第二十二魔導 心臓がっ!
待ち合わせ場所は校門の前であった。学園を囲むように作られた塀はかなり大きく飛び越えることはまず不可能だろう。唯一の出入口であるこの鉄格子の門も塀と同じ大きさである。
今さらながら本当にあのシルエット男はどうやって侵入したんだか……
見た目は塀だけだが空からの侵入対策に防犯装置の様な魔導もついてるはずだし。
「う~ん……」
解放されている校門に寄りかかりながら考えていると、あっ、と声がした。
「もしかして柊羽君が付き添ってくれる人だったりする?」
「だったりしますよ、麻美さん」
薄茶のセミロングの髪を風に揺らしながら体の前で両手で鞄を持っているこの人が小島 麻美さんである。
毎度のことながら大人で優しいお姉さんと言った感じ。凛姉とはまた別のお姉さんタイプ? かな。
「それじゃ、買い出しに行きますか」
「は~い」
てってってっ、と小走りで横に並ぶ麻美さん。すると何を思ったのか俺の右手をジーっと眺め次の瞬間
「えいっ」
と、手を繋いできた。
「──────ちょっ、えっ、はい?」
「どうしたの? ほら、買い出しに行くよ」
「いやっ、その───うわっ!?」
麻美さんに手を引かれながら俺は学園から出るのであった。
◆◇◆◇◆
学園から歩いて20分ってところにある大型ショッピングセンターの地下一階でカゴを入れたカートを押しながら先導する麻美さんに付いて行く状況である。
「えーっと……必要なものは、っと」
買う物が書かれたメモ用紙を片手に麻美さんは右に左にと顔を動かし、お目当ての商品を探している。そんな姿を後ろから付いて行く俺はと言うと……
「……あれは深い意味は無いよな?」
ここに来るまでずっと手を握られていたことに対してアレコレと考えていた。
麻美さんが美人なだけにすれ違うたびに男性が振り返って麻美さんの後姿を眺め、その隣で手を握っている(……いや、握られている?)俺を必ず見る。あれは多分だが姉弟的な物だと思われていたな。
俺としては心臓が、ね。美人だったら菜月や美緒も負けてないし凛姉、智香もそうだ。いや、智香は可愛い方か? こういってはアレだが俺の周りには多すぎる。だからそれなりに免疫はあると思う。しかし! 手を握られたことは無い。
……いや、あいつらなら問題ないかもな。
って! 違う違う。つまり年上で美人な麻美さんに手を握られて期待(?)してるんだよな、多分。
「これじゃ仁美さんに申し訳ない。俺なら安心だと信じて護衛を頼んできたんだから。いや、そもそも麻美さんの様な女性が子供に好意なんてありえんだろ」
ありえるとしたらそれは母性本能的な奴かな? ん? 母性本能ってこんな意味だっけ??
「柊羽く~ん」
「あ、はーい」
いつの間にか足を止めていたため麻美さんとの距離が開いてしまった。人ごみの中で手を振って呼ぶ麻美さんの下へカートを押すのであった。




