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魔導学園の頑張らない少年  作者: 暇な青年
第二章 闇の精霊強襲
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第三十二魔導 自主練

 魔導学園の馬鹿でかい校門の前で仁王立ちしているスーツ姿の女性がいた。紫色したセミロングの髪を夏の風に揺らされながら、サングラスの下から遠くに見える校舎を眺めてる。


 「二年ぶりね」


 女性は笑みを浮かべて校舎に向けて歩き始めた。






 ◆◇◆◇◆

 「あじぃ~」


 珍しく人のいない食堂……と言っても仁美さんや麻美さんは調理場にいるけど。そこで直登はテーブルに突っ伏した状態で唸っていた。俺と剣呉は直登の向かいの席に座っている。

 剣呉は直登の一分おきに聞こえる叫びを気にすることなく、悠々と読書をしていた。


 俺は、と言うと……


 「まさか食堂のエアコンが壊れるなんてな」


 手を団扇のようにして仰いでいる。まぁ、意味が無いに等しいが。

 そう、なんと食堂のエアコンが朝から壊れたらしく、現在進行形で業者が直しているところだ。なら、部屋で休めばいいじゃん、って思うだろうが……美緒の奴があんなこと言うからここで待ってるんだよ。






 ◆◇◆◇◆

 30分前の事。エアコンが壊れたと知って俺たちは自室で休んでいた。と言っても、俺と剣呉は宿題っつう物をやってたんだが。直登は快適な温度の部屋の中で爆睡してたけど。


 そんな時、美緒が部屋にやってきて


 『自主練よ!』


 と言って部屋から出て行った。

 まぁ、当然だがそれだけ言って出て行った美緒に目を丸くして剣呉と顔を合わせた訳だ。その後に菜月がやってきて補足してくれたよ。


 『えっと、ですね……この前の闇の精霊との戦いで如月君に頼りっぱなしだったから、私達も力を付けて如月君と一緒に戦おうって話してたんです』


 なるほどなるほど、うんうん、といつの間にか起きていた直登と剣呉がお互い頷き合っているのを見た。


 『そんなわけでもし良かったら一緒に練習しない? するなら30分後食堂で待ってて』


 と、補足して美緒の後を追って行った菜月であった。






 ◆◇◆◇◆

 そんなわけで今、クーラーが壊れた食堂にいるのだ。今もあじぃ~、と唸っている直登は無視するとして……


 「遅いな」


 「えっ!? あ、ああ。そうだな」


 食堂の入口の方を眺めて遅いな、と考えていたから焦ったぞ。しかも本人は本から目を逸らしてないし……お前はエスパーか、って。


 「ま、女性は準備に時間が掛かるって言うし……」


 「悪いわね、柊羽。時間が掛かって……」


 ……あのさぁ、タイミング合いすぎだろ。ため息一つしてから俺は後ろから聞こえてきた美緒の声に振り向く。美緒と菜月は分かってたが智香までいるとは。あ、今日は凛姉は居ないのね。


 「藤原先輩がいないからってガッカリするのは酷くない?」 


 「……は?」


 「柊羽……そんなに凛姉のこと好きなの?」


 いや、確かに凛姉の事を考えてたけどその考えはおかしくない?それに智香も何ふくれっ面してんの?菜月も黙ってはいるが不満そうな顔をしている──────ように見える。


 「あのなぁ、確かに凛姉がいないな~、とは思ってたが、それが好きかどうかは別の話だろ? それに智香も膨れるな」


 「してないわよ!」


 いや、思いっきりしてるだろ。そんな睨みつけんなって。


 「やはり一番の敵は藤原先輩ね」


 「そうだね」


 なんか智香の後ろで菜月と美緒が話し合ってるが聞こえないな。そんなに聞かれたくない話なのか?

 よし、と話し合いが終わったらしく、二人が近寄ってくるとすぐさま第三グラウンドに行くよ!と美緒が叫んだ。






 ◆◇◆◇◆

 第三グラウンドでは体が鈍らない様に自主練している奴が結構いた。ちなみに試験の時の様な結界は張られていないので極まれに他の魔導が飛んできたりする。

 第三グラウンドに来てから早くも1時間経とうとしていた。


 「遅いわよ!」


 「うるさいっ!」


 目の前から跳んでくる美緒の拳を右手で軌道を逸らし、空いている左手で拳を作ると少し下ら辺から上へと向けて拳を放つ。俺の拳を防ぐために美緒も空いている手を顔の前に持ってきた。


 予想通り。こいつは逃げる、って言葉を知らないんだから……


 この瞬間。俺は風魔導の翼足を発動。自分の手で視界が狭まった美緒の前から俺の拳と一緒に姿をくらます。突然の事で慌てた美緒の背中をとって──────


 「俺の勝ち」


 トンッ、と手刀を頭に軽く振り下ろした。

 少し離れたとこで休憩していたあいつらがおお~、とどこまで本気で言ってるのか分からないが聞こえた。


 「ちょっ! あんたいつ魔導使ったのよ!? 気づかなっかったぞ?」


 「ん? あぁ、別に魔方陣描くのは体の正面、とは決まってないからな」


 いや~頑張った、頑張った。

 左手で殴ろうとしたときに、美緒の拳を逸らした右手の方で小さく魔方陣を形成して発動。速度が上がった俺は拳と共に視界から消え、美緒の後ろを捕った、と。目の前の奴には通用しても周りの奴はちゃんと見ていたな。


 と言うか、女子を殴るわけにいかんでしょ?


 「まって! それはつまり無詠唱したってこと!?」


 無詠唱──────つまり声に出さずに魔導を使う事だな。大抵は『我、契約図を~』って言うが無詠唱ならそれを省略して使うことができる。もっとも口に出さないだけで、心の中で魔導名を唱える必要はあるけどな。


 「仮にも五大と契約してるんだからな。まぁ、詠唱することがめんどくさい……もとい、相手にバレるからな。近距離では」


 それだけ言って大きな欠伸を一つ、空に向けてするのであった。

 補足だが無詠唱にはかなりの実力が必要である。詠唱しない分、集中力を必要とし上級魔導師ぐらいでやっと使えるスキルである。


 あー疲れた。今日はこれくらいで良いかな?なんて思ってたのがいけなかったのか、隣で俺たちと同じように自主練していた生徒の慌てふためく声が第三グラウンドに響き渡った。


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