第三十六魔導 死合or試合
なんか新しい魔導がいっぱい(?)でてきます。
そしていつも通り内容が薄い。なんか泣きそう。何も言わないで読んでくれるとありがたいです。
えーっと……なぜかわからないが雪奈先生に『試合』なのか『死合』なのか分からないが言われた俺はそのまま首根っこ掴まれて第一グラウンドに連れてこられた。麻美さんも戸惑いながらも俺と雪奈先生の後についてきて、グラウンドの外から心配そうにグラウンド内にいる俺と雪奈先生を見ている。
「あの、できれば試合しろ、の理由を教えてくれます?」
一定の距離を取り、腕を組んだ雪奈先生に状況の説明をお願いしたんだが先生はそれを一蹴した。
「お前が麻美にとって悪い虫かも知れないんでな……早めに駆除しておこうと思ってな」
「は? どゆこ─────っ!?」
俺には先生が言いたいことがさっぱり分からなかったが、彼女が指を立てて空中に魔方陣を描き始めたので慌てて回避行動をとる。
「もう少しハッキリとした理由を聞きたいんだけどなぁ……それで試合しないで済むならそれが一番楽だし」
とりあえず回避行動をとりながら口に出たのはこれだった。めんどくさい事はしたくない!
何より雪奈先生の強さはさっきの第三グラウンドで嫌って程思い知ったから頑張りたくないのが本心だ。
「我、契約図を描き、此処に招来す─────」
俺の気持ちも知らずに雪奈先生は黄色く光る魔方陣を形成、展開。雷がバチバチと漏れて音を立てている。
「雷現!」
膨大な雷が一直線に放たれる。地面を削り、焦がしながら迫りくる雷を横にステップして躱す。そのまま魔方陣を描き、完成させ、詠唱する。
「翼足っ!」
風を纏った足で地面を踏み抜く。風の様に疾く雪奈先生に接近する。
まだ会って数十分だが俺には分かる。この人は俺か先生どちらかが負けるまで試合を続けるんだろうな。だったらさっさと終わらせる!
第三グラウンドでみた強力な魔導を使わす前に終わらせれば──────
しかしそう簡単に行くような相手ではなかった。
背後を取って気づかれる前に思いっきり突き出した拳は雪奈先生の背中に当たる事無く空を貫いた。
「──────っ!」
「なる程。それなりの速さは持ってるようだな」
その声は右方向から響いた。
「しかし、ただ速くなっただけで私に勝てると思ったのか? それとも……さっき受けた上位魔導が怖かったか?」
いつの間に、と右側に向こうとした瞬間目の前に迫ってきていた雷が俺を貫く。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そのまま吹き飛ばされた俺は何回か地面を転がりうつ伏せ状態になった。
「余り舐めた考えはよせ。魔力を解放し、五大の能力をフルに使って見せろ。めんどくさい、などバカな事言うなよ、如月 柊羽」
ぐっ……この、雷現で……下級魔導でこの威力かよ! 本当に何者だ? それに五大だけでなく魔力の事も知ってるって、ほんとになんなんだ?
フラフラになりながらも立ち上がり、眼前の先生を睨んだ。雪奈先生は余裕と言った風に人差し指をくるくる回しながら俺が動くのを待っていた。
頑張るのも面倒事も勘弁なんだが……何でかな? こんなつえぇ奴と戦えるって、手合せできるんだって思ったらちょっと燃えてきた……かも。でもタダで、ってのもあれ何で……
「……先生」
「なんだ?」
「もし俺が勝ったら報酬の一つでも貰えると嬉しいんですけど」
「ほう、この私に勝てると? いいだろ。それならお前の女になってやる」
「え!? いや、俺の質問に答えてくれるだけでいいです!」
「なんだ、つまらない男だな。まぁいい。勝てたらなんでも答えてやる」
自信満々に言い切る彼女にニヤッと笑ってしまう。別に先生が俺の女になる、ならないは置いといて、と言うか冗談だろうけど。五大の事やこの人の正体とか分かる。
いや、ふつうに聞いたら教えてくれそうだけど、この方がやる気がでる!
「それじゃ……本気でいきますよ。先生」
そう言い捨て、俺は内に存在する壺。前は小さな瓶だったが今は壺となっていた。そして壺はいつも通り鎖で何重にも巻かれていた。その鎖を外し壺に封じ込めた魔力を一気に解き放つ。
壺からあふれ出た魔力は俺から見えない圧力となり雪奈先生を麻美さんを一瞬だけ襲った。きゃっ、と麻美さんの小さな悲鳴が聞こえたが直ぐに消え、目の前にいる雪奈先生は満足げな表情をしていた。
「なるほど。魔力だけは世界一、と言っても過言ではない、か」
「行きますよ、先生」
俺は先生の返答を聞く前に動き出す。翼足で高速移動した俺は先生の真上を獲った。そのまま上空で魔方陣を描く。一つ、二つと。
遅れて先生が上を取った俺に気づき、真下を離れる。その時、魔方陣を描きながら。
「紅蓮」
斜め上に向けて放たれた炎は一直線に俺を狙っていたがそれが俺に到達する前に二つの魔方陣が一つとなり六芒星が浮かび上がる。
「我、契約図を描き、此処に二重の招来す──────風刃列破」
赤緑に光る六芒星の魔方陣から無数の炎で出来た刃が乱射される。ある刃は炎を前から真っ二つに切り裂き、ある刃は炎を斜めから急降下し切り裂き、炎がは俺を捉える事は無かった。
「二重招来魔導の風刃列破……風魔導の鎌鼬に炎を混ぜた風炎魔導。それなら──────」
俺の放った炎の刃は上左右斜めと四方からの雪奈先生を切り裂こうとしたする前に、雪奈先生はバッとしゃがみ込むとグラウンドに魔方陣を描き、すぐに詠唱した。
「我、契約図を描き、此処に招来す──────土流壁」
詠唱されるとしゃがみ込んだままの先生を中心にグラウンドの土が盛り上がり、ドーム状の防御壁へと姿を変え炎の刃を弾き返す。
「くっ! 二重魔導すら下級で弾かれるのか! どれだけ魔力を込めてんだよ」
若干……いや、かなり焦っている。向こうの方が断然に戦闘慣れしてる。
土流壁が解除される前に次の行動を──────
だが先生の方が先に行動を起こしていた。
ドーム状の防御壁の周りから土で出来た槍が数本上空に向けて放たれた。
「我、契約図を描き、此処に招来す──────豪水」
迫りくる土の槍と一緒に水魔導の豪水を放つ。一直線にはなたれた水が全ての槍を呑みこみドーム状の防御壁を上空から襲った。
激流に押され、土煙を巻き起こしながら防御壁は見る影も無かった。
「我」
「っ!?」
雪奈先生の声が小さく聞こえた。
「大いなる契約図を描き」
「──────しまった!」
斜め下、つまり後方のグラウンドから聞こえる凛と響く声。とっさに振り向くと六芒星を描いた雪奈先生。その表情は笑っていた。真っ赤に燃えているかの様に見えるほど赤く光る六芒星の後ろで。
「此処に新たに招来す」
「上級魔導──────」
「──────不死身鳥」
真っ赤に光る六芒星から放たれたそれは鳥だった。炎で作られた巨大な鳥。三つの尾を持ち、炎で出来ているにも拘らず鋭く尖った口ばし。巨大な身体から飛び散る炎はまるで雪の様に小さく細かい。
「私の全力の一つだ。受け取ってくれよ、如月 柊羽」
そんなラブレターを渡すような言い方をされてもそんな簡単に「はい、ありがとう」と言える物じゃねーんだぞ、それ。
幻想的な炎の鳥は甲高い鳴き声を上げ、地面から一直線に俺を貫くのだった。




