてしまう。


 やはりそう思ってしまうのは少し前、そう。私と柊羽君が初めて会ったときの事がきっかけなのかな?

 初めて出会った時の事を思い出して私はクスッと笑ってしまった。

 それを不思議そうに涼子ちゃんは聞いてきた。


 「どうかした?」


 「ううん。ちょっと思い出し笑いしちゃって」


 「麻美が思い出し笑いって……一体何を思い出したの?」


 「おしえな~い」


 「麻美~」


 必死に聞き出そうとしてくる涼子ちゃんに秘密、と悪戯っぽく私は笑う。

 そうね、私と柊羽君の出会い話は──いつか教えてあげるかもね。


 私はもう一度クスッと笑うのだった。


昔話は……そのうちやるよ。うん。

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