第三十五魔導 OG
サブタイの【OG】はオリジナル・ジェネレーションじゃなくてオールドガールの方です……って、オリジェネ分かる方が少ねーかw
お知らせ!てか、お礼かな?
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そしてこれからもよろしくお願いします!
二人並んで学園の廊下を歩く。
隣のスーツをキッチリと着こなした雪奈先生を横目でチラッと見ると、こちらの視線に気づいたのか顔を少しこちらに傾けてきた。
「どうした? 何か聞きたいことでも?」
「あ、いや、聞きたいことは多いんですが取り敢えず名前を教えてもらっても?」
さっきの学年室では苗字は聞いたがフルネームを聞いてなかったので聞いてみた。
「そういえばまだ名乗ってなかったな。私は雪奈 涼子だ。よろしく、如月 柊羽」
ご丁寧に立ち止まって名乗ってくれたよ。でも、この人の名前どっかで聞いたことがあるような……
俺はペコリと軽く頭を下げながら先生の顔を眺める。
名前だけじゃなくな、良く見れば顔もどこかで見たことあるような……
「ふっ、そんなに私が好みの異性だったのか?」
「ふぇ!?」
雪奈先生はおもしろそうに微笑して言ったが、こっちとしてはびっくりだわ!そりゃ、先生の顔じーっと見てたけどそう言われたら恥ずかしくて見れないだろ!
とりあえず俺は先生から視線を外す。すると先生は行くぞ、と再び歩き始め、その後を慌てて追いかけるのだった。
◆◇◆◇◆
他愛も無い学園生活に関する話をしながら先生は校舎を出て、第二グラウンドで自主練している生徒たちを眺めながら通り抜け傍を通り抜け、寮へと来た。てっきり俺は職員用の寮に着くまでの話し相手だと思ったのだが、ここは生徒の寮だった。
「職員用の寮に行くんじゃないんですか?」
「ここには私の親友が働いていてね」
そう言って寮の中に入っていく先生の背中を見てから頭に?マークを浮かべて小走りで俺も付いて行く。
先生はフロントを抜け、食堂へと入っていくのを見た。
食堂……?
食堂で雪奈先生と同い年で働いている人って言えば……
俺は一人の女性を思い浮かべながら食堂に入ると予想していた女性と楽しそうに話している先生が見えた。
「久しぶりー、元気だった? 涼子ちゃん?」
「それはこっちの台詞よ。麻美こそ元気にしてた? それと、悪い虫が寄ってきたりしてない?」
何と言うか……さっきまでの冷たい表情が嘘のようだな。めっちゃ楽しそうで笑顔だなぁ。
久しぶりの再会らしいので邪魔にならないよう手近な席に座り、頬杖付きながら二人を眺めていると空いている席に仁美がよっこいせ、と漏らしながら座って来た。
「こんなクーラーが壊れた人のいない食堂で何してるんだい、柊羽ちゃん」
「あ、仁美さん。いや、雪奈先生の付き添いで」
ここに来た経緯を仁美さんに喋るとうんうん、と頷いて最後はお疲れさん、と言われてしまった。
「さっき先生からちょっとだけ聞いたんだけど、麻美さんと雪奈先生は親友なんですか?」
今もなお楽しそうにお喋りしている二人を見ながら聞いてみると仁美さんも視線を俺と同じく二人に向けた。
「そうだよ。あの二人はこの魔導学園の卒業生で、卒業するまでずっと同じクラスだったのよ。ちなみにあの二人が魔導学園の在校生だったころは全男子生徒から人気ナンバー1、2だったわね」
二人から視線を外し、数年前の事を思い出す仁美さん。どうやらその頃から仁美さんはここの食堂長だったようだ。てーか、雪奈先生がここのOGだってことは予想できてたが、麻美さんもOGだとは。
ここに入学してから現在まで麻美さんから魔力の『ま』の字も感じられなかったが……う~ん。
「どうかしたかい柊羽ちゃん?」
「え? あ、なんでもないよ」
考えすぎて顔に出てたか? ま、これ以上考えたってわかんねぇし……なにより考えるのがめんどくさくなってきた。ってことでこの話はおしまい!
久しぶりにめんどくさがった気がするな、うん。
そんなことを思いながら、仁美さんとお喋りしていると向こうで話してた二人がこっちに近づいてきた。どうやら雪奈先生は仁美さんに挨拶をしに来たらしい。そりゃそうか、麻美さんの親友なら親である仁美さんとも知り合いだろうし。
「涼子ちゃんの相手おつかれ、柊羽君」
「いえいえ」
隣に立って顔を覗く様にして言ってくる麻美さんに恥ずかしくなって席を立つ。そのまま近くの椅子を二つ抱え、持っていく。
「どうぞ。雪奈先生も」
「ほぅ、気が利くな」
「ありがと、柊羽君」
「いえいえ」
恥ずかしさを無くすためにやったことなのに、また恥ずかしくなった。
「おやおや、柊羽ちゃんは麻美にだけ優しいねぇ」
それを見た仁美さんがニヤニヤしていらんこと言って来たよ。しかも『だけ』がやけに強調されてたような……
「仁美さんは何言ってるんですか……」
「柊羽君、私にだけ優しいの?」
グイッと近づいてくる麻美さんから微妙に距離を取ってから仁美さんを睨む。が、仁美さんは明後日の方を眺めてる。
「いやいや、そんな訳ないですよ……ん?」
これ否定していいのか?
「ほぉ、柊羽ちゃんは麻美じゃなくても女性なら誰にでも優しいのかい」
「そりゃあ……まぁ、優しいつもりだけど」
「八方美人だねぇ。そんなんじゃ意中の彼女は振り向かないよ」
「そんな人はいませんよ」
どーせ俺は直登や剣呉と違ってモテたためしがないからな、と若干自嘲気味に笑ってしまった。が、それを見た仁美さんははぁ、と大きくため息をついたのだ。ん? 仁美さんどうした? 疲れたのかな? そんな時は寝るのが一番だよな。
「まったく柊羽ちゃんは……」
「なんか言った、仁美さん?」
「何も言って無いよ!」
なんか怒ってる? いや、呆れてるのか? ともかく若干最後の方が怖かったぞ。
隣りに座っている麻美さんに助けを求めようと視線を向けると、俺と目があった瞬間目をそむけた!
……あれぇ?
困った。よくわからんが困った。
う~ん、とこれからどうするべきなのか適当に考えていると先ほどまで黙って聞いていた雪奈先生が声を上げた。
「如月 柊羽……」
「はい?」
「……私と死合しろ」
「……………は?」
殺気の籠ったそれは俺には『試合』ではなく『死合』に聞こえたのだった。




