第三十八魔導 極級魔導師
あけましておめでとうございます。
今年もゆっくり投稿していきますので、よろしくお願いします。
その日の夜、寮の部屋に戻った俺は雪奈先生の事を直登たちに話した。
「ほぉ、あの先生が世界に三人しかいないって言う極級魔導師なのか」
「そーいや、三人の内一人だけ女性だって噂も聞いたことあったしなぁ」
直登と剣呉は口元に手を当てうんうんと頷き、次の瞬間
「一度、試合してみてぇな」
「一度手合せ願いたいな」
と同じタイミングで口にした。
この戦闘狂め。
「でも、そんな凄い先生が今まで学園にいなかったの? あたし一度も見たことないし」
椅子の背もたれを前にして座っている美緒。
確かに俺も一度も見た事ねぇな。入学式や卒業式でも見たことないし。
「それは多分……」
「ん? 知ってるのか菜月」
ベッドの上にちょこんと座っていた菜月が人差し指を顎に当てながら何かを思い出すように口を動かす。
「他の学園に特別講師に呼ばれたりしてるんだと思う。昔、お父様にそんな話を聞いたことあったし……」
「特別講師?」
「そーいえば、そんな話もあったな」
剣呉も思い出したかのようにそう言う。
俺や直登、美緒は何を言ってるのか分からず、補足を待つ。それを察したのか剣呉は頷いて続きを語り始めた。
「極級魔導師ってのは世界最強の魔導師に与えられる称号だ。その極級魔導師の一人がここ、魔導学園で働いてる、となるとどうだ?」
「どうだって言われても……俺たちとしては最強の魔導師の実力を間近で感じられるし、運が良ければ手合せもできる。最高だな」
「そうだな。だが他の学園からしたらそれはズルい、なんて事になる。簡単に言えばな。だからどの学園でも極級魔導師の実力を肌で感じるために極級魔導師である先生は各学園に特別講師として呼ばれるんだ」
はぁ、そんな事情があったんか。それなら今まで雪奈先生を知らなかったのもしょうがないな。
「でも極級魔導師は三人いるんでしょ? だったら雪奈先生以外の二人も各学園を回ってるの?」
「いいえ、美緒ちゃん」
美緒の疑問には菜月が答えるようだ。
俺は黙って菜月に目を向ける。
「残りの極級魔導師はそれぞれ北と東、西と南にいて、国を守る騎士団の監督をしたり、直々に国王を守ったりしてるのよ。詳しいことは分からないけどね」
……なるほどね。他の極級魔導師もそれぞれ仕事があるのか。
「あれ? 極級魔導師って三人以上に増えたことあったっけ? それとも三人だけって決まってる……訳ないよな」
「私達が生まれる前なら合ったけど、現在では四人目の極級魔導師はいないわ」
「そらそーだろ。極級魔導師になるには色々と大変だし」
「……直登知ってるのか?」
「……お前、魔導師は誰でも極級魔導師目指して頑張ってんだからそれぐらい知っとるわ」
……やば、知らんかったわ。昔はそうだったが、今に極級魔導師になりたいわけじゃないし。それに今の話聞いたら大変そうだしな。俺はめんどくさいのはごめんだ。
「仕方ねぇ、柊羽のために極級魔導師になるにはどのぐらい辛いかを教えてやるよ!いくつか条件が合ってな、まず上級精霊三体以上と契約している者。そして下級・中級・上級魔導を扱える者。そして精神魔力が15000以上! どうだ? やべぇだろ?」
めっちゃどや顔してる直登なんだが、部屋の中はめっちゃ静まってるよ。
「……直登。柊羽、五体の精霊と契約してるぞ」
「直登ぉ、五大精霊契約してる柊羽なら上級なんて余裕だろ? てか、撃ってたし」
「鋪原くん、如月君の魔力20000だけど……」
俺の台詞を一つずつ言ってくれて感謝するよ、お前ら。だけどな、直登のやつショックで床に蹲ってるぞ。
「そうじゃねーか!てめぇ、今すぐ極級魔導師になってこいよ!!!」
「おまっ!? 起き上がったと思ったらいきなりそれか! 大体、本当にそれだけでなれるのかよ? 意外と簡単じゃねーか! ……魔力以外」
「てめぇぇぇぇぇぇ」
「うわっ! ばかっ! 肩を……掴んで……前後に…………揺らすな」
「ちなみに先ほどの続きだが、直登の言った条件プラス何かしらの功績を遺し、各大陸のお偉いさん方の半分以上の認証を貰わないとなれないがな」
「剣……呉…………それを……早く…………このバカに言えぇぇぇぇぇぇぇ!」
叫び声が寮内に響くのであった。




