第四十五魔導 文化祭一日目 菜月と美緒編
なーんかキャラと文章が安定しない
つか、文化祭編長くなりそうだわ
雲一つ見えない晴天の中、全校生徒が楽しみにしていた文化祭一日目が始まった。
どこの教室からも客を呼ぶ声が聞こえ、外のグラウンドや体育館からは演奏が聞こえてくる。
いつも見慣れ、歩きなれた廊下も今日だけは別物に見えるな。
一般のお客と生徒の波が絶えず進んでいる中、俺は教室のドア枠に背中を預けるようにしながら廊下を眺めていた。
教室内は、と言うと──大盛況である。
ま、分かってたことと言えば分かってたことなんだけどな。二学年で美男美女と呼ばれる直登・剣呉・菜月・美緒がそろってウェイターやってるんだ。呼び込みなんてしなくてもお客は来るだろーに。
「おい、そこのサボり。さっさと手伝え!」
「ん? 俺の事か?」
「エプロンつけて、そんなとこでボケーっと廊下眺めてんのはお前しかいねーだろ!」
「そらそーだ」
そう言って俺は下を向く。制服はいつも通りだが、その上に俺──と言うかウェイターの連中は黒のエプロンを身に着けているのだ。
いらっしゃいませ! と満面の笑みを浮かべ接客に戻っていく直登。
「……はぁ、しょーがないっちゃ、しょうがないんだけど……めんどくさいな」
素直な気持ちを素直に言葉にしながらドア枠から背中を離し、接客に戻っていくのだった。
◆◇◆◇◆
「それじゃ、アンタたちも休憩入っていいわよ」
文化祭が始まって早三時間が経っていた。
委員長から休憩の二文字を聞いた俺はやっとか、と息を吐いた。
「さてと……なんで二人一緒なんですか?」
エプロンを取り、ワイシャツの閉めていた第一ボタンを外し、襟元に手を掛けながら、同じくエプロンを外した美緒と菜月が目の前に立っていた。
直登と剣呉は俺たちの前に休憩を取ったため今は接客の真っ最中だ。さすがにこの四人が一遍に抜けたら売り上げが落ちるだろうしな。
「なんでって、柊羽が言ったんじゃない。デートしよって」
「ぶっ!? ……お前な、一緒に文化祭回らないか、って言っただけだろ」
「それを世間的にはデートのお誘いだと思うんだけど……まぁ、いいわ。で、なんで菜月と一緒かって事でしょ? それは菜月があんたと二人っきりだと恥ずかしいから、あたしの時と一緒にしてほしい、って頼まれたのよ」
「ちょっ! 美緒ちゃんそんなハッキリ言わないでよ!」
リンゴの様に顔を紅くして美緒の背中をポカポカと叩く菜月の姿を始めていた。こりゃ、そーとう恥ずかしがってんだろうな。つか、恥ずかしいなら無理に付き合ってくれず、断ってくれればいいのに。菜月が男性を苦手にしてるってのは知ってるし。
「そ、それはダメです!」
「あれ? 口に出てた?」
「いえ。でも如月君の考えてることは何となく分かります。どうせ断ってくれてもいいのに、とか思ってるんですよね」
「お、おう。よく分かったな」
菜月は超能力者だったのか。と、冗談をおもってしまった。
「そんなわけで今日は二人、一緒に相手してもらうわよ。もちろん嫌とは言わせないわよ」
「別に嫌なんて思ってねーよ。んじゃ、休憩時間には限りがあるし、さっさと行くか」
「はい」
「ええ」
右に菜月、左に美緒となぜか挟まれた状態で廊下に出た──いや、出ようとしたんだが人通りが多すぎる。
どんだけいんだよ、まったく。
「おー、見事に離れそうな廊下だな」
笑いながら廊下に一歩出ようとした瞬間、両手首を何か柔らかい感触に掴まれた。振り向くと右手首を菜月が、左手首を美緒が握っていた。
……え? なに?
数回、瞬きをしてから二人を見た。どちらも明後日の方角に顔を向けているが、さっしなさいよ、と言いたげな表情をしてる──ように俺には見えた。
「えーっと……はぐれない様に手でも繋ぎます、か?」
疑問形で聞いてみるとやはり明後日の方角を見ながら頷く二人。
その仕草が妙に可愛く、クスッと笑ってしまった。
「さーて、どこ行くか」
はぐれない様にしっかりと手を握って教室から出ていくのであった。
ちなみに今のやり取りをクラスメイトや周りの生徒たちが見ていたってことを知るのは文化祭一日目の夜。寮に戻ってからだったが、それはまた別の話である。




