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魔導学園の頑張らない少年  作者: 暇な青年
第二章 闇の精霊強襲
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第二十七魔導 召喚

 「ケケケ、ヤハリニンゲンハヨワイイキモノダナ」


 三階の廊下から見下ろす闇の精霊はバサッと空中に飛び、俺たちの上空を旋回する。菜月と凛姉、智香はすぐに魔方陣を描き、放つがあっさり避ける。避け終えた瞬間、闇の精霊は少し上に体を上げ、一気に急降下してくる。


 「てめぇの相手はこっちだ!」 


 接近してきた闇の精霊に翼足で加速した俺が一気に詰め寄り目に見えない程速い蹴りを顔面に放ち、吹き飛ばす。

 メリ、とあまりいい音とは思えない音があいつの顔面から聞こえたが知らん!


 「紅でダメなら紅蓮こっちでどうだ!」 


 一瞬で完成させた魔方陣が真っ赤に光り、紅を遥かに凌駕する炎が吹き飛ばされる闇の精霊を喰らう。紅蓮に喰らわれた闇の精霊を見て終わった、と思ったがそれをあっけなく消し去った。


 あの化物……紅蓮を弾き飛ばした!?


 「うそだろ……今のは結構魔力を込めて撃ったんだぞ!?」


 今の紅蓮は普通より1500程多く魔力を注いで放った魔導。それを簡単に弾き飛ばすって……こいつはマジでやばいか?


 「ケケ、ヤハリヨワイ。ソロソロアキタ。キサマカラハナシヲキイテコロス」 


 俺を指さして闇の精霊は言う。後ろの三人は俺が放った紅蓮が通常より遥かに強いと分かっていた。それをあっさり破るあいつに対して戦意を喪失してるな。気持ちは分からなくもない。


 闇の精霊は夜空に映る月に向かって獣の咆哮にも近い声を発す。


 「……しかたねぇな。凛姉、二人と一緒に少し下がっててくれ。でもって、今から起こる事を見ないでくれ」


 「柊羽……君?」 


 凛姉の声には反応しないで俺は目を閉じる。




 ◆◇◆◇◆

 目を閉じて自分の内側を覗く。そこにあるのは小さな瓶。蓋をし、鎖で何重にもグルグルと巻いてあり、おまけに、と言いたいのか頑丈そうな南京錠が一つ、二つ、三つと付いている。


 「なんでこんなに頑丈になってんだ?」


 内側の中で首をかしげる。前に見た時は南京錠一つだけだったよな?


 「まぁいい。さっさと解放して終わらせる」


 片方の手で鎖の上から壺を触り、もう片方の手で南京錠の一つを握る。


 「さぁ……久しぶりの全力だ。行くぜ、お前ら!?」


 内側の方から契約精霊に叫んだ。





 ◆◇◆◇◆

 「ケケ、シャベッテモラウゾ。ゴダイノコトヲ」


 まだ目は閉じているが闇の精霊はどうやら低空飛行で俺めがけて飛んできてるな。声が近づいてくるし。さて、俺も久しぶりに本気だしますか。


 ゆっくり目を開くと鋭い爪が目の前にあった。あいつの手だな。だが──────


 「ケケ!?」


 「おせぇよ」


 がら空きの顔面めがけて右足を振り抜く。先ほどと同じく後方に吹き飛ばされるが今回は途中で体勢を立て直したな。が、そんなことは俺には関係ない。右手を前に持っていき、横に薙ぐ。


 「闇の精霊……お前に聞きたいことがいくつかある。一つ、五大の存在を探してるってことはあのシルエット男の仲間か? 二つ、五大属性しか存在しない精霊で新たな“闇”ってのはなんだ? 三つ、あの時の“見つけた”とはどーゆう意味だ?」


 「ケケ、コタエルワケガナイダロ。シカシヒトツダケオシエテヤル。シルエットオコトノナハ“オルクス”。オレラ“アンレイ”ノ──────ナンバー2ダ」


 闇霊? どっかの秘密結社みたいなのか? で、あの男の名前はオルクスってんだな。まぁ、それだけ聞ければいいだろ。あとは……

 

 「あんたを消すだけだ」


 再び低空飛行で接近してくる闇の精霊。だが、それが俺を攻撃できる範囲に入る前に先ほど右手を横に薙いだ場所が斬れた。まるでその空間だけが刃物で切り裂かれたかのように。


 「我」


 闇の精霊は俺が何かする、と分かったらしく、接近するのを止めて空中に距離を取った。俺の行動を観察するつもりなんだろうが接近するべきだった、と後悔させてやる。


 「召喚図を描き」


 俺がゆっくり詠唱するたびに切り裂かれた空間に一つ、また一つと魔方陣が勝手に浮かび上がる。浮かび上がった魔方陣は赤・青・緑と別々の色。


 「彼の者を召喚す」


 さらに茶・黄色と新たに二つの魔方陣が浮かび上がる。そこでやっと闇の精霊の表情が強張った。慌ててこちらの詠唱を止めようと急降下してくるがもう遅い。


 これで──────完成だ


 「あんたが探してた──────五大精霊だ」


 薄くほほ笑む俺。五つの魔方陣は眩い光を発し、夜の闇を一瞬だけ光に染め、また夜闇にもどった。ただ一つだけ違うことがある。目の前に契約姿ではなく、本来の姿の五大精霊が召喚されたこと。闇の精霊が驚き鋭い牙がついている口が大きく空いていること。


 「シュウ、俺たちを呼んだってことはマジでやっていいんだよなぁ?」


 「たりまえだろ」


 顔だけを俺に向けるようにシュラは笑顔で楽しそうに聞いた。まったく、イケメンは何をやっても許されるな。普通喧嘩を喜んでやる奴なんていないだろ。これを喧嘩と言っていいのかも疑問だがな。


 「それじゃ、シュラは俺と一緒で。ディーネ達は結界で凛姉たちを守ってくれ。校舎からこっちを見ている直登達も忘れずにな」


 ディーネから校舎に視線を移す。二階の廊下には直登と剣呉、美緒が唖然とした表情をしてこっちを眺めているのには少し前から気づいていた。


 「わかりました、主」


 ニッコリほほ笑んでからディーネの姿が一瞬で目の前から消える。それはディーネだけではなく、ほかの精霊も同じであった。次の瞬間、俺の後方。つまり凛姉たちのいる場所にディーネとムーの魔力。校舎にはルフとライの魔力を感じた。


 「さすが。行動が早いな」


 俺は口元に笑みを浮かべるとそのまま闇の精霊に顔を向ける。当然、目の前にはシュラの背中がある。


 「シュウ意外と戦闘するのは久しぶりだからな……手加減しねぇーぜ、二極精霊?」


 「二極精霊?」


 八重歯が見えるぐらい口を開いて笑うシュラに顔を向けるが答えてくれないようだ。

 しかたない。その事は後で聞くか。


 「いくぜぇ……シュウ!」


 「あいよ」


 手のひらに炎を召喚するシュラに俺は返事するのであった。

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