第二十四魔導 電話
初めての就活で初めての一次面接と筆記と適性検査が昨日ありました。
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オワタ!!!
さて、夏休みに入って一週間が経った。そんなやることが無くだらけていた俺の携帯に一本の電話が掛かってきた。
「ん? 珍しいな電話なんて」
ベッドから上半身を起こし、枕元に裏っ返しに置いてある携帯を手に取りそのまま画面をタッチする。俺たちが使っている携帯は画面をタッチして操作する携帯が主流である。五年前までは折り畳み式が主流だったがな。
画面には『おばさん』と映し出されているだけの味気ない画面。その味気ない画面をもう一度タッチして俺は携帯を耳に当てる。繋がった携帯からは懐かしく、やさしい声が聞こえてきた。
『柊羽くん? おばさんだけど』
おばさん──────凛姉と智香のお母さんである。俺にとっては二人目の母親である。さて、おばさんは一体何の用だ?
「分かってるよ、おばさん。今日はいったいどうしたの?」
『特に用って訳じゃないのよ。ただ凛や智香はたまに連絡くれるけど柊羽くんは全然してきてくれないから』
「あはは、ごめんごめん」
言われてみればそうかもしれないな。俺も記憶では半年に一回、もしくは年に一回ぐらいしか電話しないしな。
『そんなわけでおばさんに近況を教えてくれないかい?』
「近況ねぇ……」
言われて考えてみるがこれと言って変わったことは無いんだが……
数秒考え込んでいるとおばさんは俺の考えが分かったのかふふっ、と笑って今度は別の事を聞いてきた。それは俺にとってはもっと困ることで──────
『それじゃ……可愛い彼女さんでもできたかい?』
「ふごっ!?」
突然の事に変な声を出してしまった。
『その反応じゃ何にもないわね……今年と来年で人生最後の学園生活も終わるってのに、柊羽くんの浮いた話の一つも聞いてみたいわ~』
おもしろそうに言ってくるおばさんに苦笑しつつ、ベットから下りると冷蔵庫に向かう。
「ご期待に副えなくてわるいね、おばさん。ど~も俺の周りにはイケメンが多くてそっちに持ってかれるの」
少し自棄になりながらおばさんに返す。そうしているうちにも冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注ぐ。キンキンに冷えた麦茶を飲みながらおばさんの次の返事を待つ。
『あはは、直登くんに剣呉くんね。確かに柊羽くんと比べたら……ねぇ?』
「いや、ねぇ、って言われてもね」
比べられた上に俺に答えを聞いてくるって……もはやイジメですよおばさん。
先に言っておくがおばさんと直登達は直接会ったことは無い。写真で見たことある程度だ。
『大丈夫よ。柊羽くんを好きになる女性もいるはずだから……凛も智香も昨日の電話で積極的にアタックしてる、って言ってたしね』
「ん? 後ろの方が聞き取れなかったんだけど凛姉と智香がどうかした?」
後ろの方は声が小さく、凛姉たちの名前までしか聞き取れず、おばさんに聞き直す。だがおばさんはあきらかに今言った言葉とは違う言葉を言って来た。
『何でも無いわ。昨日、凛と智香から電話があった、って言ったのよ』
先ほどの内容は気になったが今の内容も気になるので先ほどのことは聞かず、電話の内容を聞くとしよう。
「なんだって? いや、俺のにとって悪い話ならいいや」
『そんなことあるわけないでしょ。凛が嬉しがってたわよ。先々月から柊羽君が学園で会ってくれる、って!』
絶句だ。そんなことを母親に報告したのか凛姉は。てーか、今の言い方だと俺は会いたくない、って遠まわしに言ってる奴じゃね?
『そうなるわね。うちの娘たちを泣かしたら怒るわよ、柊羽くん?』
刹那、背筋を凍らせる何かが俺を襲った。これはやばい。本能が警鐘を鳴らしている。
「……わかってますよおば様」
やんわりと言っておばさん……いや、おば様は電話の向こうでニッコリとほほ笑んだ……気がした。




