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魔導学園の頑張らない少年  作者: 暇な青年
第二章 闇の精霊強襲
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第四十一魔導 乱鎖玉輪

智香の創具の名前を変更しました。


今回の内容はなんというか……投げやり感が半端ないです。すいません。

 乱鎖玉輪らんさぎょくりんと呼ばれる智香の創具は依然として俺を囲むように宙にぷかぷかと浮かんでいる。少しの間、俺は智香へと目を向け向こうの出方を待っていると右手の指に挟んで持っていた半透明な玉を腕を振り抜きながら投げてきた。


 が、


 「どこに向けて投げてるんだ?」


 指に挟まっていた四つの玉は俺に、ではなく明後日の方向に向かって投げられたのだ。

 俺に向かってこないなら、こっちから行かせてもらう。


 「紅蓮」


 発動直前にしていた魔方陣を放つ。

 炎は射線上の半透明な玉を呑みこみながら直進するが、それを跳躍して避ける。空中に跳んだ智香は両手を胸の前で交差させた。


 「あっ! いつのまに玉を」


 胸の前で交差させた腕、その手の指の間には半透明な玉が挟まれてた。それも今度は片手だけではなく、両手に。

 あいつ、跳んだ時に新たに召喚したのか。


 智香は器用に空中で回転しながら手榴弾をまき散らすかのように指に挟んだ玉を乱射する。だが、これも俺に目掛けてではなく、明後日の方向にだ。


 「まったく、どこに投げてんのやら……ん?」


 着地を狙って魔導を放つか、そう考えた時だった。俺の耳に何かが通過する音が聞こえた。何て言うか……そう、まるで銃弾が耳元を駆け抜けて行ったかのような風を切る音。


 「柊羽。私から一つ忠告してあげるわ」


 そう言いながらスタッと着地する智香。音に気を取られてたわ。


 「ん?」


 音も気になるが、まずは智香の忠告とやらを聴くのが先決だ。そう考えて降り立った智香を見る。そして気づいた。いつの間にか俺の周りに浮いていた半透明な玉……乱鎖玉輪の数が減っていたことに。


 「そこから動かない方が身のためよ」


 智香が喋っている間も俺の耳には何かが風を切り裂く音が入ってくる。それも一つではない。知らないうちに鎌鼬でも使ったか? あれなら目に見えず、風を切り裂いて迫ってくるし……

 だがそれならおかしな点がある。鎌鼬なら相手に向かって撃たなければ意味が無い。あれは風の刃、だからな。そしてなにより鎌鼬は風魔導……あいつは風精霊とは契約してないから使えない。


 「という事は」


 「我、契約図を描き、此処に招来す──────」


 「この風を切るような音は──────」


 「鞭火師むちびし


 「乱鎖玉輪か!」


 シュン、シュンと今も風を切る音の正体は分かったがそれ以上の事が分からず、智香の手には炎の鞭が握られていた。それを一回、上に振り上げ、勢いよく振り下ろしてきた。

 上からの直線攻撃に身体を横に逸らし、簡単に避けてみせる。が、直後背中から痛みが俺を襲った。


 「ぐっ!?」


 激痛が走った場所に手を当てる。

 いってぇ! 一体なにが──────


 「うおっ!」


 目の前から弾丸の様に半透明な玉が急接近してきたので横っ飛びで避ける。

 よく耳を澄ませてみれば風を切る音以外にもぶつかり合う音も聞こえる……まさか最初に投げた球が空中に浮かんでた玉にぶつかって乱反射してるのか!?


 「しかも高速で……はぁ、室内では戦いたくない相手の一人だな」


 そーいや、同じ結界内にいる先生は……さすが先生。隅っこに移動して防御魔導で身を守りながら観察してるよ。


 「はいはい、よそ見はいけないよ柊羽」


 外から内に円の軌道を描きながら迫る鞭をバックステップで回避。つづけて乱反射する玉をギリギリで回避する。


 「ムッ! なら、これはどう?」


 そう言って智香は新しい玉を一つ召喚した。

 ん? あの玉……他の玉と違って色が付いてるな。


 新たに召喚された玉には水色で傍から見るとビー玉そのものである。それを親指で弾いた。弾かれた水色の玉は乱反射している玉とぶつかり、次の瞬間、壮大な音を響かせ爆発した。


 「んなっ!」


 爆発と言ってもそれほど威力があるわけでは無いだろうが、それでも下級~中級魔導ぐらいの威力はあるだろう。しかも厄介な事に水色の玉と半透明な玉がぶつかり、水色が爆発した。そして水色とぶつかった玉が他の玉とぶつかるとその玉も爆発していく。


 はぁ、つまり半透明は元々爆弾で水色が爆弾兼起爆スイッチな訳ね。ぶつかると爆発。ぶつかると爆発……なんだよこのループ。


 そんな事を唖然として見ているうちに俺の真後ろでいくつかの玉がぶつかり合い、一瞬だけ光ると、連続して小さく爆発した。


 その後の記憶は見事に無くなっていた。






 ◆◇◆◇◆

 目を覚ましたら真っ白な天井が視界を、薬品独特の匂いが鼻を、静かに、されど振り続ける雨の音が耳を埋め尽くした。どうやら俺は保健室で寝ていたようだ。


 「雨が降ってる」


 近くの窓に視線を向けると雨雲に覆われ、暗くなった外だった。保健室に飾られている四角い時計を見上げると時刻は5時を過ぎていた。


 「お~、4時間ぐらい寝てたのか」


 智香との試合、もう少し戦えたと思うが爆弾はなぁ……予想外すぎだ。いや、でも最初『触れたら爆発しないよな』的な考えもあったし……まぁ、ええわ。智香が強いってことも再認識できたしお兄さん満足よ。


 一人で勝手に満足しているとガラっ、と保健室のドアが開く音。チラッと見てみると直登たちだった。


 「おっ! 起きてる起きてる」


 「大丈夫か?」


 ベッドに近づいてきた直登と剣呉。その後ろから美緒と菜月、そして智香も傍に寄って来た。


 「まったく、寝すぎじゃないか柊羽」


 「ふふっ、そんなこと言って美緒ちゃん心配してたよね」


 「なっ!? それなら菜月だって!」


 なんか菜月と美緒が喧嘩(?)を始めたがどーせすぐ収まるだろうし放置しよ。何より口出しするととばっちりが来そうなんで勘弁。


 「あの、柊羽……」


 「おう、智香。強くなったなぁ。俺も結構マジでやったんだぞ~」


 このこの、と智香の頭をナデナデしながら褒めたら、なんか黙ったぞ。取り敢えずなんか言ってくるまで撫で続けるか。

 すると徐々に智香の顔が赤くなっていき、次の瞬間壊れたPCのようにボンッ、と音が……する訳ないんだが聞こえた気がする。


 「お前……」


 「試合で負けたからって仕返しが……何と言うかエグいな」


 「ん? 別にそーゆうつもりでやってる訳じゃないんだが。つか、エグいってなんだ、エグいって! ただ褒めながら撫でてるだけやろ?」


 それを聞いた二人は大きくため息をつき、喧嘩(?)していた菜月と美緒もジーッと何か言いたそうな目をこちらに向けていた。


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